第26話~補助魔法と闇魚人
亀な俺ですが、どうぞよろしく。
突き抜けるような青空の下、俺は大きく背伸びする。いい天気じゃないか、絶好の狩り日和だ。宿の前で軽く準備運動をしていると、
「最近頑張っているねぇ~。運動は宿からあまり離れないでしてね、結界から出ちゃうから。」
とシグルゥから声を掛けられた。この宿は秘密の宿だからな、なんで秘密なのかは未だにわからんが。
「わかっているさシグルゥ。・・・あ、そろそろ朝食を頼む。」
「りょ~かいだよ。10分ぐらいで出来るからねぇ~。」
あと一〇分、運動をしますか。朝食を食べたら、師匠の店に直行だな。
腹ごしらえを終えた俺は師匠の店へ、そこで見た師匠の姿に脱力した。店の前にいる師匠の姿は、真っ白なワンピースに麦わら帽子、サンダルを履いており手にはバスケット。・・・・・・完全に冒険を舐めている、ピクニックに行くような姿だ。これじゃあ、PTに入れないハズだわ。だがまぁ、非戦闘員だから構わないか?だけどなぁ、・・・ブツブツと呟きながら師匠の元へ。昨日と変わらず、ご機嫌みたいだな。ニコニコ笑顔で、
「今日はいい天気じゃのぉ~、湖に行くにはうってつけの日じゃ!今日はよろしく頼むぞぃ。」
うん、美幼女だわな。しかし・・・、
「よろしく頼まれるよ師匠。でもな、その格好はダメだな。冒険を舐めているだろ・・・。」
結局ダメ出しをする俺。ダメ出しされた師匠は、
「舐めてなんかないわぃ!この服はわしのお気に入りで、きちんとした装備じゃい!ちゃんと見ぃ!」
プンスコ怒り出した。だって・・・ねぇ。まぁ見ろって言うなら確認しますが。ジッと師匠を凝視する。
〔ホワイトフェアリー〕クリスタルファルコンの霊糸を使用し、上級職人が彼女のために仕立てた、世界に一つだけのワンピース。物理・魔法に対してかなりの耐性を持つ。 DEF+135 INT+80 AGL+18 DEX+15 MED+110 LUK+43(特殊効果:物理ダメージ半減・魔法ダメージ半減・状態異常無効・MP消費半減)【光属性】【製作者:アダン】
師匠のワンピースは化け物だった。なんだこの性能、凄まじすぎる。冒険舐めるどころか、十分過ぎるよ。作ったのはアダン師匠か、流石だな。・・・俺もいずれは、その域に駆け上がってみせる。麦わら帽子とかは見なくてもいいや、どうせ化け物性能なんだろうし。
「前言撤回だ師匠、素晴らしいワンピースだ。それによく似合っている、正に美幼女!」
とりあえず、褒めてみた。
「にょほほほほ!そうじゃろそうじゃろ、もっと褒めても構わんぞ!あっでも、レディって言ってくれた方が嬉しいがの♪」
一気にテンションが上がり、機嫌も良くなった。チョロいな師匠。
――――――――――――
・・・で俺は師匠を肩車し、西門から猛スピードで湖の方へ駆けている。道に沿って真っ直ぐとな。今回は脇道に逸れることはしない、してはいけない。この後には、多数の魔物と戦わねばならないからな。それにしても、凄まじいスピードで走っているな俺。普通に走っても、ここまでのスピードは出ない。師匠を肩車しているから、尚更な。なのに何故、これほどのスピードが出せるのか?その理由は魔法だ。猛スピードで走る俺の上で、はしゃいでいる師匠の補助魔法が影響しているのだ。風魔法のウインドブースター、魔法対象者に風の力を与え、一時的にAGLを上げる魔法だ。術者の魔力に比例し効果が高くなるこの魔法、俺にほぼ最高なんじゃないか?と思うほどの恩恵を与えてくれる。体感スピードは平時の三倍くらい、どこぞの赤い人みたいだ。規格外ステータスの俺だから、なんとかこのスピードに堪えられるんだと思う。
そのお陰で、湖に早く到着することが出来る。羽虫の奴は岩の近くにいるのだろうか?・・・ま、行ってみればわかるか。俺は更に加速する。その過程でジャンプしてみたり、スキップしてみたりと色々やっている。ウインドブースターの恩恵を確かめているのだ。その結果は、恩恵アリアリだった。ジャンプしてみれば約五mの跳力、スキップしてみれば約三mぐらいの歩幅。凄いなウインドブースター、もとい補助魔法。暇があったら、師匠に習いたいものだ。どうせなら魔法ギルドにでも登録するか。冒険者ギルドに生産ギルド、商人ギルドに登録しているからな。登録した方が後々良いことがありそうだし、魔法に関するスキルも入手しやすくなりそうだからね。何はともあれ、目的地まで飛ばしますか!いゃっほぉ~い!!
「・・・!?・・・!!?・・・・・・・・・。」
なんか聞こえるが、まぁいいだろう。そして前回よりも、大幅に時間を短縮して湖に着いたのだった。
湖に無事着いた俺の最初の行動は、
「・・・師匠の存在を忘れていた、すまん。」
肩車で連れてきた師匠の介抱だった。
「うぅ~・・・ヒドイのじゃ・・・・・・。」
顔を青くして、岩の上で横たわる師匠。調子に乗って爆走したのがいけなかった。良い装備を身に付けても、中身がウサギの師匠には相当キツかったみたいだ。装備のお陰で気持ち悪くなっただけの様子、もし普通の装備だったら・・・。最悪死んでいたかもな、ウサギ師匠だし。これは大いに反省しなければなるまい。今度から気を付けよう。
師匠は寝かせて置くとして、羽虫はどこにいる?岩の上から周囲を見回してみる。・・・いないな。捜しに行きたいが、師匠がこれだからな。この状態じゃルームも使えんだろ。目を離した隙に、魔物にでも襲われたら大変だ。高性能装備だから大丈夫・・・とは思えない。ウサギ師匠は攻撃が通らなくても、衝撃でショック死しそうだし。現に青くなっているしな。まぁ朝一で来たし、補助魔法のお陰でかなり早く着いたし、師匠もこれだから少し待ってみますか。羽虫はバカ助だから、ひょっこり出てくるだろ。
・・・それから大体二時間くらい経っただろうか、未だに羽虫は出てこない。青かった師匠は復活して、水辺でバシャバシャ遊んでいる。完全に子供だ、たまに魔物が出てきてこっちに逃げてくるが、サクッと倒してはまた遊ぶの繰り返しだ。遊ぶ体力はあるみたいだな。自然と目元も緩み、保護者な気分になってくる。楽しんでもらえて、何よりだ。なんて思っていると・・・、
ガサガサッ!
水辺に自生している葦のような植物が、音を立てて揺れ始める。その音は少しずつ高くなってくる。何かがこちらに近付いてきてる。何度か襲撃してきた魔物とは、気配が違う。師匠は俺の後ろに隠れている。ユニークだったら、速やかにルームへと隠れてもらおう。とりあえず俺は先手を取れるよう、手に投擲ナイフを持つ。相手が姿を現すのを待とう、最大限の集中で・・・、
ガサガサガサッ!!
大きな音を立て、ソイツは姿を現した。
「いやぁ~食べた食べた久々に満腹ですね!侵略半魚人のお陰ですかねお魚一杯獲れちゃいましたよ、湖底の方から浅瀬に逃げてきたんでしょうかね?まぁそんなことはどうでもいいでしょう今の私は満腹天国大満足で後はお昼寝ですね!どうせお兄さんは来ていないでしょうし、来るまではレッツお昼寝タイムといきましょうか!!」
妊婦のように腹を大きくした羽虫だった。・・・・・・はぁぁぁ~~っ、緊張して損した。大きくため息を吐くと、
「・・・・・・ぴっ?」
羽虫が俺達に気付いた。
とりあえず軽く羽虫をシバいた後、これからやることを確認する。この湖で闇魚人約三〇匹を討伐。闇魚人は闇の撒き餌で誘き寄せ、師匠の魔法で数匹単位で陸に上げる。俺と闇魚人が戦う。その間、師匠には隠れてもらう。それを数回繰り返し、討伐完了クエストクリア!・・・が理想なのだが、羽虫を見ると不安になる。軽くシバいたのだが図太いのか、俺の横で・・・、
「・・・すぴー、・・・すぴー、・・・むにゃむにゃ。」
眠りこけている。すぐに起こすのは面倒事に繋がりそうだから、三〇分くらい経ったら起こそう。それから、行動開始だな。・・・少し師匠と遊ぶか。
「よし、作戦開始だ。」
師匠と軽く遊び、羽虫を起こした俺。闇魚人と戦う時がきたのだ。ここから撒き餌を撒いても、浅瀬だから奴らが集まる可能性は低い。釣竿だったからこそ、奴らを釣ることが出来た訳で。餌を付けて、遠くに投げられるからな。そして俺は泳げない、いや泳げるけども。スキルがないから、泳げないとしている。まぁ軽く泳げば、スキルを入手出来そうだけどな。俺流効果で。しかし、そんな危険なことは出来ない。練習中に襲われたら最悪だからな。何を言いたいかというと、泳いで撒き餌を撒きたい。泳いで深い場所まで行って、そこで撒き餌を撒きつつこっちに戻ってくる。そして師匠の魔法が、奴らを一網打尽で引き上げる。そして戦う作戦だ。
え?さっき説明したって?再確認だよキミ!・・・って俺は誰に言っているのだろうか?とりあえずだ、撒き餌を撒く係は一人しかいない。そう・・・、羽虫だ。役立たずの羽虫が役立つのだ。バカでも湖の女神様、泳ぐことなど朝飯前だ。しかもお腹一杯、昼寝で気力十分の状態。完全なる適任者だ。
「そういうわけだから羽虫!・・・行け!」
「私の華麗なる泳ぎを見るといいですお兄さん!・・・とうっ!!」
今まで軽くバカにされていたから、頼られて嬉しい羽虫は綺麗なフォームで飛び込む。俺は迂闊ながらもその姿に見とれてしまった。・・・・・・が、
「すいすい~・・・♪」
その後は犬かきっぽい。ふ・・・所詮は羽虫、見とれたのは気のせいだったようだ。
岩の上から羽虫の様子を見守る。今のところは問題ないようだな。羽虫が餌を撒きながら戻ってくる前に、やらねばならないことがある。肩車状態で、羽虫の様子を見てはしゃぐ師匠に声を掛ける。
「師匠、そろそろ補助魔法を掛けて欲しいんだが・・・。」
「おお、そうであったそうであった、忘れていたわぃ!」
・・・だろうと思って声を掛けたんだが、正解だったようだ。師匠は指をクルクル回して、
「ほい、オールブースター。」
軽い感じで俺に魔法を掛けた。オールブースターとは、簡単にいうと全ステータスUPの補助魔法だ。師匠の魔力が高いから、最高の上がりになるだろう。効果時間は大体六〇分だという。通常だと一〇分みたいなのだが、『わしだからこその六〇分じゃい!』と肩車状態でふんぞり返っている。素直に師匠凄いなーと思うが、あまり動かないでほしい。バランスが・・・。なんてことをしていると、羽虫の奴に動きがあった。うん、盛大に撒き餌を撒いてるな。撒きながらこっちに戻ってきている。順調みたいだ。
・・・・・・・・・ん?何やら慌て始めたぞ。凄い勢いで戻ってくるが、餌を撒くことを忘れていない。ふむ、羽虫に対する認識を改めなければならないようだな。そんな彼女の周りに多くの水しぶきが上がる。奴らが集まってきたようだ。俺は師匠を見上げながら、足をポンポン軽く叩くとこちらを見て頷く。タイミングを計り始めた。徐々に近付いてくる羽虫。半泣きでこっちに来るが、撒くことをやはり忘れない。そして・・・、
「ぴぃっ!・・・お兄さん助けてぇぇぇ!!」
俺に飛び付こうとするが、横にずれて避ける。ふむ、滑らかに避けることが出来た。オールブースター、素晴らしい補助魔法だ。これなら、昨日よりは苦戦せずに戦うことが出来そうだ。・・・といっても、昨日は一対一。今日は多対一になるのだがな。・・・まぁ大丈夫だろ。俺が避けたために、羽虫はそのまま地面に。あ・・・動かなくなった。何やらフルフル震えている。たぶん泣いているんだろうな、これは悪いことをした。後で優しくしてやるか。なんて思っていると、
「ティル!いくぞぃ、構えよ!」
上から鋭い声が。師匠がしぶきの上がる湖面に、何やら魔法を掛ける。するとどうだろうか、湖から七匹ぐらいの闇魚人が引き上げられる。・・・・・・多いな!意外と。引き上げられ空中でもがく魚人を、師匠は陸に投げるように飛ばす。それを見た俺は、
「師匠はルームに避難を!出来たら羽虫も頼む!」
「任せるのじゃ!」
俺の言葉を聞いて、師匠は羽虫のいる方へ飛び降りる。そしてそのまま、羽虫と共に姿を消した。凄いな師匠、俺は改めて感心した。・・・っと、感心している暇はないか。団体さんが俺をロックオンしたっぽいからな。さぁ、心躍る戦いを!
俺を囲むように展開した闇魚人一行、湖から少し離れているから引きずり込まれる心配はない。グッジョブだ師匠、存分に戦うことが出来る。俺は首をコキコキと鳴らし、闇魚人に目を向ける。数は七匹・・・いや、八匹か。さて、どう出る?闇魚人がどう動くのか、想像しながら警戒していると、背後の二匹がこちらに向かって動き出した。その動きに同調してか、他の奴らは少しずつ間合いを詰めてくる。逃げられないようにってわけかねぇ。逃げる気はないからどうでもいい、逆に近付いてきてくれた方がありがたいな!俺は足に力を入れて後方に跳ぶ。補助のお陰で跳力が上がっている、一気に間合いを詰めることが出来た。空中で体をひねり、二匹の内の一匹をロックオン。そのまま手を闇魚人の顔を掴み、勢いのままに地面へと叩き付けて着地。勢いを殺さずに頭を掴んだまま、再び跳び上がり軽く前方宙返りをしながら、体重をかけて闇魚人を叩き付けて着地する。そして踏み抜く勢いで、頭を踏みつける。数度踏みつけを行った結果、闇魚人は少し地面にめり込み動かなくなった。どうやら死んだ模様。他の奴らは時が止まったように動かず、こちらを見ている。何が起きたか理解出来てないのか?・・・仕方ないな、俺は不敵な笑みを浮かべて、
「・・・どうした?来いよ。仲間は死んだぞ?」
人差し指と中指を使って、チョイチョイと挑発する。挑発のせいか我にかえり、怒りまくった闇魚人達が襲いかかってきた。そうこなくては・・・。
闇魚人の爪をしゃがんで交わし、がら空きの腹に頭突きを食らわせる。怯んだところを蹴り飛ばし、もう一匹の方にぶつける。その二匹を無視して、瞬時に投擲ナイフを手に持ち右にいる奴へ。踵で砂利混じりの土を蹴り上げ、背後から襲ってきた奴の顔にぶちまける。目に入ったのか、顔を手で覆いながらもがいている。そこに追撃をと思ったのだが、
『シャァァァッ!!』
「ぐぁっ・・・!」
横から体当たりを食らって、吹っ飛ばされる。そのまま数匹が飛び掛かってきて、俺は身を守ることに専念した。奴らの攻撃に堪えながら、隙を探す。俺に馬乗りになっている奴が、大きく爪を振りかぶる。顔を庇っていた手をソイツに向けて、
「ライトショット!」
魔法を放ち、奴の顔に直撃する。大きく怯み、馬乗りが解除される。すぐさま蹴り飛ばし、横に転がる。俺のいた場所に別の奴の爪が突き刺さる。あっぶねーな!俺は起き上がり、爪を突き立てた奴に飛び掛かって頭を掴む。アーツ発動『地ならし』。その頭を力任せに地面へ叩き付け、そのまま走る。以前は普通に使えた技なのだが、アーツになったらMPを消費することになった。その分、威力は上がったけどな。俺は走ったあと、前方にいる奴に引き摺っていた奴を、やはり力任せに投げ付ける。アーツ発動『ぶん投げ』。同じくMPを消費するようになったが、これも威力と勢いが上がった。しかし少しの間、二つのアーツは使えないな。使えないこともないけど、後々の衝動がキツい。どれくらい間を置かないとダメなのか、わからないけどな。・・・っと、投げ付けたことにより、二匹が折り重なるように吹っ飛ぶ。俺はその後を追い、間合いを詰め、
「ライトランス!」
光の槍が二匹を貫く。流石の貫通力、二匹の胴に穴が空き絶命。ここまで威力が高くなるとは、これも補助魔法のお陰だな。先程ボコボコにされたが、致命的なダメージは負ってない。まだまだ余裕だな。後は五匹、お前達も責任を持って狩ってくれる!
――――――――――――
わしは恐る恐るルームから顔を出し、外の戦いの様子を見る。我が弟子ティルは、魚人との戦いを楽しんでおる。普通の者ならば、多対一など避けたいものであろう。だがティルの奴は、わしの提案をあっさり承諾しおった。フライで一網打尽じゃー!と言ったが、まさか本気にしてその準備を始めるとは。
そして今の状況じゃ。先手で一匹倒し、続いて二匹倒した。途中、胆を冷やしたがティルはケロッとしておる。魚人の頭を小脇に抱え、絞めておるのかの?そのまま前方の敵を蹴り飛ばした。お、小脇に抱えた奴を投げおったわ。痛そうじゃのぉ。投げた奴を追って、そのまま倒れ込むように肘打ちじゃ。のたうち回っとる奴の首を掴み、盾にしおったわ!・・・・・・外道じゃの。盾にした奴を再び投げて、他の奴にぶつける。今度は槍かえ?・・・・・・なぬ!槍を蹴りおった!?そのように槍を使う者など、聞いたことないわい!あっさり二匹を貫き倒したわ。
本当に規格外な弟子じゃの。補助を掛けたとしても、この戦闘力。羨ましったらありゃせんわぃ。生産に対しても素晴らしいものがあるし、流石は俊英じゃ。戦闘なんぞ初めて目の当たりにするが、ティルは凄い方なんじゃろなぁ。ま、楽しそうに笑っておるティルを見ていると、わしも嬉しくなる。付いてきてよかったわぃ、ややお荷物なわしじゃがな・・・。だが知らぬ者が見たら、完全なる悪党じゃ。我が弟子はおっかないのぉ。
「ちょっと何見ているんですか!?私にも見せてください!」
なんじゃ?羽虫が騒ぎだしたわぃ。・・・ティルのいう通り喧しい奴じゃ。ティルの見学はここまでじゃな、こやつが顔を出したら滅茶苦茶になりそうだしの。
「お主に見せるものなどないわぃ!大人しくせぃ!!」
わしはそう言って、ルームに引っ込んだ。
―――――――――――
槍を蹴って二匹を狩る、残り三匹か。・・・さっき師匠の気配を感じたが、ルームから出たわけではないよな?万が一ということもある、羽虫と一緒だし。残りはさっさと退治しますか。俺は隠していたウルフクローを装着する。三匹を見据えて・・・、
「すぐに仲間の元へと送ってやる、感謝するんだな!」
凄絶な笑みを浮かべて襲いかかる俺。近くにいた闇魚人は爪を振りかぶって飛び掛かってくるが、俺は紙一重で交わしカウンターを決める。ボディーに叩き込んだウルフクローが、硬い鱗を突き破る。クローの先が闇魚人の背から生え、一匹が絶命する。すぐに死んだ奴を蹴って退かし、二匹目へと移る。・・・っと危ねぇ!ダークランスをぶっ放してきた!魔法もいけるのか、こいつら。緊急で交わしたため、体勢が崩れるが気にしない。崩れたとしても俺のターン。立て直すついでに土を掴み、魔法を放った奴に投げ付ける。反応して土を避けるが見え見えだ。前の奴と同じようにクローを突き立てて、勢いのまま地面に叩き付け足で踏みつける。背後から迫る最後の一匹を気配で察知し、振り向き様に切り裂く。切り裂かれ倒れ込む闇魚人に、追撃で踵落とし。・・・この一撃で戦闘が終わった。うん、充実した戦いだった。致命的なダメージは受けていないものの、少なくないダメージをもらったが勝利した。やり遂げた感がハンパない。余韻に浸りたいが、剥ぎ取りナイフで素材回収しなくちゃな。
闇魚人八匹の素材を回収した俺は、一応ポーションを飲んで回復しておいた。そして一〇分くらいボーッとしていたら、ルームから師匠と羽虫が出てきた。
「よくもまぁ8匹も倒したのぉティル。お主の戦っている姿は、無法者にしか見えんかったぞ?」
「ほっとけ!」
現れて第一声がややディスり発言。自分でもわかっていることを言われると、ちょっとイラッとくる。・・・無法者と言ってきたが、俺の戦いを見ていたのかね?やはりあの気配は、師匠だったっぽいな。弱い癖に危ないことをすんなと注意したら、口を尖らせてイジけた。イジけたってこれは譲れん。万が一の時に、守りに入らなければならない俺のことも考えてくれ。
「凄いですねお兄さん!一気に8匹を討伐するとは私ビックリしました!この調子で残りも討伐してください!」
腕をブンブン振り回して、興奮する羽虫。戦う前に泣いていたっぽいのに、変わり身早いな。まぁ面倒臭いことにならなくてよかったが。そんなわけで師匠と羽虫、二人の相手をする。相手をして気付いたこと、闇魚人と戦うより疲れる。師匠は構ってちゃんだし、羽虫は単純に五月蝿い。二戦目を戦う前に疲れるのは避けたい、だから強引に二人の相手を終わらせる。二人は不満顔だが気にしない。師匠にはオールブースターをかけ直してもらい、羽虫には再び撒き餌を頼んだ。嫌がっていたが今度は避けないからと言うと、なら行くってことで泳いでいった。今度は最初から飛ばしていきますか。・・・・・・そうだ。フライで引き上げる時に、ライトウォールを唱えておいてそこに投げてもらったら、楽じゃないか?倒せなくても、程よく体力を減らせるんじゃなかろうか?そう思って師匠に聞いてみた。全部は無理だが、数匹なら出来そうとのことで早速実践してみた。
ライトウォールぶっ込み作戦は成功した。今回、引き上げた闇魚人は五匹。内の四匹は、予め出しといたライトウォールに投げ込まれた。
『『『『ギャアアアアアッ!!』』』』
闇魚人の悲鳴が響く。ライトウォールの効果時間が切れ、光の壁が消えると四匹がのたうち回っていた。おー、スゲー。師匠はドヤ顔、羽虫は小躍り。お前らいいから隠れろや。仕方ないから、ライトウォールから逃れた一匹にラッシュをかけて早々に倒す。のたうち回っている四匹も、サックリ止めを刺しとく。あっという間に終わった二戦目。これは素晴らしい作戦だ。この三人だから出来る効率のいい狩り方。隠れることを忘れ、ハイタッチする師匠と羽虫。微笑ましい光景だが、これはダメだ。調子に乗ってはいけない。俺はこれから調子に乗りかねない二人の襟首を掴み、きっちり説教をする。流石にまずいと思ったのか、二人は素直に、
「「ごめんなさい。」」
と謝ってきた。その後はちゃんと二人を褒めて、機嫌を取る俺。・・・・・・ホント、保護者な気分だわ。妹が増えたみたいに感じる。・・・そういえば、ヴェネの奴は何をしているのだろうか。Junさん達に迷惑を掛けていなければいいが。そんなことを考えながら、三戦目に向けて指示を出す。この作戦で後の戦いも、安心安全に終わらせるとしようか。二人の動きに注意しながらな。
【ステータス】
名前:ティル
種族:人間
性別:男
LV:39(+13)
HP:388/520(+160)
MP:251/310(+140)
STR:143(+55)/208〔+65〕
DEF:117(+50)/216〔+99〕
INT:77(+37)
AGL:111(+41)/135〔+24〕
DEX:144(+43)/149〔+5〕
MED:89(+34)/125〔+36〕
LUK:100(+47)
【SP】:190(+65)
【ランク】
冒険者ギルド:ランクE+
生産ギルド:ランクD
【スキル】
〈喧嘩殺法〉LV47(+14)〈投擲〉LV30(+5)〈光〉LV25(+7)〈闇〉LV24(+3)〈不屈〉LV28(+8)〈槍〉LV15(+5)〈連携〉LV9 NEW!〈脚力〉LV10 NEW!〈乱戦〉LV10 NEW!
【控えスキル】
〈釣り〉LV18(+13)〈鍛冶〉LV38(+3)〈裁縫〉LV33(+2)〈装飾〉LV25(+2)〈調合〉LV37(+8)〈付与〉LV16(+8)〈織物〉LV12(+2)〈細工〉LV17(+9)〈木工〉LV12(+3)〈鑑定〉LV45(+6)〈採取〉LV35(+3)〈採掘〉LV9〈素登り〉LV12〈料理〉LV24(+6)〈運搬〉LV14(+6)〈食事〉LV15(+2)
【固有スキル】
〈俺流〉LV40(+7)〈呪い〉LV10(+2)
【称号】
職人達の弟子
ユニークを狩りし者
見習い商人
切り裂き魔
俊英
無法の料理人
邪笑の冒険者
スキル収集家
職人冒険者
魔を釣る者 NEW!
【PC冒険者からの二つ名】
三巨頭 NEW!
【装備】
ウルフクロー〔STR+43〕
ウルフスーツセット(特殊)〔STR+10・DEF+66・AGL+20・DEX+5〕
屍狼のコート〔DEF+30・MED+8〕
草原狼の首飾り〔STR+12・DEF+3・AGL+4〕
【アーツ】
〈戦闘〉地ならし〈戦闘〉ぶん投げ〈戦闘〉身代わりの盾 NEW!
〈生産〉糸化〈生産〉生産加速
【魔法】
〈光〉ライトアロー〈光〉ライトショット〈光〉ライトウォール〈光〉ライトランス
〈闇〉ダークアロー〈闇〉ダークショット〈闇〉ダークウォール〈闇〉ダークランス
【アイテムボックス】
闇の撒き餌×80・ケロケロクリーム×2・ケロケロスプレー×2・ケロケロマジっくん×2・ケロケロ呼吸薬×2・etc
【所持金】
367,830G
次回はボス戦の予定です。
ボス戦終了後、再びフラフラと何かをします。
他国に行くか否か、クラン結成に向けての何かをするか、皆さんに案を挙げて貰ったスキルなどを入手させる、または目の当たりにする・・・など色々ありますね。
どーするかなー。




