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第28話~紋章球と魔法ギルド

今日も勢いに任せてイキます。


長期の休みがほしいぜよ!

・・・・・・ハッ!俺は一体何を。・・・知らない天井どころか、天井がない。ここはどこだろうか?


「おぉティル、目覚めたか!」


声のした方を見ると、心配そうな顔の師匠がいた。


「役立たずの私がヒールを使えてよかったですね!お兄さんは半魚人との死闘後、倒れたんですよ!」


身振り手振り説明する羽虫。俺が倒れた・・・だと?そういえば淵魚人を倒した後、二人が出てきてからの記憶がない。・・・そうか、その時に倒れたのか。何はともあれ、無事たったからよかった。聞くところによると、倒れた俺をルームに二人で運んだとのこと。とりあえず羽虫が、俺にヒールをかけて回復してくれたらしい。ヒールをかけてから三〇分くらい経って、俺が目覚め今の状況ってわけだ。最初にやるべきことは、


「ありがとな二人とも。あのまま放置されていたら、死んでただろう・・・。」


ちゃんと礼を言わないとな、これは基本だろう。折角淵魚人を倒してクリアしたのに、雑魚に殺られたら笑えない。本当に感謝だ。


「いやいや、あれくらい当然じゃ。ティルがおらなんだら、わしもキツいしの。」


「助けるのは当然ですよ私が頼んだことを達成してのことですし!助けないで死戻られたら私1日は落ち込みます!」


・・・・・・一日だけかよ!とツッコミたいがやめとく。面倒だし、羽虫だしな。




目が覚めて、礼を言ったわけだが。次にやることは、クエストクリアのウインドウ確認だな。


【シークレットクエスト】湖の外来種駆除を手伝って♪

シアル西の湖に住み着いた外来魔物の駆除を手伝ってください。ボスも含めた40匹が相手です。頑張ってください!

【報酬】無名の紋章球・〈刻印〉

クエストクリア!

【追加報酬】〔通行手形〕秘境・ニヴィアンの里

【称号】ニヴィアンの友


予想通り、内容が変わっている。報酬もよくわからないが、良い物なんだろう。なんかシークレットクエストになっているし。・・・それよりもだ、秘境って何?ニヴィアンって誰?俺が難しい顔でいると、羽虫はニコニコ笑顔で、


「見事にクエストクリアになりましたねお兄さん♪まさかボスがいるとは思いませんでしたがそれすらも撃破するとは素晴らしいの一言です!私のお願いを叶えたお兄さんにはこれを差し上げましょう!シアル西の湖に住む半魚人さんの里へ入れる通行手形です!水の中ですけど!」


・・・俺、水の中で息出来ねぇよ!貰い損だよコレ!薬あるけどさぁ、いちいち買って行くのも面倒くせぇ。やはり〈水中呼吸〉というスキルが必要か?あるかどうかは知らんけど。面倒ではあるが・・・、気になる。水関係の色々な物がありそうだ、・・・そのニヴィアンの里に水中スキルが多くありそうな気がする。何てったって、秘境だもんな。それはそれとして、ニヴィアンって誰よ?称号でニヴィアンの友ってあるし。一応、羽虫に聞いてみるか。


「おい羽虫。手形はありがたく貰っておくが、ニヴィアンって誰だ?半魚人の名前か?」


「何言っているんですかちょっと待ってくださいよお兄さん、ニヴィアンっていうのはこの私の名前ですよ?シアル西の湖を統べる女神的妖精たる私のな・ま・え♪この愛らしくも美しい私に相応しい名前でしょ?」


・・・・・・羽虫の名前がニヴィアン?コイツが?・・・いやコイツは羽虫だろ、羽虫で良くね?


「似合わねぇ・・・、羽虫でいいだろ。」


「にょほほほほ!ニヴィアンって大妖精の名じゃぞ?嘘をいたらいかんぞぃ羽虫、神罰がくだるぞえ?」


「・・・ぴぃ!だからその大妖精本人が私なんですよ?偉大なる大妖精なんですよ?」


シアル西の湖を統べる大妖精ニヴィアン、それが羽虫の肩書きと名前。まぁ知ったからって、態度は改めないけどな。




師匠のルームから出てきた俺達は、これからのことを話し合っていた。ぶっちゃけ、俺は街に帰りたいんだがな。師匠はニヴィアンの里に行ってみたいようだが、はしゃぎ過ぎて眠そうだし。羽虫の奴は、俺達ともっと遊びたいらしい。・・・遊びってなんだよ、俺は死にかけたっつぅの。まぁ夕方になるし、師匠は寝オチで楽しめず不貞腐れそうな気がするし、俺は報酬の紋章球と〈刻印〉が気になるしで、解散ということにした。


「絶対絶対来てくださいよいつでも良いんで歓迎しますんで!その時は紋章球を忘れずに持ってきてくださいよ里は潜ってちょっと行った所にある大岩の中にあるんで!もし何日も来ない日が続いたら呪いますからね改めてお兄さんありがとうございました!また数日後に会えると信じてバイバイです♪」


ハイテンションを維持して羽虫は、湖の中に消えていった。落ち着いたらちゃんと里に行こう、羽虫のことだからマジで呪ってきそうだしな。羽虫を見送った後、俺は師匠をおぶってシアルの街に戻ることにした。予想した通り、師匠は俺の背で眠っている。今日は色々あったなぁ、主に戦闘方面で。しばらくは生産活動に精を出しますか。・・・つってもいつも通り過ごすだけなんだが。ブツブツと今後の行動を考えながら、帰路につくのであった。


――――――――――――――


師匠を送った俺は、とりあえず冒険者ギルドへ。クエストのことを一応、フィオラさんに報告しておこうと思ったのだ。ギルドの中に入った俺は、真っ先にフィオラさんの元へ。少しは人が増えたみたいだが、まだまだ賑わいが足りない。並ばずに受付へ行けるのはありがたいが、寂しいものがある。殆どのPC冒険者は王都に行ってんだろうな。・・・で、俺の姿を見たフィオラさんは驚いている。んー、何かしたっけ?


「ティル様、どうしたのですか?そのようにボロボロで・・・。」


あぁボロボロね。そういえば俺、ズタボロじゃん。自慢のウルフシリーズが台無しになってんだっけ。


「実は昨日の件でな・・・。」


俺は今日の出来事をフィオラさんに話した。今回も素直に驚いてくれるフィオラさん、話す甲斐があるってものだ。


「何を嬉しそうにしているのですか?楽観視出来る内容ではありませんよティル様。邪神の尖兵部隊が現れたのですよ?ティル様から提供された素材を調べる前に、重大な情報が本人から聞くことが出来ました。大至急支部長に話し、今後の方針を決めなければなりません。」


大事になってしまった。・・・大事になるか実際。まぁそれは置いといてだ、羽虫が大妖精ニヴィアンという名だったこと、秘境・ニヴィアンの里に入れるようになったことも言った。目を丸くして更に驚くフィオラさん、おぉレアな表情だ。


「・・・ニヴィアン様の里?え、湖にあるのですか?いえ・・・あの、そもそもニヴィアン様にお会いになったのですか?羽虫?」


なんかテンパりだした。たかが羽虫ですよ?そこまで驚く必要はないのでは?と言ったら怒られた。大妖精ニヴィアンは、水の女神ヴィヴィアンの末娘で剣を司る者らしい。剣を志す者にとっては神に等しい存在らしい。よく分からんが凄いらしい。・・・だけどあの羽虫だぜ?ヘタレで役立たずの羽虫が剣を司る大妖精だぁ!?嘘くせぇ~!他人の空似だろう、ありえん。あ、そういえばだ。称号でニヴィアンの友とかいういらんものが手に入ったな。これを見れば、名前が同じなだけの違う奴というのが証明されるハズだ。どれどれ・・・、


〔ニヴィアンの友〕剣を司る大妖精ニヴィアンに、友と認定された者に贈られる称号。剣に関すること全てに+補正がされる。


「・・・・・・・・・マジか。」




アイツ、蛙と死闘をするぐらいの強さなのにこの肩書きって。嘘・・・けるほど器用には見えんし。武器の類いは何も持っていなかったな、剣を持つと変わるタイプか?里に行った時に確かめればいいか。・・・・・・でも羽虫がねぇ、ニヴィアン様と呼んだ方がいいか?まぁそん時考えればいいかな。それよりも、称号効果が俺的に微妙なわけだ。俺、剣は使わないから恩恵があまりない。剣を作る時に何かしらの恩恵があるかも知れない、作業場に行ったら試してみよう。そう考えながら、ギルドカードをフィオラさんに渡す。顔を出したら確認と更新、それをちゃんとするように心がけている。情報が溜まり過ぎたら、フィオラさんが大変だしな。ランクアップやら何やらの情報もついでに聞けるから、こちらもありがたい。現に羽虫情報が聞けたわけだし、・・・予想以上に驚いたが。あ、フィオラさんに言わねばならないことがあった!


「フィオラさん、口外は無しで頼むよ。驚いて声を上げるのは勘弁。」


「・・・・・・また、何か凄いことでもやったのですか?」


そう言われて、とりあえず気合を入れるフィオラさん。そう簡単に驚かないぞ、という雰囲気が滲み出てる。だが・・・、


「んな・・・!?」


静かに驚きの声を上げるフィオラさん。信じられないものを見るような目で俺を見る。俺自身も驚いているよ。


「先程までの話は冗談の類いかと思っていましたが、ティル様の言う羽虫という方がニヴィアン様のようですね。」


若干引きつり笑顔のフィオラさんに、苦笑いしか出来ない俺だった。




「他に何かございませんか?・・・私としましては、何もないということを望みますが。」


これ以上、精神的に疲れたくないのだろう。俺も狙ってやっているわけではないのだから、そこらへんは勘弁して欲しい。それにまだ、聞きたいことがあるし。


「無名の紋章球って何か知っているか?」


自分で調べる前に情報収集ってね。さて、どんなもんかな?


「・・・・・・それはまた、凄い物を手に入れましたね。」


フィオラさんは無だった、・・・無表情である。また俺はやらかしたのだろうか?入手したとは言ってないのだが、『どうせ持っているんでしょ?』と言いたげな目をしている。いや、持っているんだけども・・・。とりあえず、簡単に聞いておくか。




無名の紋章球とは、何も刻印されていない無の宝玉である。名を刻印することでその力を解放する。名とは自分の名前のこと。刻印後、○○の紋章球となる。俺が刻印した場合は、ティルの紋章球となる。○○の紋章球となった後は、特定の条件を満たすことにより、特殊な力を宿していく。その特殊な力というのは俗にいう、加護と呼ばれる力のことらしい。剣神の加護とか、炎神の加護とかそういう加護が確認されている。加護の恩恵は自分自身の他に、PTメンバーにも多少は与えられる。PT解散後は、その恩恵はなくなる。


○○の紋章球は、貴族でいう家紋と同じで所持者を示すものとなる。○○の紋章球の力と、所持者の名声などによっては多方面において、多大な影響力を及ぼす。○○の紋章球所持者には、個人でクランを結成する際の条件が緩和される。勿論、クランからギルドに昇格する場合も同じく緩和される。少なからず野心のある冒険者は、○○の紋章球の入手が当面の目標となっている。富と権力、名誉などが努力次第で思いのままに出来るし、クランやギルドの結成は冒険者の一番の夢であるから。


因みに紋章球の加護は、クラン及びギルドのメンバーにも与えられる。○○の紋章球が、クラン及びギルドを示すエムブレムになる。故に結成前に、○○の紋章球に刻む紋様を考えるようにとのこと。クラン及びギルドのメンバーは、体の一部分にエムブレムを刻むことにより、マスターには劣るものの永続的に加護を得られる。脱退した場合は、刻まれたエムブレムは消滅し加護を受ける権利がなくなる。


他にも色々とあるらしいが、謎アイテムの一つであるワケで詳しく解明されていないみたいだ。とりあえずの情報は以上。




「へぇ、紋章球があるとクラン結成に有利なのか。・・・それに凄い力を秘めているんだな。」


加護を手に入れたら、とんでもないことになるな。PTメンバーにも恩恵が与えられるなんて、戦闘系の加護だったら戦いも楽になるな。どちらかというと、生産系の加護の方が魅力的だがな。・・・なかなかにとんでもないアイテムだな、紋章球。かなりのレアとみた。


「紋章球がなくとも当然、クラン及びギルドは結成出来ます。・・・が、人材が集まり難く弱小組織になりやすいのです。例外はありますが、あるにこしたことはないというわけですね。」


そりゃそうだ。自分に恩恵が与えられるなら、加護付エムブレムの元に集うだろう。そう考えると俺はラッキーだな。流石はシークレットクエスト、やるじゃないか羽虫。そういえば羽虫の奴、里に来る時には紋章球を持ってこいと言っていたな。加護でもくれるんかね?そしたらなおのこと、ラッキーだな。


「クランを結成するつもりならば、まずは馬車を入手してください。馬車を手に入れないことには、何も出来ませんから。」


馬車ね・・・。高いんだろうなぁと思い聞いてみれば、安い物で100万からとのこと。おすすめは250万の物らしいね、色々と物が積めるみたいだし。


「言いたいことが色々ありますが、依頼などはどうしますか?」


「俺も色々やりたいからな、今回もなしということで。」


「わかりました。では、なるべく驚くほどのことをしないように頑張ってください。」


「・・・・・・無理だよ、それ。」


普通に動いてこうなるんだから、善処するにも無理だよフィオラさん。そんなわけで、次は魔法ギルドだな。・・・場所知らないな、総合ギルドに行こう。




総合ギルドに入ると、一瞬にして空気が変わった。みんな俺を見て固まっている。そういえば、このギルドは初心者のためのギルドだったな。ならここにいるのは殆どが初心者か、俺みたいに他のギルドへの登録のために来ている奴もいるだろうが。・・・なるほどな。俺の姿はボロボロだ、淵魚人との戦いのせいでな。ボロボロ姿の男が現れたら、初心者の多いこの場所では俺を恐ろしく思うに決まっている。配慮がなかったようだ、今度から気を付けよう。まぁそれは置いといてだ、魔法ギルドエリアの受付に行くとしようか。


余談ではあるが、当然のことながらボロボロ姿のティルに驚いたのではない。ティルという存在にビビっているのだ。初心者冒険者にとってボロボロとはいえ、ウルフシリーズのマフィア仕様にしか見えない装備をした男は存在自体がボス級。ビビるのは当たり前なのだ。188cmの長身マフィアっぽい悪人顔がいたら、戦闘経験があまりない初心者には悪夢に等しい。それにだ、掲示板で挙がっている噂話に確実に当てはまっている。それに気付かないティルは、ある意味幸せだろう。仲の良い人が普通に接してくれるが故、自身の容姿を忘れている。なんとも難儀な男である。そしてまた、噂が広がっていく。この先どうなるか、作者にもわからない。




・・・で俺は今、魔法ギルドシアル支部にいる。総合ギルドの受付に行ったら、泣きながら地図と紹介状をくれた。なぜ泣いていたのかわからないが、貰った地図を頼りに辿り着いたわけだ。受付にて俺は、


「ギルドに登録したいのだが、手続きを頼めるか?」


ギルドカードと紹介状を受付嬢に渡し、登録をお願いする。受付嬢の顔は、何かに堪えようと頑張っている顔だ。トイレにでも行きたいんかね?


「わかりました。ギルドカードを確認した後、速やかに登録させてもらいましゅ・・・!」


語尾を噛んじゃってこの娘は、・・・可愛いものだ。慈愛の目で見守る俺、受付嬢はあわあわしながらカードを確認している。そしてだんだんと顔を明るくさせていく、目もなんかキラキラしてきてる。どうしたんだ?


「貴方様が最近、各ギルドにて活躍しているティル様なのですね!ついに我が魔法ギルドにも・・・!」


興奮し始めたが、俺のことを知っているのか。まぁそこそこ活躍というか、仕事をしているからな。とりあえず、ご託はいいから登録を催促する俺。受付嬢はこちらに敬礼ポーズで、


「はっ!申し訳ありません!至急登録を済ませますので、暫くお待ちを!」


そう言うと、凄まじい勢いで水晶板をイジり出した。何らかの種が弾けてしまったのだろうか?・・・というか、この世界の住人は個性が強いような気がする。人のことを言えたもんじゃないけどな。




「ティル様は、ギルドランクEから始めてもらいます!本来ならばFから始めてもらうのですが、ティル様の魔法取得数が8つです。FからEにランクアップする条件は、魔法取得数が5つ以上ですので条件を満たしているわけです。Dにランクアップする条件は、魔法取得数15以上、依頼達成数10以上、INT50以上、MED45以上となります!」


聞く前に、ランクアップのことまで教えてくれた。しかもわりと細かく、やるなこの受付嬢。総合ギルドの受付嬢は泣いてばかりで、要領を得なかった。登録も出来ずにいて、埒があかないから支部のことを聞いたら、助かったとばかりに教えてくれたわけだ。あの受付嬢、俺が去った後に叱られただろうな。なんせ支部の場所をあっさりと、地図付で教えてしまったんだから。・・・俺のカードを調べずにだ。もし俺が初心者だったり、実力の伴わない奴だったらどうするのかね?そこらへんをきっちりと教育してくれないと・・・。あのギルドの受付嬢の心配は置いといてだ、魔法ギルドにも依頼があるのな。取得数、INT、MEDは分かる気がするのだが、魔法ギルドの依頼ってどうなんだろうか?とりあえず聞いてみますか。




魔法ギルドでの依頼は、冒険者ギルドとあまり変わらないとのこと。違う点を挙げるなら、魔法を使うか使わないかの違いのみ。討伐系でいうなら、指定された魔法で戦い討伐すること。採取系でいうなら、補助を自分にかけてから採取すること。護衛でいうなら、いかに魔法を交えて安全に護衛対象を守り切れるか。・・・など、魔法の使用が達成条件に含まれることになるのだ。魔法ギルドに登録を完了した時点で、ギルドカードに魔法ギルド依頼記録というのが追加される。ここさえ見れば、依頼の達成条件を満たしているか否か分かるという。なかなかの便利機能だ。因みに、冒険者ギルド依頼記録もあり、内容も同じである。依頼を達成し報告することで、記録はリセットされる。他の依頼とごちゃごちゃになる心配はない。そんなわけで魔法ギルドの依頼は、魔法を使えばいいってことだ。




後はあれだ、聞きたいことがあったな。


「ギルドに登録したら、魔法とか買えたりするのか?」


これ重要、魔法ギルドに登録したのはこのためと言ってもいい。まぁ買えなくとも、いずれは登録するだろうからいいけど。


「魔法の購入ですか?ティル様はランクEになりますので、購入可能となります。」


なんでもランクEからは買うことが出来るらしい。依頼もランクEからで、依頼内容が魔法の使用。しかも指定されている場合があるから、売らなければ依頼が溜まってしまうことになる。だがしかし、魔法書ってのはスキル書よりも高価らしい。故になかなか依頼が減らないんだと。世知辛い世の中だ。因みに魔法書の購入は、ギルドの受付でとのこと。魔法書の販売はギルドでしかやらないみたいだ。まぁ例外があるみたいだけど、基本はギルドで購入ってことみたいだ。


因みに、スキル屋もギルド直轄の店みたいだ。それよりも・・・だ、買えるってのは朗報だな。師匠のおかげで、補助魔法の偉大さがわかったからな。ぜひ購入したい、と受付嬢に言えば、


「補助系ですか?ランクEで購入出来る補助系のお値段は、一律30万Gになります。」


高価だと聞いていたが、思いのほか高ぇ!〈付与〉と同じで20万ぐらいかと思ってたよ。まぁ、買うんですけどね。買ったのは、LUKを上げる補助魔法、ライトブースター。本当はSTRを上げるヤツが欲しかったのだが、〈火〉属性だったために諦めた。〈火〉なんか持ってねぇし。俺が持っているのは〈光〉と〈闇〉、〈闇〉のダークブースターはINTを上げるもので、〈光〉のライトブースターはLUKを上げるもの。運が高けりゃ戦闘でも採取でも、いいこと増えそうだなってことで。ぶっちゃけ俺ってば、LUKのおかげで今の俺がいるような気がするんだよね。もちろん〈俺流〉のおかげでもあるんだけどさ。レアなスキルにイベントが盛り沢山なわけだし、LUK恐るべし。




「他に何かございますか?」


受付嬢にそう言われ、もう一つあったなと思い出す。


「無名の紋章球を手に入れたのだが、〈刻印〉ってどうやるんだ?」


ボックスから紋章球を取り出し、受付嬢に見せる俺。受付嬢とギルド職員、ギルド内にいた冒険者達が・・・、


「「「「「おぉ~~~!!!」」」」」


と声を上げる。さっきまで目を逸らしたり、遠巻きで様子見していたのに出したとたんコレだ。それほどまでにレアな物なのだろう。


「凄いですティル様、ここ数年は出てない物をお持ちとは!」


数年出てないんだコレ、そりゃあ身を乗り出すわな。周りの雰囲気に呑まれて、キョドっている奴らは俺と同じPC冒険者だな。逆の立場だったら、俺もああなっていただろう。


「・・・で〈刻印〉なんだが。」


「すみません〈刻印〉ですね!・・・申し訳ありませんティル様、〈刻印〉が出来る職員は出向しておりまして、現在〈刻印〉の受付はしていないんです。明後日にはその職員が出向を終えて、ギルドに戻ってくるのですが・・・。」


「あー・・・そうなのか。・・・って〈刻印〉が使える職員は一人だけなのか?」


「はい・・・。〈刻印〉はレアスキルになりまして、シアルの街に限っては一人しか所持している者はいません。」


・・・・・・レアスキルなんだ。一人しかいないとかって、カードを確認した時に何も言わなかったじゃん。フィオラさんも貴女もさ。いや、フィオラさんの場合は羽虫の件で、驚き過ぎたから気付かなかったのかも。この受付嬢の場合は、俺で驚いていたな。まぁ俺の所持しているスキルは多いからな、流して見たんだろ。とりあえず・・・だ、


「実はだな・・・俺、〈刻印〉持ってるんだわ。」


「・・・・・・・・・え?」


一瞬固まった受付嬢は、ギルドカードを確認して後ろに引っくり返った。驚きすぎじゃね?パンツ見えたぞ。・・・あ、復活した。


「うひょ~!これは凄い!ティル様、少々お待ちを。・・・支部長、支部ちょ~~~!!」


支部長を呼びながら、奥に消えていった受付嬢。どうなるんだコレ・・・。




そんなわけで、俺は支部長と対面しているのだ。


「・・・というわけで、ティル君にはこちらからたまに指名依頼を出すから、受けてもらえるかな?」


支部長にお願いされた俺、〈刻印〉とはかなり重要なスキルのようだ。


〈刻印〉とは、装備品やアイテムに文字、魔法陣などを刻む、書くことにより特殊な力を宿らせるスキル。何を刻むかで全てが決まる、弱くも強くもなるわけだ。名前を刻むことで、専用の物を作ることが出来る。他のスキルと組み合わせることで、魔導具を作ることが出来る。同じく他のスキルと組み合わせることで、物に宿った力を打ち消すことが出来る。・・・など、やりようによっては凶悪な力を発揮する。とんでもないスキルのようだ。悪用すれば、指名手配されて処刑されるケースもあるらしい。・・・恐いもんだ。強力なレアスキル故に、国やギルドに所持者は管理されるっぽい。そんなスキルを所持している俺も、管理されるのかと思ったのだが、


「ティル君は客人冒険者だからね、管理することは出来ない。悪用するにも見た目はともかく、人柄は聞いている。ニヴィアン様の友だからね、万が一もないでしょ。」


と、いつも通り過ごして構わないとのこと。羽虫のおかげでもあるし、俺自身も悪いことをしなくてよかった、と心から思うよマジ。・・・その内、俺以外でも入手するPC冒険者も出てくるだろう。そいつらがどうするかはわからないが、俺は真面目に生きよう。悪用っていっても、何が悪に当てはまるかわからんがな。それはさておき、そんなわけで魔法ギルドの仕事を手伝ってくれたら嬉しいなぁ、ってことを言われたのだ。所持者が少ないことから、唯一の職員に負担が多いみたいだからね。ここは快く手伝って、俺は無害ですよとアピールするのが吉とみた。


「俺は冒険者だからな、何でも手伝えるわけではないが・・・。それでも良ければ手伝おう。」


「ありがとう。ティル君の都合がいい時にで構わないから、その時は受付に申し出てくれるかい?指名依頼ってことで、報酬に色付けるからさ。」


お互い笑顔で握手を交わす。〈刻印〉の経験も積めるし、ツテが出来るのは良いことだ。・・・っと、肝心なことを忘れていた。


「支部長は、紋章球に〈刻印〉をする方法って知ってたりするのか?」


「やり方はわかるよ。それじゃあ教えようか。だがまぁ、覚悟は必要だよ?初心者にはかなりキツいみたいだから。〈刻印〉持ちじゃない私には、どれほどキツいかわからんけどさ。」


ふーん、キツいのか。でも俺の紋章球にするためだ、やるしかないだろ。




そして俺は燃え尽きた、真っ白に燃え尽きちまったよ・・・。ソファーに埋もれて死にかけている俺を、登録時に相手をしてくれた受付嬢が介抱してくれる。支部長は俺を見て爆笑している。


「うひゃひゃ!凄いなティル君、まさか初心者が一発成功とかって。噂通りの逸材じゃんね。流石は各ギルド期待の俊英、今は死んでるけど。うひゃひゃひゃ!!」


何がそんなに面白いんだこの女、笑い方が下品だし。一応支部長でしょうが!・・・まぁ支部長の言うように、〈刻印〉は成功したが。ガリガリ精神力が削られ、白くなっている俺。文字を刻むのは、かなりキツいというのが身に染みてわかった。今日はもう、何もしたくない。ティルの紋章球を作ったのを最後に、今日の活動はこれで終いだ。・・・宿に戻る気力すらない。あー・・・このままここで寝たい。今すぐ寝てログアウトしたい。・・・どーすっかなぁ。


「うひひ!かなり疲れているね?ギルドの仮眠室に泊まっていくかい?添い寝してあげようか?」


添い寝は要らんが、泊まりはありだな。俺は力なく頷き、泊まる意思を伝える。


「因みに添い寝は冗談だからな、本気にすんなよ。・・・メイ、ティル君に肩を貸してやんな。そのまま仮眠室に案内してやって。」


「了解しました支部長!・・・さぁティル様、お手を!」


そういうことで、俺は仮眠室でオチます。おやすみー・・・。






『いつもFree Emblem Onlineをお楽しみ下さり、真にありがとうございます。


突然ではありますが、不具合の修正、動作の調整、機能の追加などに伴い、簡易アップデートを行わせていただきます。


日付の変わる0:00から8:00までの時間帯を予定しております。


お楽しみ中の皆様にはご迷惑をお掛けしますが、その時刻を前にログアウトをするようお願い申し上げます。


場合によっては強制ログアウトも考えております。ご了承下さるようお願い申し上げます。


簡易アップデートの内容につきましては、公式ホームページに記載されておりますので、そちらをご覧ください。』

夜さんの〈刻印〉案を使わせてもらいました。効果とかは多少違いますがね。


従魔モンスター案も投げ込んでください。やっぱり、使うか否かはわかりませんが。参考にはしたいですね。獣系のレアが有力なんかね?




のらりくらりとクラン結成を視野に入れて、活動することになるかと。その前に従魔だろうけど。


次回はたぶん、生産です。


勢いは大事です。書き終わってから、なんでこーなったはよくありますがね!

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