第25話~羽虫とディーバ師匠
久々に颯爽登場ユキさんです!
久し振りの投稿ですな。
久々故に、変かもですが宜しく。しかも戦闘じゃないし!戦闘は次話です次話。たぶんですが。
会話多目になりそうな予感。
俺は岩の上で羽虫の戦いを見ていた。なんという低レベルな戦い、コイツ・・・本当に女神的妖精なのか?湖を守護する立場の者が、蛙なんかに苦戦するってどうよ?そもそも侵略されていること自体おかしい。俺に釣られることもおかしい。・・・おかしいだらけの奴だ。・・・・・・お、終わったみたいだな。なんとか羽虫が勝利をもぎ取ったみたいだ。ひっくり返っている蛙の横で、地べたに這いつくばっている。体の至るところが汚れており、戦闘の激しさが見てわかる。ニヤニヤして見ていると、羽虫は這いつくばったままで岩の上にいる俺を、
「なんで助けてくれないんですかぁ~・・・!わ、私がくせ・・・苦戦していたのにぃ~!・・・うぐっ、う゛ぇぇぇぇぇぇん!人でなしぃ~!!」
手足をジタバタとさせながら、泣きじゃくっている。・・・元気がいいじゃないか。・・・話を聞いてみないとわからないが、羽虫の奴は役に立つことがなさそうだな。蛙に苦戦しているようでは、闇魚人に殺されてしまう。・・・羽虫を守りながら、侵略魔物と戦わなければならないのか?キツイ戦いになりそうだ。戦力として、少なからず期待していたんだがな。こんなんでよく湖の女神様なことが出来るよな、管理しきれているのかね?とりあえずは羽虫の戦闘能力を、羽虫自身に聞いてみるのが一番だな。なんか特殊な力でもあればいいんだが・・・。ん?羽虫の奴、俺をジッと見ているな。
「傷付いて泣いている私を気に留めることなく考え事なんてヒドイ!優しく労った言葉の一つもあっていいんじゃないですかぁ!私との恋愛フラグが回収出来たかもなのに!・・・あ、もうダメですからね!フラグ回収不可になりましたから今更優しくしたって無駄ですよ!」
またなんか喚きだした。・・・コイツ、喧しいな!イライラしてきたぞ、流石に。
「お前がどうなろうと生きていれば問題ないだろ。そんなことより、お前の能力を知りたい。戦闘能力が無いのはわかった、サポート能力はあるのか?」
「私を労るよりソッチですか!ヒドイ・・・!!せめてスリーサイズとか好きなタイプとか他に聞くことあるでしょう!・・・信じられないほどの暴挙ですよ!至るところがボロボロの見る人が見たら興奮ものの私に対して失礼です!お兄さんのバカ!バァァァァ・・・ぴぃっ!」
喚く羽虫の顔を両手で挟み込み、持ち上げて再度聞く。
「・・・サポート能力か何か、力はあるのか?」
「ぴぃっ!!・・・ちゃんと能力について話しますから殺さないでぇ~っ!」
やっと話す気になったか、ったく疲れる奴だな。というか殺さないし。
聞いてみた結果、コイツはやはり使えないということがわかった。予想してはいたが、なんだかなぁ・・・。
「そういうわけで私は邪魔にならないようにお留守番という形でいきますね。安全な場所で朗報をお待ちします。あ、因みに闇魚人はお兄さんが討伐した9匹でしたっけ?あと、30匹ぐらいいると思いますんでよろ~です!あと湖には良い半魚人さんが住んでいますんで被害が出る前に討伐してください。」
こんなことをほざく羽虫の能力はというと、戦闘能力はシアルフロッグよりやや上あたり。PC冒険者と比べるなら強いといえるだろうが、女神な立場で考えると底辺といえるだろう。この世界の女神がどれほどのものかは知らんけど、羽虫は特別に弱いと思われる。魔法はヒールしか使えないと言っている。特別な能力と言えば、シアル西の湖限定で自由自在に行動が出来るようだ。水の中でも息が出来て、何処に何がいるのかわかるらしい。この能力は流石の管理者といったところか。・・・サポートにもむかない女神的妖精、強制クエストを押し付けることしか出来ない。無念だがコイツの言う通り、留守番?をしてもらうしかない。・・・・・・はぁ。
「闇魚人があと、約三〇匹。・・・内容はわかった、半魚人に被害が出る前ね。それほど緊急性が無いみたいだから、一度街に戻ってもいいな?・・・いや、戻らせてもらうからな。」
「えぇぇぇっ!!逃げるんですか!?敵前逃亡ですか!?私を見捨てるんですか!?きぃぃぃぃぃっ!人でなしぃっ!!・・・・・・ぴぃっ!ごめんなさい!!」
俺が一睨みすると、すぐに土下座してきた。街に戻るのは理由があるんだよ。その理由は簡単だ、闇魚人を釣る餌がない。それと水中戦になった場合の備え。もう一つ、今受けている依頼の報告だ。うん、十分すぎる理由だな。
闇の釣り餌は、この場で作ることが可能ではある。だが、付与をする時に多少なりとも集中するため、警戒しきれない。魔物の襲撃に備えて、それは出来ない。安全第一である。羽虫は湖の中限定の気配察知があるが、陸では殆ど機能しない。役に立たない奴だ。褒められるのは今のところ、容姿だけ。蛙との死闘で薄汚れているけど。そんなわけで、釣り餌は街で作って補充だな。
水中での戦いになった場合だが、そうなったら確実に死戻りだな。俺は人間族だから、水の中では息が出来ないし動きも悪くなる。水中に引き摺り込まれないように、立ち回らなければならない。引き摺り込まれても、陸に復帰することが出来る何かを入手したい。復帰出来なくとも、水中に対する何かをな。・・・羽虫の奴、湖限定とは言っているが他の場所でもいける気がするんだが、・・・すげー気になるな。それはさておき、何かしらの道具か・・・。ディーバ師匠に聞いてみるか、上級職人だしな。水中系のスキルも、いずれは入手しなければならない時が来るかもな。水泳とか潜水とかさ。
納品依頼の報告は、早めに済ませないとな。シアルマスは依頼の六匹を確保している。生物だから、出来る限り早めがいいだろう。魚は生きが命だからな。そういえば、ボックスの中に食材が色々あるな。ボックスとはいえ、早めにどうにかしないと悪くなるかも。うーむ、食材屋に売るか、ガドルフに安く売るか、どっちにするかな。それはおいおい考えるとして、
「そういうわけだから、逃げるわけではないことがわかっただろう?用意が整い次第、すぐに戻るから心配無用。明日の朝一で討伐をしたいと思う。」
「・・・なら仕方がないですね!束縛する気はないですし、明日には討伐するって言うんだったら反対する理由がありません!パパーッと街に戻って用意を済ませて戻ってきて闇魚人瞬殺を期待します!・・・この私にお兄さんをサポートする能力があれば良かったんですがね。」
「まったくその通りだバカヤロー・・・。」
することが決まったんだから、すぐさま街に戻るとしよう。ここに留まっていても、羽虫に絡まれる可能性が非常に高いからな。そんなわけで俺は羽虫に明日まで待つように告げ、シアルの街に戻るのであった。
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まずは冒険者ギルドに行かなくてはと思い、街に戻ってすぐに向かった。一直線にフィオラさんの受付に向かい、依頼品の確認をしてもらう。ギルドには他の冒険者がいたのだが、俺を見て逃げたしたのは言うまでもないだろう。
「シアルマス6匹、確認しました。シアルマスの納品依頼達成、おめでとうございます。・・・朝に依頼を受けて夕方には達成、シアルマスを軽々釣り上げる。流石というしかありませんね。それではこちらが、報酬の2,000Gとマス料理のレシピになります。」
「・・・・・・確かに。まぁ、早く終わるにこしたことはないだろ?俺も早くレシピが欲しかったし、困っている料理人も安心すると思うしな。依頼してきたのが生産ギルドだったし、点数稼ぎ?」
「ティル様には、点数稼ぎなど必要ないと思うのですが・・・。」
呆れつつも、若干ひきつってはいるが微笑んでくれるフィオラさん。・・・微笑んでくれているだけ、良しとしようか。
「依頼を達成したわけですが、他の依頼を受けますか?」
「いや、依頼を受ける前にやらなければならないことが出来てな・・・。」
俺はシアル西の湖で遭遇したことを、フィオラさんに話した。それを聞いたフィオラさんは、
「そのようなことが起きていたのですか・・・!?魔物の侵略ということですね?・・・早急に街周辺の調査を、上に進言する必要があるかもしれませんね。そのような事案は報告されていませんので、街の平和を守るには知る必要があります。何か起きてからでは遅いので。」
「現に湖で起きているからな。とりあえず湖にいた侵略魔物の素材があるから、情報収集のために数点、ギルドに提供しよう。」
「ありがとうございますティル様。各地の調査次第で、緊急依頼が発生するかもしれません。その時はよろしくお願いします。」
「手が空いていれば、喜んで受けさせてもらうよ。・・・と、これが侵略魔物の素材だ。」
俺は湖で討伐した闇魚人の素材を、受付カウンターに並べ始めた。背ビレやら水かきやらを数点。フィオラさんはそれを手に持ち凝視する。
「これがその素材ですか・・・。記録されている湖生息魔物に、一致する物は無さそうです。それに微かですけど、闇属性の波動を感じます。これは慎重に調査をしていかなければ、大変なことになりそうですね。そもそも、魔物を釣り上げること自体が規格外なんですけどね。」
うーん・・・、何かしらのフラグが立ちそうな予感。ここ最近の俺は、何かしらに巻き込まれるからな。まぁそれはそれで楽しいから、構わないんだが。
「それじゃあ何かあったら、遠慮なく一報をくれよフィオラさん。俺は闇魚人討伐の準備をするから、これで失礼するよ。」
「はい、その時はよろしくお願いします。ティル様、ご苦労様です。」
一礼するフィオラさんに、ヒラヒラと手を振ってギルドを出る俺。釣り餌はすぐに作れるからいいとして、水中用の道具・・・だな。道具といったらディーバ師匠だな。・・・店にいるだろうか?そう思いながら、ディーバ師匠の店に向かう俺であった。
余談ではあるが、行く道通る道避けられました。何だか妙に視線を感じるし、格好だけで俺は善良な冒険者ですよ。そのうち俺のより能力は下がるが、似たようなコートとスーツを作って売り出そうかね。そうすれば、俺に対する視線が弱まると思うんだ。分散されてさ、・・・ちょっと検討してみよう。このままじゃ悪人認定されて、討伐されかねない。俺が・・・。
「ディーバ師匠、・・・いるか?」
俺は店に来る道中、色々と考えながら来たもんだから気付けば、夕方から夜になろうとしている。街灯が光始める中、師匠の店に着いた。師匠の店は品揃えが良く、上級職人だからこそ全ての商品は品質性能が良い。たぶんシアル一ではなかろうか。その分、値段は高めではあるが客入りは上々である。そんな師匠の店には欠点がある。それは・・・、
「・・・・・・カウンターでお眠ってか。」
夜になりきれていない時刻だというのに、『閉店』と書かれたプレートが吊るされているドアを開けて入ると、ディーバ師匠がカウンターに涎を垂らして眠っていた。ディーバ師匠は見た目幼女の二〇〇歳エルフである。それ故に、寝るのが早いのだ。まぁ、たまに遅くまで起きていることもあるみたいだが、基本は早寝。俺の修業の時は興奮冷めぬために、夜ふかししていたと聞いたが、今日は何もないため早寝なのだろう。それはさておき、ドアに鍵を掛けずにカウンターで寝るとかって危ないなぁ。
「・・・ディーバ師匠、寝ているところ悪いが起きてくれないか?」
色々と聞きたいことがあるために起こす俺。このまま放置したら、風邪を引きそうだからな。軽く揺すってみるが、
「・・・やめるのじゃぁ~、・・・にゅふ、にゅふふふぅ。」
となかなか起きない。根気強く揺すって起こすしかないか、叩き起こしたら可哀想だし。
根気強く揺すった結果、ディーバ師匠は起きてくれた。多少寝ぼけてはいたが、数分後にはいつもの調子に戻った。
「ティルがわしの店に来るとはのぉ。なんじゃ?何用じゃ、ん?」
何やらご機嫌の様子。何がそんなに嬉しいのかわからんが、俺は湖のことを話し水中で役立つ道具がないか聞いてみた。
「その妖精とやらに頼まれて、湖の掃除をすると?・・・流石じゃのう、経緯はどうあれ準備をしてから挑むと。ふむ、水中で役立つ道具ならあるぞぃ。」
そう言って何処から出したのか、いくつかの道具が目の前に置かれた。俺はその道具をまじまじと見る。・・・何々、
〔大渦の珠〕水の中に投げ入れることで、この珠を中心に大渦を発生させることが出来る魔法の珠。(効果時間:30分)【製作者:ディーバ】
〔凍結の珠〕水の中に投げ入れることで、この珠を中心に全てを凍てつかせることが出来る魔法の珠。(効果時間:15分)【製作者:ディーバ】
〔水雷の珠〕水の中に投げ入れることで、この珠を中心に水中爆発が起きる魔法の珠。【製作者:ディーバ】
〔猛毒の珠〕水の中に投げ入れることで、この珠を中心に猛毒が全てを蹂躙する魔法の珠。(効果時間:15分)【製作者:ディーバ】
「・・・・・・師匠はアホの子なのだろうか?俺は湖を救うのであって、滅ぼす気は全くないんだが。しかも水中で役立つヤツじゃないし。なぁ師匠、やっぱアホだろ。それともバカ?」
凄まじい効果を持つ道具を見て、自然と言葉が出てきた。なんなんスかね?この一流の道具は。威力・効果がハンパない。こんなのを使ったら、クエストはクリアになるだろうが生物の大半は死滅する可能性が高い。半魚人や湖を救うどころの話ではない、闇魚人以上の悪党になってしまうよ!
「なんじゃいアホバカって!わしはただ可愛い弟子のためを想って、お手製の1級品を売ってやろうと思ったのに!安心安全確実死じゃぞ!?・・・あ、因みに1つうん百万じゃからな。」
「・・・ばっっっっっかじゃないのか!?あるかそんな大金!!」
そこから喧嘩に発展するも、俺は師匠の頭を手で押さえる。師匠はグルグルと両手を回して襲ってくるがその攻撃は一切、俺に届くことなく力尽きた。
で、師匠が復活して再び話は戻る。
「水中で活動出来るような道具はないだろうか?・・・大量殺人道具ではなく、値段も手頃なヤツな。」
「・・・在庫処分が出来ると思ったんだがのぉ。折角開発したのに誰も買ってくれないから、倉庫のこやしじゃ。うーむ・・・、これならよいじゃろ。」
手品のように新たな道具を出す師匠。・・・師匠は空間魔法でも使えるのだろうか?それともボックス持ち?しかしボックスは、NPCにとってレアな物と聞いていたのだが。まぁ、どうでもいいかそんなこと。それよりも道具だな。
〔ケロケロクリーム〕このクリームを全身に塗り込むことで、水中でも陸上と変わらぬ行動が出来る魔法の塗り薬。(効果時間:60分)
〔ケロケロスプレー〕このスプレーを装備品等に噴射することで、水中でも陸上と変わらぬ性能が維持できる魔法のスプレー。(効果時間:60分)
〔ケロケロマジッくん〕この飲み薬を飲むことで、水中でも魔法を行使することが可能となる魔法の薬。水中で魔法を行使する際の暴発には十分、注意せよ。(効果時間:60分)
〔ケロケロ呼吸薬〕この錠剤を飲むことで、水中呼吸が出来るようになる魔法の薬。(効果時間:60分)
これだよこれ、俺が求めていた道具は。大量殺人道具ではなくな。
「師匠、これらの道具はいくらだ?」
買おうと思ってそう聞いたら、
「これはたった今、非売品になったのじゃ。残念じゃの?ティル。」
その言葉と共に、道具を隠す師匠。・・・なるほど、第2ラウンドを望むか。上等・・・!
「流石じゃのティル、俊英と呼ばれているのはまやかしではなかったようじゃ。」
襟首を掴まれて、空にプラプラ浮いている師匠は何故か上から発言。ウンウン頷いて、偉ぶっている。
「師匠・・・・・・、弱っ!」
「うるさぁぁぁぁい!わしの戦闘能力はホーンラビット級じゃ、弱いのは当たり前じゃろが!わしは支援系なのじゃ!」
襟首を掴まれながらも、ジタバタと暴れる小動物な師匠。ウサギかよ・・・、弱すぎじゃなかろうか?まぁ支援系なら仕方ないのか?弱くても上級職人なのだから。
師匠を解放した俺は、
「なんで売ってくれないんだ?師匠。」
と聞くと、フフンと腕を組み、
「見せはしたが道具なんか必要ないわい!このわし直々に手伝ってやるからの、にょほほほほ!」
奇妙な高笑いをする師匠。ウサギな師匠が俺のクエストを直々に手伝うか・・・。役立たずな羽虫、そして弱っちぃ師匠。・・・・・・・・・絶望的な結果しか見えない。俺は死戻りが出来るからいいが、羽虫と師匠は死ねばさよなら。羽虫は仕方ないにしても、師匠は駄目だ。師匠が死んだら世界の損失、俺もバルト師匠達も悲しい。守りきる自信がない、二人は厳しい。うーむ・・・、ないな。
「えーと・・・、他に良い道具を売っている店は何処だったかな?地図にはっと・・・。」
俺は踵を返し、店を出ようとするが、
「わぁぁぁぁぁん!待つのじゃ待つのじゃ、見捨てないでおくれぇ!」
足にしがみついてきた。師匠は俺にかまって欲しいのだろうか?
そんなわけでとりあえず、師匠の話を聞いてみた。師匠曰く、昔から弱かったらしく誰もPTに入れてくれなかったらしい。弱いなら修業だということで、色々やったみたいだが駄目だったとのこと。なら魔法だとこれも色々やったが、攻撃魔法は全然駄目で支援魔法オンリーになったみたいだ。支援魔法、即ち補助魔法はトップクラスみたいなのだが、その他がダメダメでやっぱりPTに入れずじまい。不貞腐れて職人になってみたら大成功、今に至るというわけだ。そんなわけで、
「わしも冒険がしたいのじゃ!湖に行きたい行きたい行きたい!!」
床でジタバタと転がる師匠、完全に子供だ。ふむ・・・補助が出来るなら大丈夫か?その他がダメダメだと言うが、どれくらいダメなのだろうか?
「師匠、ダメダメだと言うがどれくらいダメなんだ?」
「ふっ・・・、聞いて驚くといいわ!わしの店とバルトの店を往復しただけで死ねるわい!」
「そんなんで連れていけとよく言えるな!」
俺は物凄く呆れた。どうやって湖に行く気だよこの人。
「我に秘策あり・・・じゃ!」
そう言うと俺の体によじ登り、肩車状態になる。これが秘策?
「これで移動は完璧じゃな!」
・・・・・・ご満悦のようだが、俺の行動が制限されてしまう。それを指摘すると、
「魔法でティルの能力を上げるから大丈夫じゃろ、闇魚人じゃったか?ソイツらと戦う時は身を隠すから安心せい。」
そう言って俺から飛び降り、そのまま消えた。
「!!!」
周囲を見回すが、師匠はいない。何処に消えた!?キョロキョロしていると、
「にょほほほほ!わしはここじゃい!!」
突然、俺の目の前に師匠の頭が現れた。生首が浮いてるように、
「おのれ妖・・・!」
「!!!!!」
俺は反射的に手を出してしまうが、師匠の生首も反射的にだと思うが消える。俺の拳は空をきる、そして俺の足元から這い出してきて、
「殺す気かえ!おっそろしい弟子じゃ!」
半泣き顔で睨まれた。いきなりそんなことされたら、誰だって手が出るだろ!?
そんなこんなで、師匠を連れていくことに決めた。さっきの・・・なんていったか・・・、あっそうそう。ルームとかいう空間魔法だ。危なくなったら、それで隠れてもらおう。本人もその気だし。あとは、色々役立つ補助魔法もあるみたいだからな。まぁどうなるかはわからないけど、駄々こねるしイジけられるのも面倒。連れていくからには、出来る限り守るさ。俺の師匠だからな。・・・で俺は今、師匠の作業場にて生産している。闇魚人を釣り上げるための餌作りをしているわけだ。その餌作りに師匠も興味津々だ。
「ほぉ~、それが釣り餌かえ?・・・というか、釣り餌に闇を付与って。そんなことする奴、初めて見たわい。」
「そうなのか?」
「釣竿に属性を付与すれば、餌にも属性が付くからの。それよりも釣り餌に属性が付くなんて知らんかったわ。・・・いや、そもそも魔物が釣れる事例は初めてだと思うのじゃが。」
師匠の言葉を聞いて、俺はそうだったのかと少し驚いた。考えてみれば、釣竿に属性付けりゃあ手っ取り早かったか。それにしても、魔物って釣り上げられなかったのか。俺が初めての事例ってわけか。・・・そういえば、フィオラさんもそんなことを言ってたっけなぁ。
「釣り餌って言っても、ゴブリンの肉を細切れにして乾燥させた物しか世に出とらん。ティルのような練り物は初めてじゃな。」
・・・ということはこの釣り餌、売れるな!属性付きだから、尚更な。ククク・・・クエスト終了次第、釣り餌を大量生産するのも良いかもしれない。他の奴らが売り出す前に稼がねばなるまい。
「それにしても、いちいち釣り上げねばならぬのは面倒じゃのぉ。のぉティルよ、わしのフライで魚人を一網打尽にすることが可能なんじゃが、魚人を集めることが出来る餌は作れんのか?」
「獲物を集める餌?撒き餌・・・かな?」
撒き餌程度なら作れるだろう。・・・にしてもフライって魔法で一網打尽?どんな魔法なのだろうか、名前からして想像出来るが。
「フライは風魔法で、空を飛ぶ魔法じゃよ。」
「だろうと思ったけど、それで一網打尽なんて出来るのか?飛ぶ魔法なんだろ。」
「わしなら出来る!空間掌握、範囲指定からのフライじゃ。もう一度言うが、わしなら出来る!」
余程自信があるのか、師匠はふんぞり返っている。空間掌握、範囲指定ってスキルかなんかか?ま、自称支援・補助の天才、師匠を信じて撒き餌を作るか。
「やっぱ上級職人ともなると、何かしらの実力が高くないとなれないもんなのかね?」
「そうじゃの、魔法を使えなくとも職人は出来るが使える方が、上級職人にはなりやすいと思うぞぃ。戦闘もそうじゃな。因みに戦闘が得意な者は鍛治系に、魔法が得意な者は道具系になりやすいかの。例外もあるが、そんな感じじゃ。」
へぇ・・・やっぱりそうなのか。複数のスキルがないと望む物が作れないことから、そうじゃないかと思っていたが。なるほどなー。因みにジョブってあるの?と聞いてみたら、あるとの返答が。師匠は魔法精製士ってジョブなんだって、凄そうだな。師匠曰く、ギルドに貢献してりゃあその内、打診が来るから頑張れとのこと。これは凄い情報だな、まず自分で確かめてからJunさん達に教えるとしようか。当面の目標が出来たな、目指せジョブGET!
釣り餌良し、撒き餌良し、薬各種良し・・・。うん、必要であろう道具の準備は終わった。念のために師匠のケロケロシリーズを売ってもらった。連れていってくれるなら売ってやるとのことでな。
「じゃあ明日の朝に迎えに来るから、準備は済ませていてくれよ師匠。」
「・・・・・・うむ、わかっておる。・・・ふわぁぁぁぁ・・・では、また明日・・・なのじゃ。」
眠そうな目で見送ってくれる師匠。彼女にしてみれば、かなりの夜ふかし。明日、きちんと起きれるか?何はともあれ、明日だな。明日は闇魚人との戦いが待っている。そう考えると、気持ちが高ぶってくる。このような高ぶりは、あの時ぶりか。妹にちょっかい出してきた族を潰しに・・・・・・げふんげふん!話し合いで解決した以来だな!うーん、楽しみで仕方ないな!・・・なんて考えながら、俺はシグルゥの宿に戻るのであった。
やっぱり会話多目になりましたな。
次は戦闘、今度こそ戦闘。
なるべく早く投稿出来るよう頑張ります!
では、アデュー!!




