第5話~NPCと仲良く
長い文章が書ける人、尊敬します。
俺は今・・・ヒックス、ウエンツという名の兵士に街を案内してもらっている。この街の名はシアルといい、グランベル王国の南方にあるらしい。王都ルトマーは北の草原を抜け、その先にある山を越えなくては行けないらしい。東には深い森があり、西には川が流れ湖がある。南にはリアル公国に続く街道が整備されている。途中関所があり、入国を制限しているのだと教えてくれた。ちなみにシアルの街は、グランベル王国とリアル公国を行き来する者にとっては旅の要所であり、王国でも有数の大きな街らしい。色々と聞きながら案内を受け、道具屋・魔法屋・スキル屋・総合ギルド・防具屋の順番に案内された。この流れだと次は・・・
「ここが武器屋だな。俺達も良く来る。」
「値段は高いが品質はシアルで一番だ。買った武器は最後まで面倒を見てくれる。」
「そうそうおやじさんは腕の良い鍛冶師でもあるからな。この間、剣の手入れに寄ったら拳骨を食らったよ。『テメエ・・・乱暴に扱うなって言ってんだろうがっ!!』ってな。」
「あ、俺も俺も。」
盛り上がる二人に置いていかれる俺。二人の案内はずっとこんな感じだ。会話についていけないが、良い情報が手に入る。それに二人は終始楽しそうだ。・・・これでNPCなんだもんなぁ。このゲームのAI恐るべし。
「・・・っとわりぃ。またこっちで盛り上がっちまった。」
「いえ、お二人のお陰で色々知ることが出来ましたから。気にしないでください。」
「本当に悪いな。ティルが俺達に街の案内を求めてくれたことが嬉しくてよ。他の冒険者なんか無視だもんな。」
「俺なんか『邪魔だ!どけよモブ野郎!!』って言われたぜ。」
「なんかすみませんね。同じ冒険者として・・・。」
「いやいや!お前が謝んなよ!」
そんなやり取りをしながら、和気あいあいと次に進む。最後に向かうのは宿らしい。その道中、
「ティルは他の冒険者とは違うな!良い奴だよホント!・・・顔は悪人だけどな。」
「だな!悪人顔だが話しやすいよ。」
「・・・・・・そんなに悪人顔ですかね?」
自分の顔をペタペタと触りながら、自分の容姿について考える。短い眉に鋭い眼、うすく笑みを浮かべるのが癖で右頬に大きな傷がある。髪はツーブロックの長髪で一本にまとめている。長髪部分が薄紫で刈り上げ部分が黒の二色。身長は約188cm。・・・うん、自分でいうのもなんだが悪人だな。スキャンしたからリアルと変わらない俺の顔。微妙にヘこむ。
「悪人顔はどうでもいいけどよ。もうちょっとくだけた口調に出来ないか。なんか他人行儀でいけねぇ。」
「折角知り合えたんだ。仲良く付き合いたい。それが素じゃないんだろ?」
相手からそんなことを言われるとは思わなかった。改めて思う・・・AI恐るべし。
「わかった。なら素でいかせてもらう。」
そう言って笑みを浮かべる。俺的には満点を貰える笑顔のつもりだ。
「・・・おう、そうしてくれ。あと、その邪悪な笑みは止めろ。こえーよ。」
「女子供は逃げるな。」
「・・・・・・。」
ヒックス&ウエンツにそう言われ、人知れずショックを受けつつ俺達は宿に着いた。
「ここがオススメの宿、その名も『くまさんの宿り木』だ!」
そう紹介された宿を見る。・・・・・・一言でいうならバカデカイ切り株だ。切り株の根元に申し訳ない程度に扉がある。はっきり言おう。中世ヨーロッパ調の景観が台無しだよ!!何だよ切り株って!
「見た目はアレだが良い宿だぞ?」
言葉を失う俺を引きずり、二人は扉を開けた。
「シグルゥいるかぁ~!客を連れて来たぞ!」
宿の奥に声をかけるウエンツ。すると奥から青髪の貴公子っぽいイケメンが現れた。
「やぁ二人とも。お客を連れて来てくれたのかい?」
「おう。冒険者のティルだ。面倒を見てやってくれ。」
そう紹介され、俺は名乗る。
「冒険者のティルだ。よろしく。」
「私はシグルゥ。このヘンテコ宿を経営する物好き主だよ。」
・・・自分で言っちゃうんだ。そして、このヘンテコ宿が当分の拠点に決まった。
「それじゃ・・・俺達は戻る。休憩もそろそろ終わるしな。」
「色々とありがとう。本当に助かった。」
「気にするな。俺達も楽しかったしよ。」
「あと、これをお前にやるよ。」
そう言って渡されたのはこの街の地図だった。
「こいつさえあれば迷わないだろうよ。役立てくれ。」
「ありがとう。大切に使わせてもらう。」
改めて礼を言った。
「それじゃあな。俺達は大概、詰所にいる。何かあったら力になるぜ。逆に俺達もティルを頼る時があるかもしれない。その時は頼む。」
「ああ、わかった。」
「お前の冒険者としての活躍を期待してるよ。」
そして、二人の兵士ヒックス&ウエンツに知り合った。二人とはシアルに滞在中、よく会うことになる。
次は軽い戦闘がある予定。