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第15話~妹と山登り

勢いのままに!

「オラオラオラオラぁ~!どけどけぇ~い!!」


我が妹、ヴェネール爆進中。大斧を振り回し、魔物達をなぎ払いながら駆け抜ける。俺はその背中を見ながら素材回収をしつつ、草原を走る簡単なお仕事です。先ほどまで、不貞腐れていた姿が嘘のようだ。




ギルドを出てJunさん、バルバロッサと別れてからも不貞腐れてる妹。俺に専属でエイミーさんがいることに不満があるようだ。仕事仲間みたいなもんなのにな。


「エイミーさんは、仕事熱心ないい人だぞ?何が不満だ。」


「私は本とかで知っているんだよ。だいたいのギルド嬢は下心があるただのメスなんだから。」


「なんつー・・・、だがエイミーさんに限って・・・。それにVRゲ・・・。」


「否!!ゲーム侮りがたしだよあぁ恐ろしい!ログインしたら隣にいるんだ!ベッドの中で二人だよ二人!ゲームの仕様上、行為に対する描写は控えさせていただきます!」


・・・イカン!俺は咄嗟に妹の背後に回り込み、


「あんちゃんが犯られる前に私が殺って・・・ぐぇっ!」


キュッ!と絞め落とした。妹は暴走しやすい、リアルでは〈残念美少女〉の称号にて名を馳せている。これも甘やかしすぎが原因なんだろうか・・・。今さら厳しくは出来ないからなぁと考えつつ、おちた妹の頬を叩く。


「・・・・・・はっ!私は一体何を。・・・あぁそうだ!あんちゃぁ~ん、ごめんよ許してぇ・・・えぐえぐ・・・。」


覚醒後、すぐにすがり付いて泣き出す。妹の対処法は気絶させること。目が覚めた時には自分の暴走を覚えており、泣いて謝ってくる。可愛い妹ではあるが、少し面倒くさい妹でもある。まぁ俺は、きちんと謝れば許すタイプなので、この件はこれで終わりだ。一応、釘は刺しとくか。


「そんなに泣くなよ。まあ・・・あれだ、エイミーさんに変なちょっかいは掛けるなよ。」


「・・・うう~、わかった。」


「何かやらかしたら、F.E.Oでのお前との付き合いは一切なしだ。道端の小石程度の扱いとする。・・・いいな。」


「折角出会えたのにそれは重い・・・重すぎる!」


「ならわかるな。」


「肝に銘じておきます!以後、私は未来の姉になるであろうエイミーさんと良好の関係を築けるよう、頑張る所存であります!小姑にはなりません!」


「・・・・・・はぁ、まぁいいや。」


ダメだこりゃ、根本的にわかってない。・・・エイミーさんに悪さをしなけりゃいいか。


「じゃあ、山にでも行くか。」


「あんちゃん待って待って!私に汚名挽回のチャンスを!!」


・・・あれ?名誉挽回っていうんじゃないかな。まぁ、面倒だからいいか。





・・・からの妹無双である。といっても草原なんですけどね。可愛い顔して大斧振り回して、テンション高々に魔物を狩る姿を見て俺も笑みがこぼれる。まぁ、アレな妹だけど楽しそうにしていると俺も嬉しい。とりあえず、


「ヴェネ!俺もまぜろ!!」


「おうさ!!」


俺もウズウズして戦いに参加。山に行く道は死屍累々、剥ぎ取らずに放置して俺達は山に到着した。




その後、死体を求めて狼が現れたらしい。哀れ犠牲者は、たまたまそこに来たライアンでしたとさ。


――――――――――――


俺と妹は今、発掘ポイントを目指して山を登っている。ノーシュ山は山頂、上層部、中層部、下層部に分かれており、発掘ポイントは中層部入口付近にある。他にもあるらしいのだが、魔物との遭遇率が高めで採掘中に襲われることが多いとのこと。とりあえず安全第一ということで、中層部入口に向かっている。


「山の魔物も大したことないな。」


「あんちゃんが強すぎるだけだよ・・・。一対一での圧勝はおかしいもん。」


つい先ほど、襲ってきたトカゲとの戦いでは俺が圧勝。妹は大斧を構えたまま、驚きの表情をさらしていた。そのトカゲはノーシュリザードといって、山肌に擬態し近付いてきた獲物を不意打ちで襲う嫌なヤツらしい。倒すには前衛に盾持ちを配置しあえて襲わせ、盾で初撃を防ぐ。あとは囲ってタコ殴りが一般的。盾持ちがいない場合は、ダメージ覚悟の囮作戦でポーション必須。俺のように山肌からの不意打ちを回し蹴りで蹴り落とし、追撃で切り裂く蹴るの暴行をする奴はいないとのこと。


「マナー違反だけど、あんちゃんのステータスが見たいよ・・・。」


「んー、ヴェネになら見せてやってもいいぞ。」


ギルドカードをボックスから取り出し、妹に見せようとするが、


「見たくない!確実に私が奈落に落ちるもん!圧倒的な差の前に、ヴェネールちゃん灰になっちゃう!!」


そんなもんかねぇ、見ないのならしまうとしようか。その後、襲ってくる魔物を倒しながら、目的地の発掘ポイントに着いた。さてと、何が出るかな。




「さぁ妹よ、採掘の時間だ。」


「細かいことは気にするな!掘って掘って掘りまくれ!!」


妹はやる気満々だ。VRゲームとはいえ、二人で出掛けるのは久々だからな。・・・よし、採掘採掘。




・・・鉄鉱石しか出ねぇ。なんでだ、なんで鉄鉱石しか出ないんだよ。おかしくないか?いらないけど、石とか出るもんじゃないの?フツー。妹も首を傾げている。


「おかしいなぁ、私には石とか岩とかゴミとか出るのに、あんちゃんには出ない。なんで?」


うーん・・・、採掘所持者でもハズレが出ると妹は言っている。なのに俺は出ない。何故だろうか。採取も持っているからかなぁ。理由はどうであれ、つまらない!俺のワクワクを返せ!採掘は何が出るのかわからないのが醍醐味なのに・・・。こうなれば、他のポイントに行くしかないな。危険かも知れないが俺の欲求を満たすためだ。


「ヴェネ、他のポイントに案内してくれ。」


「えぇ~!魔物が出るよ危ないよ?」


「出たら狩るまでよ、俺はドキドキワクワク採掘がしたいんだ。鉄鉱石は必要だが、それしか出ないのは解せん。ゴミでもいいから採掘したいんだよ!」





そして俺達は発見されたポイントの中で、一番危険なポイントに来ていた。


「あんちゃんは存分に採掘をしてください!警戒、討伐はこのヴェネールにお任せを!一人はやや厳しいですがやってみせます!」


「うむ、任せた。・・・が、危なくなったら迷わず俺を呼べよ。」


そう言って俺は、ツルハシを振るう。一心不乱に振るうのである。そして・・・





「何故だ・・・なんでだよ・・・!」


俺はガックリと膝を付き、採掘した物を見る。〔鉄鉱石〕〔魔石〕〔ライトメタル〕〔古剣〕〔鋼鉄鉱石〕である。鉱石ばかりだ。剣が出てきた時は一瞬喜んだのだが、


〔古剣〕:錆びなどでかなり傷んでいる古の騎士剣。傷んではいるが見事な装飾が施されており、微かに力を感じる。


ガラクタではなかった。たぶんだが、レアなんだと思う。普通は喜ぶものなんだろうが、今の俺にはガラクタにも劣るもの。使えるものよりガラクタが欲しい。ガラクタばかりでやる気が無くなりかけた時に、良い鉱石や遺物をが出てきて一転、喜びが溢れてくる・・・なんてことをしたいのに。ロマンの欠片もない、俺のやる採掘はただの作業、仕事でしかない。・・・・・・もういいや、適当な量になったらさっさと引き上げよう。


「あんちゃん!あんちゃぁ~ん!!」


なんてことを考えていたら、妹の呼ぶ声が。トラブル発生か!俺はツルハシと発掘物をボックスにしまい、急いで妹のいる所に向かって走った。





『オオオオオオオオオオオオ!!』


「「うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」


そして俺と妹は猛ダッシュで下山している。妹なんかは半泣きだ。今回の相手は非常にマズイ、絶対に勝てない。だって、


【ストーンゴーレム】LV:15

ノーシュ山を徘徊する自律型石巨人。古の錬金術士が造ったゴーレムではないかと伝えられている。巨体を構成している石は魔力を帯びており、生半可な攻撃は一切通用しない。何故、ノーシュ山に存在しているのかは謎である。


こんな奴ですから。妹が果敢に突撃したみたいなのだが、全く歯が立たなかったとのこと。俺も攻撃を何度かしてみたが、全然効かなかった。ゴーレムの動きが遅いから、あらゆる箇所を二人がかりで攻撃するも有効打が出ずにいた。しばらくするとゴーレムの頭部、顔のあたりにある球体が赤く光りだした。その後のゴーレムといったら、今までの鈍足が嘘のように素早く、奴の攻撃を避けるので精一杯ってなわけで、俺と妹は踵を返し逃走することにした。んで、今の現状である。


「あんちゃぁ~ん、いっそのこと死戻ろうよぉ。」


妹の戦意はなく、今すぐ街に帰りたいようだ。


「死戻りだと・・・!ならヴェネ、お前一人で逝け。俺は最後まで諦めない、逃げ切ってみせる!」


俺、急加速。


「あわわわわっ、ヤダァ~ッ!待っておくれよあんちゃぁ~ん!!」


妹も続いて加速。途中、転がりながらもノーシュ山から逃げ帰ることに成功した。妹は、


「精神的ダメージが大きすぎる日だったよ・・・。ログアウトして寝る・・・。」


と言って、宿に帰っていった。その後ろ姿を俺は上機嫌で見送った。最後にロマンを感じることが出来たからな。巨人に追っかけられるなんて、王道だろう。これが冒険だよな。さて、エイミーさんに挨拶してから俺も宿に帰るとしよう。そして俺は、足取り軽く街の中に消えていった。





因みに、ティルが採掘でハズレを引かない理由はというと、〈採取〉〈採掘〉による補正、〈俺流〉による補正、そして常人より高いDEX、LUKのお蔭である。

次は生産かな。もしかしたら、メインキャラの紹介になるかも。

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