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第36話 ~深き森で

死戻りより、死に戻りの方がいいですかね?


読みは同じですよ、因みに。


家の近くが陥没したみたい。通行止めになっとりました。


今回は投稿早めです。


頑張った!


前回の感想は後で返します。

『・・・・・・!!』


グチャリとスライムを踏み潰す俺。ノーンさんは、ウォーターウォールでスライムの接近を防ぎつつ、ウォーターショットで牽制する。だが、ウォーターウォールはスライムにはあまり効果が無いようで、短時間で突破される。突破したスライム達は、ノーンさんに襲い掛かろうとするが、


「そうはさせない。」


ノーンさんの前に立ち塞がり、スライム達を蹴散らす。俺がいる限り、そう簡単にやらせはせんよ。蹴散らされたスライム達に、ノーンさんが追撃の魔法を放つ。


「ノーンさん、水系は効果があまり無いみたいだ。光に切り替えた方がいい・・・!」


「そのようですわね・・・!ティルさん、私は大丈夫ですからディジーさんを!」


ノーンさんに言われて、ディジーさんに視線を向ける。槍を振り回して近付けさせないようにしているが、徐々に囲まれつつある。何度か突き刺してみたりしているようだが、効果があまり無いみたいだ。このグリーンスライム、斬撃・刺突系の攻撃が効きにくいようだ。雨の日限定なだけあって、水属性の魔法も効きにくい。光属性があるからノーンさんはいいが、ディジーさんは槍しか無いからな。戦いにくい相手だろう、というか倒せないだろう。・・・そんなわけで、助けなきゃ駄目だな。


ディジーさんを囲んでいるスライム達を、一体ずつ踏み潰しながら彼女の下へ。


「大事ないな、ディジーさん。コイツらは打撃系が有効みたいだぞ。」


「・・・・・・見れば分かるよ、ティルさん。流石だけど、軽々踏み潰すとかって・・・。」


苦笑いをしつつ、『助かったぁ~!』と息を吐く。だが、


「まだ生きてるからな、コイツら。ほら、トドメトドメ。」


そう言いながら、潰れかけているスライムをもう一度踏む。ディジーさんも真似をして、スライムを何度も踏みつける。ディジーさんは非力な方だからな、武器無しでは厳しいだろう。まぁ虫の息だから、十分倒せるだろうが。・・・ほら、なんとか一匹倒した。続けてもう一匹、と思ったみたいだけど体当たりを食らって引っくり返った。スライムの奴、ヒールで回復したみたいだな。スライムが追撃をする前に、踏み潰してトドメを刺す。これで、こっちのスライムは全滅した。ノーンさんの方は・・・、大丈夫みたいだな。これでスライムは全て倒したってことだ。忘れずに素材を回収しないと。


三人それぞれ、スライムから素材を回収する。一五、六匹ぐらいは倒したんじゃないかね。最初は一匹だったのに、どんどん出てきて連戦するハメになった。・・・深く考えれば、それは当たり前のことかもしれない。雨の日に行動するNPCはいないし、森に来るPCは俺達以外にいないだろう。森の魔物を退治するような者が、数日来ないだけで魔物の数は増えるだろうさ。スキルで避けながらここまで来たが、ゴブの数が多かった。それに、蜘蛛との遭遇率も高めだったし。前はスキル無しだから、避けることなく突っ込んだのだが、魔物の数はここまで多くなかったと思う。その時はソロで、木々を跳び回っていたからかもしれないが。とにかく、魔物の数が多いのは確実だ。・・・多い時に森に来たわけだが、まずったかなぁ。今からでも遅くないから、街に戻った方がいいだろうか。だが、スライム素材・食材が魅力的だ。雨の日限定の魔物だし、うーむ・・・。二人にも聞いてみるか、進むか退くかを。


素材回収が終わった俺は、二人に進むか退くかどちらにするかを聞いた。


「進んでもいいんじゃない?モンスターが多いみたいだけど、死に戻るだけだし。・・・恐いっちゃあ恐いけど。」


「私も進むことに一票ですわ。死に戻りは、ステータス下降のペナルティだけですし。それに、このような経験はそうそうありませんもの。」


二人とも、進む方に気持ちがあるか。俺達PCは、死なずに死に戻るだけだしな。メンバーにNPCがいたら、聞かずに戻ることを決めたが、三人ともPCだから問題ない。しかし、死に戻りはステータス下降だけか。ペナルティが軽いと思うのは、俺だけだろうか?その内、ステータス下降の他に所持品を落とすとか、ペナルティを増やした方がいいんじゃないか?死に戻れば大丈夫って、なんか違うと思うんだよね。まぁ二人が進む気なら、進むけどね。全員、無事帰還は無理かもなぁ。・・・目標にしてたけどさ。




さぁ進みますか、と思った矢先、


『『『『・・・・・・・・・!』』』』


木の中から、土の中から、水溜まりの中から、グリーンスライムが滲み出てきた。・・・登場早いな、コイツら。ピョンピョン跳ねながら、俺達を囲んでいく。うーん、飛んで火に入る夏の虫。俺には、素材がやってきたとしか思えないが、二人は違うんだろうな。特にディジーさんは、口元がヒクヒクしているし。


「ノーンさんは、光属性の魔法で牽制しつつ、余裕があったら撃破を狙ってくれ。ディジーさんは、槍で刺すんじゃなくて、柄の部分で薙ぎ払うようにすればいい。・・・俺がメインでやるから、二人は無理をしないで出来ることを。」


そう指示を出して、スライムとの第二戦が始まった。


俺が一歩踏み出すのと同時に、ノーンさんが自分達の背後にライトウォールを放つ。後顧の憂いを断つってわけか、流石だなノーンさん。背後からの攻撃は当分無い、正面からの攻撃に備えるのみ。戦いやすくなったが油断は禁物、スライムだけとは限らないからな。俺目掛けて飛び込んでくるスライムを、一歩踏み出し腰に力を入れてワンパンチ。その勢いを殺さずに、踏み出した足を軸に体を捻って、裏拳をもう一匹に叩き込む。二匹はバウンドして吹っ飛び、追撃でノーンさんのライトショットがスライムを襲う。トドメはノーンさんに任せ、身を翻してディジーさんの方へ。彼女は俺の言ったように、必死に槍を振り回す。薙ぎ払うようにスライム達を攻撃するが、なかなか攻撃がヒットしない。慣れない攻撃は当てるのが難しい。その攻撃の合間を抜けて、スライム達に体当たりを何発も貰っている。俺はスライム達の隙を突いて、ディジーさんに投擲薬を投げる。魔法は間に合いそうにないからな。


仕切り直して、ディジーさんの周りにいるスライム達を一匹ずつ踏んでいく。俺の踏みつけは、一撃でスライムを瀕死に追い込む。瀕死になれば、立て直したディジーさんでも倒せるハズ。さっきもリンチするが如く、踏みつけて倒していたし。俺一人で圧倒出来るが、二人には色々と経験させたい。経験させたいとは言ったが、俺の経験にもなるし。ソロの俺にとっても、二人との共闘は経験になる。いずれは、従魔で魔物を仲間にする予定だ。魔物との連携の為の経験を今、積むのもいいだろう。・・・PCと組む気はないのかって?何度も言っているが、俺はソロでこれからも行く予定だ。今回みたいなのは、たまにでいい。俺は自由でいたいからな。


俺が色々と考えながらプチプチやっている中、ディジーさんは槍の柄でスライムを叩いている。ノーンさんも、隙を見逃さずに魔法を放っている。考え事をしながらプチプチ潰しつつ、二人の動きに感心する。すぐに畳み掛けるのはポイントが高い、ちゃんと状況を把握しているってことだからな。・・・悪い癖で、考え事をしながら戦う俺。そんな俺に、罰というのが下されるわけで・・・、


バゴンッ!


「ひでぶっ・・・!!」


突然の衝撃に、世紀末的な悲鳴をあげて吹っ飛ばされる俺。スライムと同じようにバウンドして、木の幹に体を強打する。吹っ飛ばされた俺を見て、動きが止まる二人。止まっちゃいかんぞと思いつつも、


「いたた・・・。また考え事をして、注意力散漫になったか。」


少し痛いな程度ですんだ俺は、タフガイなわけで。木を支えに起き上がり、奇襲してきた奴に目を向ける。そこには、大きな猪が・・・。蜘蛛より小さいが、思いの外デカイなと素直に思った。




俺は首をコキコキ鳴らして、巨大猪を見る。勿論、鑑定眼を発動させる。


【ビッグボア】LV:23

HP:820/820 MP:0/0 STR:95 DEF:58 INT:13 AGL:60 DEX:32 MED:15 LUK:21

深き森に生息する大型の猪。主に木の実や木の芽を食べる。性格は大人しい方ではあるが、好物のグリーンスライムを見付けると興奮し、凶暴になる。突進を得意とし、その一撃は木すらもへし折ると言われるほど強力。巨体に似合わず俊敏で、並の冒険者では苦戦は必至。PTで狩ることをオススメする。逃げる相手を追いかける習性があるため、ビッグボアには決して背を向けてはいけない。


スライムを横取りしようと、攻撃を仕掛けてきたわけか・・・。木をもへし折る突進か、道理で痛かった筈だ。闇魚人戦を思い出す、奴らと同じぐらいの攻撃力かね。それよりも、逃げるのは駄目か。・・・ノーンさんとディジーさんは、猪の突進を食らったら一撃死だわな。不意打ちを食らったのが、俺でよかった。・・・俺がコイツの相手をせねばなるまい。二人が協力すればスライムには、そうそう負けないだろう。さて、やりますか。・・・と構えるが、やけにガチャガチャ音が鳴る。心なしか、体も軽い。・・・・・・・・・まさか!


猪を無視して、背負袋を降ろす。そして中を確認すると、やっぱりポーションなどの薬瓶が割れていた。背負袋は無事だったが、中はグチャグチャ・・・。何個か無事だったけど、ほぼ全滅。流石のパワーと感心してしまう。だが・・・、


「おぅ・・・コラ猪。よくもまぁやってくれたもんだな、えぇ・・・!貴様の体で払ってもらおうか、そこそこの素材になるんだろう?・・・覚悟してもらおうか!!」


薬をボックスに入れず、背負袋の中にしまったお前が悪いだって?・・・前にも言ったと思うが、行商人は背負袋が命だ。それこそがロマンだ。空の背負袋を背負うのは、俺のロマンに反する行いだ。・・・断じて認めることが出来ない。故に、これは単なる八つ当たりになるわけだ。背負袋に薬を入れた俺が悪い、考え事をして奇襲に気付かなかった俺が悪い、それ以上に割る原因になった猪が悪いんじゃ!口元をヒクつかせながら、笑みを浮かべる俺。クハハハハ・・・!ぼたん鍋にしてくれる!


俺は鞘からファルカタを取り出し、ジリジリと猪との間合いを詰める。自分で言うのもあれだが、今の俺はさぞかし悪い顔をしているだろう。因みに、背負袋はボックスにしまった。ガチャガチャ音がウルサイからな。まぁそれはいい、そんなことより猪だ。首を落とすか・・・、真っ二つにするか・・・、どうしようかね。猪、何も出来ぬまま死ぬ気はないよな?かかってこいよ。・・・・・・・・・オイ、何ビビってんだよ。さっきまでの風格はどこいった、スライム食いたいんだろう?だから俺に突進かましたんだろう?震えてんじゃねぇよ、視線逸らすな。身を翻して、逃げようとすんな。この俺が、逃がすようなヘマをすると思うか?


「・・・ダークウォール。」


俺は背を向けて逃げようとする猪の前に、ダークウォールを出し退路を断つ。鼻先が触れたのか、猪の奴は首をブンブン振り回す。ちょいと触れた程度で大袈裟な。お、逃げられないと悟ったか。俺に向き直ったぞ。・・・そうこなくては、面白くない。存分に暴れるといい、暴れたところで俺を倒すことは出来ないと思うがな。


・・・来るか!と思ったんだが、猪の様子がおかしい。ビビってるとか、そういうのじゃなくて。何やら足がフラついているし、口から泡を吹いている。何があったんだ?この猪に。俺はいつ突進が来てもいいように、身構えながら様子を見る。


・・・・・・ドスン!


猪の奴、腹を上にして引っくり返ったぞ。敵に脆い部分を見せるとは、・・・何があった猪よ。流石の俺も、これは予想外だ。猪の奴が、自暴自棄になって突進してくると思ったんだが。ふむ、動く気配がないな。・・・死んではいないみたいだ、ピクピクしてるし。怪訝に思い、とりあえず鑑定眼。


【ビッグボア】LV:23(麻痺状態)


麻痺?何故に?俺は普通にダークウォールを出しただけだぞ?そもそも、状態異常を引き起こす魔法なんか持ってない。精々(せいぜい)目潰しと視界阻害程度だ。麻痺を与える魔法なんざない。・・・うーん、分からん。分からないが、とりあえず殺りますか。このまま放置しても、他の魔物に襲われるだろうし。それに、俺の獲物でもあるし。そんなわけで、安らかに眠れ猪よ。俺が、お前を色々な意味で美味しくいただいてやる。せめて、駄目になった薬ぐらいは役に立ってくれよ。


・・・・・・・・・ザシュッ!!




まともに戦うことなく、よく分からないまま勝利した。何が起こったのかは、後で調べることにしてだ。俺は薬の仇を取って、二人の安全を確保出来た。一撃死の危機を脱したわけだが・・・、


「ひぃ・・・!ティルさん、お気をお鎮めくださいませ!」


「あばばばばば・・・!凄いプレッシャーだよ、お助けー!」


『・・・・・・・・・!!』


プルプル震える二人と一匹。・・・えー、なんで二人がビビってるんだ?しかもスライムの奴、ディジーさんの頭の上で一緒に震えているし。このスライム以外は全滅しているっぽい、というかなんだこの状況。俺が悪者っぽい雰囲気、解せん。・・・むむむ。


「とにかく、プレッシャーを抑えてくださいまし!」


プレッシャーを出しているつもりはないんだが。とにかく、抑えればいいわけね。・・・・・・平常心、平常心。そう念じると、二人と一匹から安堵感が。俺って、変なスキルとか持っていたか?


今現在、安全ということでカードチェック。二人と一匹がビビっていた原因を突き止めた。


〈威圧〉:格下のPC・NPC・魔物などに対して、行動阻害(恐慌・戦意喪失など)を引き起こす。それと同時に、格下の魔物エンカウント率低下・格上の魔物エンカウント率上昇。自動発動及び任意発動。発動後、任意解除をしない限り、常時発動。


〔邪笑の冒険者〕:その微笑で、心弱き全ての者を恐怖におとしいれた者。怒りを含んだ笑みを浮かべると、威圧効果が付く。(〈威圧〉所持時、自動発動・称号効果の威圧が〈威圧〉と重複)


この二つが原因だと思う。久々に〔邪笑の冒険者〕の説明を見たけど、前回見た時よりパワーアップしているのは気のせいか?まぁそれはさておき二人と一匹、そして猪がビビったのは〈威圧〉が発動したからのようだ。しかも、称号効果の威圧とスキルの〈威圧〉のWダブル発動。そんでもって、自動発動ときたもんだ。控えに〈威圧〉があっても称号が発動したら、控えの〈威圧〉も同時に発動するみたい。〈威圧〉が発動したから、〈不屈〉がメインから控えに移動してるし。なんていうか・・・最悪じゃね?やたらめったら、怒ることが出来ないじゃん。怒り具合にもよると思うけど、怒れば〈威圧〉が発動する可能性があるんだから。街中まちなかで発動したらパニック必至、下手したら犯罪者。これも、呪いの一つなのだろうか・・・!?


この状況の原因を作ったのは、不本意ながら俺なわけで。二人には、俺のスキルと称号のことを話した。ノーンさんの場合は、一度カードの見せ合いをしたから称号のことは知っている。知ってはいるが、


「ティルさんと〈威圧〉、そして〔邪笑の冒険者〕。・・・凶悪な組み合わせですわね?それと、ご愁傷さまです。」


流石に自動発動はあれみたいで、お気の毒に・・・といった顔をしている。


「今の装備・・・行商人だったっけ?マフィア装備じゃなくてよかったね!」


言われてみれば、マフィア・・・じゃなく狼シリーズ。アレも威圧効果があったハズ。いずれは修繕する予定ではあるが、威圧効果がトリプルになる可能性もあるのか。戦闘や冒険では頼りになるが、普段の行動では難儀なことになるのは目に見えている。この先のことを考えて、平常心を保てるスキルを探すかな。教会や寺で、祈りとか座禅をすれば、効果はありそうだが。教会は何処かにあるとは思うが、寺ってあるのだろうか?


ビビった理由は分かったが・・・、このスライムは一体何なんだ?ディジーさんの頭から動かないんだが、


「なぁ・・・、その頭の上のスライムはなんだ?さっきまで敵だったんじゃないの?」


さっきまで、プチプチしていた奴らの生き残りだと思うんだが。


「この子はダメだよティルさん!同じ恐怖を体験した仲間なんだから!」


恐怖って・・・、俺のことなんだろうけど。頭の上のスライムを、胸に抱いて警戒するディジーさん。・・・無害な奴を殺る趣味は無いんだがな。


「殺らないし・・・、そう警戒しなさんな。」


ノーンさんの話では、俺が瀕死に追い込んだスライム達のトドメを刺していたら、いきなり俺が吹っ飛んだことに驚いたらしい。俺の身を心配したが、大きな猪が襲撃した魔物と分かって、動けなくなったみたいだ。殆どのスライムは倒したのだが、生き残っていたスライムは逃げ出した。一匹だけ瀕死だったみたいで、自分自身に回復魔法をかけて、回復してから逃げようとしたのだが、突然のプレッシャーに逃げるタイミングを逃したのでは?と予想。そんなわけで、逃げ遅れたスライムがビビって、近くにいたディジーさんの頭の上に乗っかった。慌てて振り落とそうとしたが、俺からの威圧が高まったことで、二人もビビってしまったらしい。そして、二人と一匹はプルプル震えていて、猪が倒れて俺の威圧が消えて、今に至ると・・・。よく分からんが、ノーンさんの予想も交えた説明を聞いた俺は、


「・・・これも一つの『吊り橋効果』ってヤツなのか?」


ディジーさんとスライムを見て、そう思った。




仲良く戯れているディジーさんとスライム。俺はノーンさんと二人で様子を見ていたのだが、何やらその二人が光り出した。謎の現象に驚きを隠せない俺。


「ノーンさん、なんか光ってないか?」


「ディジーさんとスライムが光ってますわね?」


何が起きたのか分からんが、悪いことではなさそうだ。様子を窺っていると、光が収まった。・・・スライムを鑑定したら、何か分かるかもしれないな。そう思って、スライムに鑑定眼を発動。


【グリーンスライム】LV:19(主:ディジー)


ステータスと説明文が出てこない。それよりも、主にディジーさんの名が・・・。これはアレか?もしかすると、吊り橋効果からのアレか?先を越されたのだろうか・・・。うーむ、とりあえずディジーさんに確認を。高確率でアレだろう。


「ディジーさん、スライムを鑑定してみたんだが・・・。」


スライムの主にディジーさんの名前があると教えて、カードを確認してもらった。


スライムを頭に乗せた状態で、カードを確認するディジーさん。やがて、


「あ!〈従魔〉が増えてる!このスライムを従魔しちゃってるよ!しかもジョブに〔スライム使い〕って・・・!」


やっぱり〈従魔〉を手に入れつつ、スライムを従魔したわけか。・・・ジョブにも就いたのはビックリだ。魔物使いではなく、〔スライム使い〕。最初にスライムを従魔したからか?・・・いや、それだったら魔物使いってジョブがある筈がない。うーむ、人の事なんだが気になる。まぁ一つだけ、俺にも分かることがある。ディジーさんはこれから先、〔スライム使い〕を外すことが出来ないってこと。たぶん、生産者を目指しているのであろうディジーさん。〔スライム使い〕を中心に大丈夫だろうか?と考えてしまう。どんな道を辿るのか、楽しみでもあるが。・・・しかしこの結果は、俺の影響だったりするのかな?そこが気になってみたり。


「・・・羨ましいかぎりですわね。私もジョブに就きたいですし、従魔も欲しいですわ・・・。」


羨望の眼差しでディジーさんを見るノーンさん。・・・羨ましいかもしれないが、ギルドできちんとジョブに就いた方がいいんじゃないかな。俺はともかく、ノーンさんなら魔法系のジョブに就けそうだし。まぁレアジョブだと思うから、それはそれでいいんだろうが・・・。


ディジーさんが〔スライム使い〕の説明を見たところ、


〔スライム使い〕:スライムと心を通わせた魔物使い。スライムの力を最大限に引き出すことが出来る代わりに、スライム族以外の種族を従魔することが出来ない。

HP+10 MP+10 DEF+5 AGL+5 DEX+5 MED+5 LUK+15

(斬撃・刺突耐性):斬撃・刺突判定の攻撃を80%にする。

(他種族従魔不可):スライム族以外の従魔は不可能。

(スライムパワー):従魔しているスライム族のステータスが1・2倍になる。

(スライム愛):スライム族の従魔が成功しやすくなる。


・・・・・・微妙だと思うのは、俺だけだろうか?なんとなく、そうなるんじゃないかとは思っていたのだが、スライムオンリーな魔物使い。スライム好きには堪らないジョブだが、どうせだったらドラゴン使いみたいなのがいい。〔スライム使い〕があるなら、きっとあるだろう。


「・・・私は、別の魔物を従魔したいと思いますわ。」


ノーンさんも、微妙だと思ったのだろう。スライムを従魔した本人は、


「今から君の名前は、キルロイだからね。今後とも、ヨロシク!」


『・・・♪・・・・・・♪♪』


めっちゃ喜んでいるっぽい。俺達は微妙だと思うが、本人が満足ならそれでいい。名前的に、俺の〔無職〕よりは断然にいいと思うしな。




グリーンスライムのキルロイが仲間になったわけだが、次はどうしようか。先ほどの威圧で、周囲には魔物の気配がないみたいだし。


「せっかく安全になったんだし、採取しながら奥に行ってみようよ。」


「そうですわねぇ・・・。私もそれで構いませんわ。」


採取しながら奥ねぇ、・・・それもいいかもしれん。俺も〈伐採〉があるし、木材を手に入れるチャンスか。


「じゃあ採取しながら、奥に行ってみるか。・・・一応、俺の目の届く辺りにいてくれよ?」


そんなわけで、採取開始。ノーンさんは、ディジーさんの手伝いに。俺は〈伐採〉するからな、非力なノーンさんには俺の手伝いは出来まい。俺はボックスから斧を取り出す。ヴェネにやろうと思っていた斧だが、F.E.O内で連絡がつかない。ボックスの肥やしになっていたが、役に立つ日が来るとは。ヴェネに合わせてやや大きめな斧だが、俺なら普通に扱えるだろう。とりあえず木を一本、倒してみるか。


近くに手頃な木を発見。太すぎず細すぎず、いい感じだな。ポムポムと木の幹を叩く俺。・・・木の周囲を見回し、ディジーさん達が離れていることを確認する。さて、いっちょやりますかね。俺は斧を手に持ち、大きく振りかぶる。こっちを軽く斧で削って、反対側から一撃食らわせたら倒れるだろ。せーの・・・!


・・・ガコン!!


という音はせずに、


スパンッ!


と幹を簡単に貫通する斧。そして俺の方にも、ディジーさんの方にも倒れることなく伐採が完了する。あれぇ~・・・、こんな簡単に倒れるもんなのか?俺のSTRが高すぎたのかな?それとも、この斧が良いのかな?・・・まぁ、安全に倒せたんだからいいか。この調子なら、すぐに切り分けることが出来るだろう。・・・後、二本ぐらい倒すか。


俺的に、手頃な大きさにカットした木材三〇〇本。全てボックスにしまい込みました。三〇〇本を余裕でしまえるボックスって凄いな。容量無制限なんかね?三〇〇本あればかなりの期間、伐採しなくても木材に困ることはないだろう。森に来た目的は果たされた。後は二人の願い通り、採取しながら奥に進んでみようか。その前に、〈気配察知〉を発動。・・・・・・魔物の反応はないようだな。


「おーい、二人共!奥に行くからこっちに来てくれ!」


俺の呼び声に反応した二人は、すぐに来た。


「ティルさんは、伐採終わりましたの?」


「あんまり時間が経ってないからねぇ、一本だけ倒したの?」


「いや、木を三本倒した。木材にして三〇〇本だな、これぐらいあればいいだろ。」


お、二人がまたアホ顔を。・・・自分でも凄いとは思うよ、うん。ディジーさんの頭の上にいるキルロイが、俺に向かってプルプル揺れている。『凄いッス、ティルさん!』と言っているような気がする。・・・・・・可愛いじゃないか、コノヤロー。俺はモニモニとキルロイを揉んでから、料理に使おうと思っていた果物をキルロイに与えた。


『・・・・・・♪』


嬉しそうに、果物を取り込むキルロイ。・・・・・・俺も早く従魔が欲しいな、と思ったのは仕方ないと思う。


元に戻った二人も、


「目に付いた物は、とりあえず採取したから大丈夫。先に行こう!」


とのことなので奥へ。同じように、先へ進みながら採取をしていく。やっぱり魔物の気配がしない。どんだけ効果が高いんだよ、俺の威圧・・・と思ってしまう。称号とのWダブル発動が大きいんだろうね、きっと。安全故に、雑談しながら進むのは仕方ない。


「そういえば、〈従魔〉に気を取られてたんだけど・・・。」


と、ディジーさんが発言する。スキルにもう一つ、追加されてるのがあると。何が追加されたのかを聞くと、


〈喧嘩術〉:喧嘩慣れした者から教わった格闘術。無法臭漂う格闘術だが、気にしてはいけない。


・・・だって。完全に俺の影響だな、これ。スライム戦の時に教えたのが悪かったのか!?足で砂を巻き上げて目潰し、弱点が分かるならそこを集中すべし、出来る限り周囲を巻き込むべし、相手の一部を使ってでも攻防すべし、・・・なんてことを教えながら戦ったんだが、それのせいだよな。ノーンさんにも、似たようなことを教えたが、


「私にはありませんわね、〈喧嘩術〉・・・。」


ノーンさんにも教えはしたが、彼女は基本的に魔法。だから無いんだろうな。・・・何故に頬を膨らませてるんだノーンさん。君は魔法使い系だろう?いらんだろ、〈喧嘩術〉。


その流れで、俺もカードを改めてチェックしておく。・・・ディジーさんが、〈喧嘩術〉を習得した理由を発見。さっきは、〈威圧〉に目がいってて気付かなかった。


〈指導〉:自分の技術を対象者に教えることにより、対象者の能力を上げることが出来る。自身の持つ技術(スキル・魔法・アーツ)の劣化版を対象者が習得する場合もある。自身と対象者の相性が良くなければ、技術は対象者に影響を及ぼさない。


このスキルって、ギルド依頼で入手したんじゃなかろうか?ディジーさんに指導したあの依頼で。説明を見る限り、俺はディジーさんとの相性が良かったんだろう。同じ生産者でもあるし、武器での接近戦が基本ってとこも同じ。逆にノーンさんは、魔法主体だから駄目だったんだろう。俺も魔法は使うが、主体ではないからな。


色々あって、短期間でパワーアップした俺達は奥へ。俺もこの先は初体験だ。この先に何があるのか、楽しみである。今は威圧効果で魔物はいないが、この先には強い魔物がいる可能性が高い。二人と一匹を連れて何処まで行けるか分からんが、行けるとこまで行ってやろう。せっかくの機会だしな。・・・辺りは更に暗くなり、完全に夜の森と言ってもいい雰囲気になった。

今回も、戦いらしい戦いがない。


ティルより先に、ディジーさんが従魔。そして、スキルも入手。


威圧の影響で安全に採取しつつ、森の奥へ。そこに何があるのか。


次は、ちゃんとした戦闘があるかな?


次話は、掲示板です。ティル達が、森に行く前の内容になります。


次も、早めの投稿が出来るかな?

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