閑話 ~魔導
閑話とありますが、実際は38.5話って感じかな?
決闘宣言後、Junさんのレベリング終了時の話です。P×Pバトル前ですね。
つーか、ブクマが1,000以上増えていますね。驚きっす。
この話は、ヴェネから決闘宣言を受けた後の話である。Junさんのレベリング後、自身の装備・・・新たに武器を作ろうと思い至った。魚人シリーズ専用の武器を、槍がいいな!とのことで。
俺は今、生産ギルドの俺用作業場にいる。自分の武器を作ろうと思ったからだ、Junさんの装備も作る予定。無茶なレベリングでボロボロにしてしまったし、作る約束もしていたしね。予備装備もないみたいだからな、Junさん。なるべく早く、新しい装備を作ってあげなければ。破損率がヤバイからね、下着姿を晒すのは可哀想だ。
男ならばパンイチで頑張れと言えるんだが、Junさんは女性。万が一もあるから、取り置いていたケロケロライトローブを貸してあげたよ。ローブに着替えたJunさんは、なんか美人さんだった。いつも軽装とはいえ鎧姿だったJunさん、ローブをワンピースのように着こなした姿は完全に女性だった。軽装鎧のイケメンが、ワンピース美人になったのだ。
「・・・なんだかヒラヒラしますし、スースーしますね。スカートなんて小学生以来です、・・・これはローブですけど。」
顔を赤くして、はにかむJunさん。・・・・・・これがギャップ萌えというものか、うん。
Junさんのボロボロ装備は、俺が処分することになった。処分する前に、新装備の参考にするけどね。新装備が出来るまで、Junさんは自己鍛練をするみたいだ。・・・簡単に言うと、引きこもるんだって。
「このような姿で人前に出るなんて、恥ずかしすぎますからね・・・。出来るなら、この作業場に引きこもりたいんですけど・・・。」
「・・・この作業場には、エイミーさんがほぼ毎日来るぞ。たまにディジーさん、エシャルトンに宝来も来るな。それでも良いんなら、別に構わないが・・・。」
「・・・・・・宿に引きこもりますね。・・・ディジーさんは、口が軽いことで有名ですから。」
ガックリ肩を落とすJunさん、そこまで落ち込むようなことなのだろうか?少し項垂れてから、Junさんは俺に上目遣いで・・・、
「・・・なんでも協力しますから、私がこのような姿でいることは内密にお願いします!」
「いや・・・うん、俺からは誰にも言わないよ。・・・安心してくれ。」
そう言うと、ペコペコ頭を下げてから作業場を飛び出していった。そこまで見られたくないのかね?せっかく美人さんなのに。・・・というか、宿に戻るまでの間は見られまくりじゃね?・・・・・・俺の記憶に焼き付けておこう、彼女のローブ姿を。
Junさんのボロボロ装備を色々と調べていると、ドアをノックする音が・・・、
「勝手に入ってきていいぞ~。」
と俺は声を掛ける。ノックの主はエイミーさんだと思い、俺は調べるのを止めない。・・・ふむ、Junさんはこういうタイプの装備が好みか。少し和風っぽくしてみるか、Junさん剣士だし、刀好きみたいだし。・・・武器も刀っぽくしてみるかな、なんて考えていると・・・、
「装備の研究かい?ティル君、仕事熱心で良いことだね!」
エイミーさんとは違うゴツい声、誰だと思い顔を上げると、
「やっ!」
にこやか笑顔のナイスミドル、支部長のザハークだった。何しに来たんだ?このおっさん・・・。
何故ここに?と思ったんだが、
「Gカードが届いたんで渡しに来たのさ、ついでにティル君の様子見って感じかな?」
あぁ・・・Gカードね、それを直接渡しに来たのか。呼べば良いものを・・・、支部長なんだからさ。そんな心の声が聞こえたのか、ザハークは、
「気分転換もかねて来たんだよ、・・・暇だからね。部屋に籠るのもあれだし、現場にしゃしゃり出ても気を使わせるし、・・・リアルに戻っても毎日が修羅場だし。私にだって、リフレッシュが必要なのだよ!」
とか言って、興奮気味に色々と喋り出す。たぶん長くなるから、聞き流して作業続行だな。・・・とりあえず、Gカードをアイテムボックスに・・・と。・・・・・・二,七〇〇万G!今回の取り分、スゲーな!
ザハークの話を、たまに相槌を打ちつつ聞き流し、Junさんの装備案を頭の中で整理する。・・・・・・全体的に和装っぽくするのがいいだろうな、色は青系にするか。処分を頼まれた装備は黒だが、Junさんは青の方が似合う筈だ!文句は言わせない、俺に任せるって言っていたしな。・・・後は使う素材を選別、気合を入れて製作するだけ。ここまで考えたら、とりあえずは大丈夫だろう。次は俺の新装備、魚人シリーズ専用の槍を考えねば。使う素材は決めているけど、どのように使うかが問題だよな。アイテムボックスから、淵魚人の巨大な骨、クーパーから買い取った大きな魔石。この素材を取り出して、考え込むのであった。
むむむ・・・と、唸っている俺に、
「おぉ・・・!なかなかに良い魔石だね!それにその骨はあれかな?ティル君が遭遇して、討伐したと言われている邪神の・・・!」
一人語っていた筈のザハークが、突然話し掛けてきた。顔を見てみると、スッキリしたみたいだな。スッキリしたからなんだろうが、俺の前にある素材に興味があるようだ。
「この素材を使って、槍でも作ろうかと思うんだが・・・。なかなか良い案が出なくてな・・・。」
難しい顔をしながら、俺はザハークにそう言った。そんな俺の言葉を聞いたザハークは、目を光らせて、
「ちょっと見せてもらって良いかな?これでも支部長だからね、目利きには自信がある。良いアドバイスが出来るかもしれない。・・・あくまでかもしれないだから、過度な期待はアレだけどね。」
なんだかテンションが高いな、・・・見る分には害は無いと思う。そう思った俺は、ザハークに骨と魔石を渡した。期待はアレだとか言っていたけど、期待してしまうのが人だよね。
これでもか!といった感じで、ザハークは隅々まで骨と魔石を見ていた。暫くして、
「流石は私達!良い仕事をしてい・・・じゃなかった!この骨はかなり頑丈だね、魔力も多く含んでいる。そしてこの中型魔石は、多くの魔力を貯蔵することが出来る程の品質。」
・・・〈俺流鑑定眼〉で、そこまでの情報は既に知っている。その情報から思ったこと・・・、素材の持ち味を生かした槍を作りたい。だが、思い付かない。・・・いや、なんとなくは頭に浮かんでいるのだが。更になんかこ~・・・、より良くする方法というかスキルというか・・・、
「・・・因みにティル君、ボーンフィッシュは持っているかね?釣りもしていると聞いているのだが。」
・・・ボーンフィッシュ?あの骨だけの不思議魚のことか?確か、アイテムボックスに入っていた筈だが。・・・・・・っと、あったな。とりあえず骨魚を出す、それを見たザハークは、
「間違いなくボーンフィッシュだね、しかも良い品質だ。」
うんうん頷いている。
骨魚を確認したザハークは、無駄に良い顔で、
「私が助言出来るのはここまでだね。後はそうだな・・・、魔法ギルドに行けばいいよ。」
と言ってきた。助言というか、素材を確認しただけじゃないか。・・・と思ったものの、確かに助言はいただいた。アイテムボックスのこやしになっていた骨魚、コイツの存在を思い出させてくれた。ザハークは言葉にしなかったけど、コイツも槍の素材に使えるってことを教えてくれたんだと思う。そして最後に、魔法ギルドへ行けと。魔法ギルドへ行けば、槍作りに関する情報があるということなんだろう。ザハークの助言、ありがたいの一言に尽きるな。
しかし良いのかね?俺に助言なんかして。特定の人物を贔屓している、そう思われないのだろうか?と、いつもの癖で考えてしまう。そんな俺を見て察したザハークは、
「贔屓だとかは気にしなくてもいい、他の者にも似たような助言をしているしね。生かすも殺すもその者次第、辿る道は人それぞれ。どのような結果になるかは予想が出来ない、それが楽しみなのさ。だからティル君の道、・・・期待しているよ。」
そう言って、手をヒラヒラさせながら作業場を後にした。・・・なるほどね、確かに人それぞれだわな、情報をどう扱うかはさ。それに一応、ザハークはNPC扱いだと思うし、・・・中に誰かいそうだけど。深く考えないでせっかくもらった情報、行動させてもらいましょうか。
そんなわけで、あまり来ることがない魔法ギルドに来たわけで。あまり来ないとは言ったものの、人並みには来てますよ?依頼とかあるし。生産ギルド>冒険者ギルド>魔法ギルド、ってな感じだろうね。まぁそんなことはどうでもいいんだけど、受けていた依頼の報告でもしますか。・・・いつの間に?と思っているだろうけど、意外に時間がある。行動の合間とか、ログアウト前に軽く寄ったりとかしているからね。他のギルドほど絡むことがないから、滞在時間は短いのだ。
・・・メールで予約はしていたけど、大丈夫かな?受理されたけど、ほんの一〇分前ぐらいに予約したわけだし。そう思いながらギルドに入り、指定された窓口に向かってみる。・・・おぉ、いつもの予約通りだ。人が並んでいない、あっという間にメイさんの前へ行くことが出来た。
「到着早いですね、ティルさん。まずは報告、・・・それで良いですか?」
うむ、と頷いてカードを渡す。メイさんは受け取ったカードを水晶板に乗せ、凄い勢いでイジリ出す。その様子を見ながら、彼女とは仲良くなったなぁ~としみじみ思う。様からさんへ、友達感覚になったのが喜ばしい。・・・エイミーさんはパートナーで一番仲が良い、・・・フィオラさんは真面目でお固いんだよなぁ~。・・・なんて思いながら、メイさんの作業が終わるのを待つのであった。
カードの更新が終わり、メイさんにカードを返してもらった。
「おめでとうございます!ティルさんはランクEから、ランクDにランクアップしました!流石ですね!」
ニコニコ笑顔でそう言われた。・・・ランクアップしたのか、ビックリだぜ!そういえば、殆んどの条件を満たしていたっけな。依頼数だけ、満たしていなかったんだっけ。それが今回、満たされてランクアップということになったんだな。Junさんのお陰だな!うん。
レベリングでサポートしまくったからな、依頼も達成しまくりだった。俺はJunさんに、ライトブースターとダークブースターを掛けるだけ。そして敵に対しては、フラッシュ、ダークミストで妨害。トーチの効果時間の検証とか、地味な依頼を達成していたのだ。・・・というか、地味な依頼しかなかったんだけどね。ランクDからは、一気に種類が増えるらしいから楽しみだぜ。
更新を終えた俺は、メイさんと日常の話題やランクDの依頼・購入可能魔法について話していた。
「なるほど、ランクDから魔法研究の助手、他支部からの依頼で魔導具の素材集め、精霊調査等の依頼が増えるのか。・・・中には、冒険者ギルドで良いんじゃね?っていう依頼もあるけど。特に素材集めとか、生産ギルドは冒険者ギルドに依頼を出しているけど、それじゃあ駄目なのか?」
生産者は戦闘が苦手な者が多いからな、冒険者に依頼を出すのが普通なんだけど。魔法を使う者は、戦闘もイケるって奴が多い。しかし防御面に難がある、安全に集めるのは難しい。・・・例外はあるだろうが、もやし系の多い魔法ギルド登録者より、戦闘に強い冒険者ギルド登録者の方が達成しやすいと思うんだけど。
「冒険者ギルドにも、素材集めの依頼は出していますよ?此方で出している依頼は、特殊な物が多いんですよね。ある程度の魔法知識、INT・MEDが高くないと品質が下がる物があるんです。ですのでランクDからの依頼となり、特殊な素材に限っては魔法ギルドからの依頼となるのです。その他の素材は、冒険者ギルドに頼んでますね。」
ふむ・・・、冒険者ギルドに出している依頼は普通に集めても良い物。こちらで出している依頼は、魔法関連が条件となり、特定の魔法を使用、或いはINT・MEDがある程度高くないと駄目ってことだな。故にランクDの条件が魔法一五以上、依頼達成一〇以上、INT50以上、MED45以上になるわけだ。・・・なるほどな~。
・・・っと、当初の目的を忘れていたぜ。槍を作るのに、魔法ギルドへ行け。ザハークはそう言っていた、メイさんは何か情報を持っているだろうか?聞くだけ聞いてみますかね?
「メイさんメイさん、ちょいと聞きたいんだが・・・。魔石を使った槍を作ろうかと思っているんだけど、魔法ギルド的に良い案とかってないだろうか?」
ストレートに聞くのが一番だろう、回りくどいのは駄目だ。
「魔石を使った槍?・・・属性武器ですかね?」
うに?ってな感じで、小首を傾げるメイさん。何その可愛いは正義的仕草!滅茶苦茶可愛いんですけど・・・って違う!そうじゃないだろ俺!説明しなくちゃいかんでしょうが!
「えーと、どう言えば良いかな・・・?」
俺が目指す武器を、なるべく分かりやすく説明する。所々、メイさんから質問されるけどちゃんと説明出来ているよな?
メイさんに説明したのは、次の通りである。魔石を埋め込んだ槍を作りたい。その槍に魔力を溜めることが出来る。溜めた魔力は大技に変換することが出来る。溜めた魔力は使用するまで、そのまま槍に貯蔵される。・・・こんな感じで説明しました。ごめんね?説明がヘタで。
俺のヘタクソな説明を聞いたメイさんは、
「・・・なんだか魔導具みたいですね。魔石に魔力といいますか、魔法を貯蔵する物なんですけど。魔導具みたいな武器って、あまり聞いたことが無いです。使い捨てではなく、溜めればまた使える物ですよね?・・・う~ん、〈刻印〉持ちであることが重要・・・って、ティルさん持っていましたね。」
魔導具?俺の求める武器って魔導具っぽいのか?しかもあまり聞いたことが無いって、誰も作ろうとは思わなかったのだろうか?魔導具、魔導具ねぇ・・・。とりあえず、魔導具情報を知るが出来そうだな。それを聞いてどうするかってヤツだな、うん。〈刻印〉は持っている、後は何が必要かね。
俺はメイさんの説明に耳を傾ける。
「魔導具には色々と種類があるんですけど、一番最初に注目されるのは回数ですかね?1回使い捨て・数回使い捨て・1回使用後空き・数回使用後空き・1回使用後自動充魔・数回使用後自動充魔・無限って感じです。使い捨ては、生産技術とスキルがあれば誰でも製作可能です。それ以外は、〈刻印〉が無ければ製作不可です。現時点で確認されているのは、1回使用後自動充魔までは人の手で製作されています。」
使い捨てまでは、誰でも作れるわけか。ディーバ師匠のあの珠、あれは使い捨ての魔導具なんじゃないか?んで、その他は〈刻印〉が必要・・・と。使用後空きっていうのは、使った後に空っぽの魔導具が残るってことだよな。使用後自動充魔は、使った後に自動で充電・・・充魔されるってことだろう。満タンになるまで、相当な時間が必要になると予想される。どう考えても、すぐに溜まって使えるってことは無いだろう。・・・で、無限はそのまんまの意味だな。回数無制限で連続使用可ってところだろうか。・・・現時点で俺が作れるのは、たぶん一回使用後空きだな。
メイさんの説明が続き、魔導具の価値について。当然、使い捨てが一番価値が低く、順に上がっていき無限が高い。そこに付与されている魔法が入り、価値を左右する。使い捨てでも、強力な魔法が付与されていれば、その価値は上がる。ディーバ師匠んとこの珠も、使い捨てで強力な魔法が付与されているのだろう。だからあんなに高いんだ、・・・魔導具かどうかは確定してないけど。基本的に弱い魔法だと価値は低く、強力な魔法ほど価値は高くなる。それでも例外があり、弱かろうが利用価値がある魔法ならば高くなるらしい。要は、使えるか使えないかだな。とりあえず魔導具は、使用回数と付与されている魔法が重要ってことだな。
後の説明は素材のこと、絶対に必要なのは魔石。その他の素材は、人それぞれみたいだ。どのような魔導具にするかで素材が変わるからね、製作者のセンスが重要になるわけ。その魔導具に合う素材を、そこがまた難しいんだって。俺の場合、思うがままに作ると思う。売れなくても気にしない、自分が良ければいいのさ。・・・まだ、作っちゃいないけど・・・そんな心構え。
魔導具のことを最低限、知ったわけだが・・・。その後は当然、
「・・・で、魔導具を作るのに必要なスキルはなんだ?〈刻印〉があれば、良い魔導具が作れるのは分かったんだが。・・・〈魔導〉とかいうスキルでも必要なのか?」
魔導具を作る為のスキルを教えてもらっていない、聞くのは当たり前だよな。俺の質問にメイさんは、大きく頷いて・・・、
「流石はティルさんですね、〈魔導〉というスキルが必要ですよ!しかしながら、それだけでは魔導具を作ることは出来ません。無属性魔法のマジックチャージも必要なのです。」
予想通り、〈魔導〉というスキルが必要みたいだ。
このスキルがあれば、とりあえずは魔導具を作れる。更に他のスキルと組み合わせれば、使い捨てでも色んな種類の魔導具を作ることが出来る。そこに〈刻印〉があれば、使い捨て以上の魔導具が作れる。・・・俺のユニークだかレアだか分からんが、〈魔匠〉が力を発揮するだろう。メイさんもあまり聞かないという、魔導具のような武器。それを作れると、俺は信じている。なんてったって、ザハークがこの道を示したんだからな。俺はザハークを信じるぜ!作れるとは言ってなかったけどな。
そして、無属性魔法のマジックチャージ。普通に使うと、使用者の魔法攻撃力が一度だけ一・五倍になる。その代わり、使用魔法の消費MPが二倍。マジックチャージの消費MPが二〇、現時点で消費MPが一番高い。使えないと思うかもしれないが、俺は使えると思うね。特にINTの高い奴が使えば、その攻撃力は戦士系の前衛職を超えるだろう。現在確認されている魔物で、物理に強い魔物は多く報告されているけど、魔法に強い魔物は多くない。そう考えると、やはり役立つよね。まぁ考えなしで使えば、MPが枯渇してピンチになるけど。なんにせよ、駆け引きは大事だよね。
そんなマジックチャージは、魔導具作りには欠かせないモノらしい。まぁ聞かなくても予想は出来てると思うけど、〈魔導〉持ちが魔石にマジックチャージをする。・・・マジックチャージをする際、自身の使える魔法を明確にイメージしながらすること。そこをきちんとしないと不発になり、失敗となるらしい。運が悪いと、魔石が砕け散るみたいだ。魔石の大きさ・品質・魔法の種類・スキルLV・ステータスにより、成功率が左右する。特に魔石の大きさ・品質に合った魔法をチャージすることが、失敗せずに成功する秘訣らしい。スキルLV・ステータスは+補正、上げるにこしたことはない。そこはまぁ、当然だわな。・・・で、魔導具の元となる魔石が出来上がるってわけだ。これで出来た魔石が、一般的な使い捨ての魔導具みたいだ。使い捨てに、装飾を施す馬鹿はいないよな。・・・PCの誰かが作った場合、やらかしそうだけど。ウォーレン辺りが、やらかして泣きそうだ。
魔石にチャージする前に、〈刻印〉持ちが魔石に何かしらを刻むことにより、使い捨て以上の魔導具の元となる魔石が出来上がる。何かしらっていうのは、チャージする魔法を示す魔法陣、属性を示す文字・記号、回路となる幾何学模様等、人によって違うらしい。何か一つを刻むか、それとも複数刻むかで魔石の格が変わるとのこと。小さな魔石でも、〈刻印〉の仕方次第で価値が変わるってことだな。
簡単に言うと、〈刻印〉で魔石を器にするってことだ。使い捨ては、器にしていないが為に壊れる。魔法発動時に、魔石が魔法発動に堪えられずに・・・ってことだ。逆に〈刻印〉を使い器となることで、魔法発動に堪えて残るってこと。まぁ使用する度に劣化して、いずれは壊れるみたいだが。それもメンテナンス次第みたいだけど、割高らしいよ。とにかく、〈魔導〉とマジックチャージが魔導具作りの基本。後はそれぞれの創意工夫、〈刻印〉持ちは別格ってことだ。・・・ということで、俺は別格ですな。流石は規格外、・・・ってことですかね?
〈付与〉と似ているけど、全然違うんだよな。〈付与〉はただ、属性を付与するだけだからね。魔法を付与するわけじゃない、魔導具ではないわけだ。その分、〈付与〉で作られた物には長所がある。付与された属性によって、耐性が変化すること。ランダムではあるけれど、特殊効果が付きやすいことである。通常よりも、付く可能性と付く数が多い。強力で個性的な物が作れるってことだ、そこは長所になるだろうさ。
・・・魔導具みたいな武器、魔導武器としよう。俺が求めるのは、この武器だろう。コイツを作る為に、〈魔導〉を入手せねばならない。
「マジックチャージはここで買えるにしても、〈魔導〉ってスキル屋に売っているよな?」
「そんなティルさんに朗報です!今なら、〈魔導〉とマジックチャージをセットで550万G、550万Gでお売りしています!単品ですと、〈魔導〉が500万G、マジックチャージが100万G、合計600万Gです!セットで買われると、50万Gも得をします!しかも今ですと、現在確認されている魔導具が分かるカタログも付いてきます!メールで通信購入が出来ますし、魔導具製作の見本にも出来る優れ物です!魔法陣・属性文字・属性記号・回路の例等も掲載されています!そんなカタログも付いて550万Gのお買い得セット、いかがでしょうか?」
思いの外、〈魔導〉とマジックチャージが高ぇ・・・!バラだとこんなにも高いのか、今までのスキルとは値段が段違いだ。勿論マジックチャージも高い、そう考えるとセットはお得だ。しかも素晴らしいカタログが付いてくる、これは迷うこと等せずに買いだろう。
「・・・よし、買った!・・・にしても、一気に値段が上がるのな。五五〇万なんて、普通の冒険者じゃ払えんだろ。生産者でもキツい、・・・それほどの価値があるんだろうな。まぁ・・・魔導具が作れるようになるんだから、当たり前ってことだな。」
使い捨てでも、良い値段で売れそうだしな。ディーバ師匠んとこの珠も、一つうん百万とか言ってたし。スキルを買って売りゃあ、余裕で元は取れるわな。・・・センスもあるだろうけど。
「その通りです、ティルさん!高額でも購入すれば、魔導具作ってガッポガポです!」
なんかイヤらしい顔しとるね、メイさん。たぶん俺も、悪どい顔をしているだろうけど。・・・元から悪人顔じゃないかって?・・・うるせーよ!
因みに〈魔導〉、コイツを持っている奴が魔導具を使用すると、威力が上がるみたいだ。それと、空になった魔導具に再び力を注ぐのも、〈魔導〉とマジックチャージを持つ者の仕事。それで金を取れるんじゃないかな?・・・ガッポガポやな!
大金払って〈魔導〉とマジックチャージを買った俺は、生産ギルドの作業場に戻ってきた。俺のやるべきことは、魔導武器を作ること。そして最初にやることは、魔石に刻印することだろう。さて、何を刻印すれば良いだろうか?
・・・・・・魔法陣なんて知らない、・・・駄目じゃん。肝心なことを、聞いて調べるのを忘れていた。・・・・・・あっ、・・・カタログに載っているんだっけ?
・・・・・・カタログすげー、魔法陣も問題なく載っているよ。既に売り出されているわけだから、知られても構わないってことか?いや、調べたらすぐに分かることだからかな?まぁとりあえず、これで作れる。さてと、何を刻印しますかね?魚人シリーズ専用武器にするつもりだから、闇が一番の候補かな?
色々と考えた結果、闇に決めた。武器は槍にするから、刻印する魔法はダークランスかな。魔法陣はどんなもんかね?
・・・・・・コイツがダークランスの魔法陣。ちょいと面倒ではあるが、刻印出来そうだ。大きく刻印をするか、小さくするか・・・だな。魔石は、今まで入手した物の中で一番大きい。コイツに大きく刻印するより、可能な限り小さくした方が良いか?そして、他に刻印出来るモノは刻みたいし。無理は禁物だが、挑戦することは大事だ。・・・どら、いっちょやってみますかね!
・・・ぐぉぉぉぉぉっ!・・・これを刻めば、ダークランスは・・・!ぬぅぅぅぅぅっ・・・、こ・・・これで・・・!・・・・・・はぁ~・・・っ!ダークランスの魔法陣は刻めた!間違いは・・・・・・、無いな!よし・・・!まだ、刻めるスペースはあるな。・・・・・・いけるか!?
闇・・・闇を・・・。闇という文字を・・・刻め・・・、闇の記号を・・・刻め・・・。うぉぉぉぉぉ・・・!!
ま・・・まだ・・・、スペースがあ・・・あるな。勿体ない・・・勿体ない、ここまでやったんだ・・・出来る限り・・・!幾何学を・・・、魔力の・・・通り道を・・・!燃やせ・・・全てを・・・、俺の技術を・・・この魔・・・魔石にぃ・・・!!
・・・・・・はっ!俺は何を!?一瞬、目の前が真っ白になって・・・。とりあえず周囲を見回してみると、俺の作業場みたいだ。タオルケットのような物がかけられているが、誰かがかけてくれたんだろう。たぶん、エイミーさんだな。
・・・・・・俺は無理をして倒れたのか?そうとしか考えられない、・・・調子に乗ってやっちまったな。無理はしないと決めていたのに、俺って奴は・・・。あっ・・・、魔石!慌てて魔石を探して確認する、・・・無事みたいで安心した。本当に、今度から気を付けよう。またやりそうだけど・・・。
一瞬焦ったけど、無事だった魔石。一応、じっくり確認せねば。
〔闇の刻印石〕闇魔法・ダークランスの魔法陣が刻まれた魔石。闇を示す文字と記号、魔力回路も刻まれており、通常よりも強力なダークランスを発動させることが出来る。 STR+3 INT+3(特殊効果:〈闇〉ダークランスの発動)【使用回数:0回】【充魔率:0%】【劣化率:0%】【闇属性】【製作者:ティル】
ふむ、成功しているようで安心した。装飾無しでも、魔導具として使用出来るみたいだ。装飾というか、武器に取り付けるつもりだけど。・・・ちゃんと成功しているってことで、槍の方に取り掛かりますかね。
使用するのは、淵魚人の巨大な骨二本。コイツを削って接着剤でくっ付けて、突撃槍を作る予定だ。某狩りゲーのランスみたいなヤツね、盾ではなく槍の方。アレを目指す為、根気強く削らなければならない。この骨、めっちゃ硬いから大変だ。でも、スキル効果、称号効果で普通よりは楽だろう。STRとDEXも高いから、その補正も期待出来るか?ステータスの補正があるかは分からんけど。・・・とにかく、集中と根気で削りまくるぜ。いざ、・・・参る!・・・・・・・・・ふぅ~っ・・・、やっとこ削り終えた。なんつー硬さ、覚悟していたけど想像以上だった。だが、穂先から柄下の辺りまでは出来た。二つのパーツに別れているが、〔魔法の接着剤〕でくっ付ければ一つとなる。しかも今回の接着剤は、グリーンスライムの核を使用している。より品質が上がっている為、乾くのが早いのだ。そんなわけで、くっ付いて一つとなったパーツを確認する。なるべく良い物を作りたいからな、確認は重要だ。
・・・変な所は無いようだな、刻印石をはめ込む部分も不備は無い。しかし、このパーツはこれで完成とはいかないのだ。まだ、やるべきことが残っている。刻印石をはめる部分から穂先に向けて、溝を作らねばならない。穂先に刻印石の魔力が集中するように、問題なく流れるように削らなければ。削ったら、そこにボーンフィッシュの骨を埋め込んでいく。埋め込む時に、接着剤を塗り込むことを忘れてはいけない。塗り込まないと一体化しないからね。
集中して時間を掛け、その作業は終了した。我ながら丁寧な仕事だ、細工をしたようには見えない見事なパーツ。満足のいく仕上がりである、流石は俺!しかしどんなに綺麗な仕上がりでも、きちんと魔力が流れないと意味が無い。マジックチャージで、闇の魔力を弱めに流してみよう。刻印石をはめる部分に手を添えて、弱めに魔力を流してみる。すると、穂先に向けて黒い光が流れていくのが目に見える。ボーンフィッシュの骨を埋め込んだ箇所を、逸れることなく綺麗に流れる。・・・成功だ、これなら穂先から魔法をぶっ放せるだろう。
成功したことでご満悦な俺は、暫くニヤついていた。そんな時にエイミーさんが入ってきて、久々に悲鳴を上げられた。少しショックを・・・いや、かなりショックだったのは内緒だ。
・・・やっぱり、俺を発見したのはエイミーさんだったようだ。刻印石を胸に抱いて、白目で倒れていたそうな。・・・我ながら、不気味である。刻印石を見て察したようで、作業中に気を失ったのだろうと。〈刻印〉持ちのギルド職員、国家に管理されている魔導具職人のあるあるみたいで、世界各地の生産ギルドに対処法があるんだって。・・・まぁ単純に、あまり動かさずに様子見するってだけみたいだが。後もう少し・・・後もう少しで、集中力がプッツンして倒れるのが〈刻印〉持ちみたいね。『とにかく、心配させないでください!』と、エイミーさんに説教をされましたよ。・・・彼女に心配をさせぬよう、改めて気を付けようかと思う。
とりあえず、穂先から柄下まで作り上げたわけだが。後は、柄を作って取り付けるだけだな。先ほどの作業とは違って、かなり簡単な作業になる。・・・柄の部分は骨にしないで、森で入手した木材で良いだろう。骨がもう無いっていうのもあるが、多少の柔軟性がなければ槍にも使い手にも負担がかかると思うからな。それに森の木材は、なかなかの良材故に問題ない。
・・・あっという間に柄を作り、一応石突も付けといた。木材とはいえ耐久力もあるし、パッと見では木材と分かるまい。しかもグリーンスライムの核を使い、衝撃にも強くした。そうそう、壊れるってことは無いだろう。いずれは柄の部分を、木材以外の物で作る予定ではある。良い素材が手に入るまでは、十分これでいけるだろうさ。さて・・・取り付けよう、刻印石も忘れずにね。
・・・そんなわけで出来ましたよ、魔導武器が!それがコイツだ。
〔魔導槍・ボーン〕淵魚人とボーンフィッシュの骨で作られた突撃槍。闇の刻印石が填められており、魔導具としても使える。槍自身にも魔力回路が施されており、魔法発動時には通常よりも強力な力が発揮される。 MP+20 STR+55 DEF+18 INT+30 AGL-10 MED+20(特殊効果:〈闇〉ダークランスの発動・充魔率によるSTR・INTの変動)【充魔率:0%】【劣化率:0%】【破損率:0%】【闇属性】【製作者:ティル】
スゲー能力の槍になった。・・・魔導槍とかって、超カッケー!ニヤニヤしながら槍を見ていると、
「確かに凄い槍ですね!魔導具と槍、二つの能力を持つ武器。流石はティルさん!パートナーとして鼻が高いです!」
エイミーさんも、この槍を見てテンションアゲアゲだ。分かっているじゃないか、エイミーさん!
エイミーさんと槍を愛でること数十分・・・、通常モードに戻った俺はJunさん装備も作り上げた。魔導槍を作り上げた自信からか、Junさん装備もかなりのハイクオリティ。今日の俺は一味違うみたいだな、全てにおいて冴えまくっている。
・・・やるべきことを全て終えた俺は、休憩がてらエイミーさんと話をする。
「そういえば、〈刻印〉持ちって少ないみたいじゃん?ギルドと国で所持者を管理しているって聞いたけど、魔導具も管理されてるの?販売するのに許可が必要とかさ。」
使い捨て以上の魔導具を作るのに、〈刻印〉は必要。しかし、〈刻印〉持ちは管理されている。シアルに限っては、一人しかいないと聞いている。魔導具作りって、どうしているのだろうか?
「シアルの街には一人しかいませんね、そういえば。・・・えーと、確か魔導具作りはしていない筈ですよ?やるべきことが多いから、作っている暇が無いとのことで。シアルの街ではしていませんけど、他の場所にいる〈刻印〉持ちさんは作っていますね。勿論、製作・販売等は管理されています。無断で製作・販売したりすると捕まりますね!管理されているからこそ、使い捨て以上は高価なのです。・・・客人であるティルさんは大丈夫ですよ!安心してください!むしろバンバン製作・販売してくれた方が、ありがたいかもです。魔導具を巡って貴族様同士の揉め事や、国同士の戦争に発展する場合があるみたいですし。魔導具が市場に多く出るようになれば、そのようなことは減る筈です!・・・たぶん。」
・・・・・・なんかスゲー嫌なことを聞いたような。・・・フラグじゃね?
休憩を終えてエイミーさんと別れた俺は、槍を試す為にとりあえず草原へ。森だと遮蔽物が多いからな、何も無い草原が良いだろう。・・・槍を構えてマジックチャージ、・・・おおう!光っとる、ちゃんと光っとるがな!刻印石に向けて、魔力が集まっていくように回路が光っている。カッケー!魔導武器って感じがバリバリするぜ!
・・・チャージ終了!刻印石が黒く染まり、回路も黒くなっている。一気に禍々しく変貌した槍、これもまたカッコいい!
後はぶっ放すだけ、一応・・・万が一を考えて空にぶっ放そう。PCに当たったら、ヤバいからな。強力なダークランスになる筈だけど、その姿はどんなものか?いざ・・・!
「ダークランス!」
槍に意識を集中して、その魔法の名を叫ぶ。刻印石が輝いた後、その光が回路を辿って穂先に集中する。そして・・・、
ズゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!
穂先から黒い光の奔流が空へ・・・。黒いメガ粒子砲・・・、想像以上のモノだと思う。
・・・ダークランスじゃねぇよ、別モンじゃねぇか!森で検証しなくて良かったよ、マジで!使いどころを考えないとヤバいじゃねぇか!・・・コイツは色々と検証しないとヤバいぞ、この力に振り回されちまう。細かく試行錯誤をしなくては!
・・・色々とやってみた結果、充魔率一〇%からダークランスを放つことが出来た。一〇%のダークランスは、辛うじて強力なダークランスと言えた。二〇%あたりから別物、一〇〇%はメガ粒子砲。なんだこの武器!我ながら凄まじい物を作ってしまった。
因みに、強力過ぎてダークランスじゃなくなった。本当に別物となったのだ。アーツではなく、魔法でもない。魔導武器故に、【魔導技】となった。・・・P×Pバトルが終わったら、情報を掲示板に挙げといた方が良いだろう。
・・・そんなわけで場所とかを考えて、充魔率を調整して戦わなければいけない。放たなくても十分強力な槍だからな、・・・まぁいいだろう。この槍があれば、P×Pバトルも圧勝よな!くははははは!ヴェネよ、覚悟しとけよ。・・・ぬぅははははははははは!!
余談ではあるが、草原にて黄色い悪魔が出たとかいう噂が立つ。黒い閃光を放つ悪魔は高笑いをした後、物凄い勢いで何処かへと走り去ったとのこと。一体何者なのか?その正体は誰にも分からない。
誤字脱字があるやも。そん時は、ご指摘お願いします。
今回も勢いです、変だったらごめんなさい。
次回は、バトル終了後の話です。その後、掲示板となるでしょう!




