第11話~エイミーさんと生産
勢いだ!
・・・というわけで、ギルドの個室で生産している俺。昨日倒したウサギの素材を使い、ラビットレザーセット(特殊)を修繕改造したのだ。草原狼の素材である爪も使った結果がこれだ。
〔ラビットレザーセット改(特殊)〕:ホーンラビットの毛皮で修繕改造された革鎧一式。 ヘッド DEF+3/ボディ DEF+14/ズボン DEF+10/アーム STR+22・DEF+6/ブーツ STR+6・DEF+7 (フルセット装備ボーナス:AGL+15)【製作者:ティル】
ある程度貯まったウサギの毛皮を中心に使ったために、前より防御力が上がった。アームのメリケンサック状の鉄板から、草原狼の爪に変更。今回は殴るから切り裂くへ攻撃手段を変えてみた。攻撃力がかなり上がったみたいだが、戦ってみないとわからん。切り裂く、蹴るでどうなるのかね。あとはこれだな。
〔草原狼の首飾り〕草原狼の牙で作られたワイルドな首飾り。 STR+12・DEF+3・AGL+4
狼の牙を使ったこの首飾りはなかなかの性能ではないだろうか。しかしながら、ただの飾りなのにステータスが上がるのは何故なんだろうな。まぁ、そういう仕様なんだろうから気にするだけ無駄であろう。
「ティルさん、その首飾りの牙って・・・。」
因みにエイミーさんは、職場に戻ることなくここにいる。俺が作業をしている間に、この部屋の設備を改めてチェックをしていたみたいだ。それが終わって、こっちが気になり見に来たってところか。
「北の草原で倒した草原狼の牙だ。」
と言うとエイミーさん、
「凄いですね!草原狼を倒したんですか!」
前のめりで興奮している。
「狼との一対一の戦いは厳しいものがあった。」
あの戦いを思い浮かべ、勝てたのはたまたまだよなぁーと考える。俺よりLVが高いであろうバカ助が殺られたのだから。装備ボーナスのAGL+10が良かったのだろう。素早くないと攻撃が当たらないからな。
「え・・・?草原狼を一人で倒したんですか?PTではなく?」
「ソロで倒したが・・・それが何か?」
ポカーンと口を開けて固まるエイミーさん。まぁ確かに、一人はキツイ。PTだったら多少は楽に倒せただろう。
「ティルさん強いんですね。ユニークモンスターを一人で倒すなんて・・・。」
「そうなのかね?他人がどうなのかわからないからなぁ。」
「他の人がどうなのか私もわからないですけど、草原狼をソロで討伐する人は間違いなく強いですよ・・・。」
ちょっと呆れ気味に言われた。
「まぁいいや、生産の続きでもしよ。」
練習のために、販売用の武器防具を素材がある限り量産しよう。それが終わり次第、アイテムの生産だな。
「あ・・・私も手伝います。仕事をしないと怒られちゃう。」
「うん?手伝ってくれるのか?受付とかはいいのか?」
「私はティルさん担当なんで、手伝いは当然職務です。そして、ティルさんの腕が上がれば私の評価も上がるんです。因みにティルさんが拠点を変える場合は、ギルドか私に報告して下さいね。」
「手伝いはありがたいが・・・拠点変更も報告するのか?」
「当たり前じゃないですか。次の拠点にあるギルドに連絡しなくちゃいけないんですから。もしかしたら、私もティルさんに同行しなくちゃいけないかもですし。」
「え・・・何それ恐い。」
生産ギルドに目を付けられとるがな。どんだけ期待されてるの俺。うーむ・・・、
「さぁさぁ、ティルさん頑張りましょう!」
ふんす!!と気合いを入れてるエイミーさん。それを見て、
「なるようになれだな。」
と作業を再開させた。面倒事は起きた時に対処しよ。
はい、あっという間に夕方になったわけで。持っていた素材がほとんど余らなかった。因みに狼の素材は使っていない。もう一度ぐらいは倒して素材を手に入れ、防具にしたい。称号効果で出会いやすくなっているみたいだからな。
「流石ですね。手際が良いです。」
エイミーさんはしきりに感心している。
「エイミーさんが色々と手助けしてくれたからな。あと称号のお陰もあるだろう。」
〔職人達の弟子〕生産系全てに+補正がかかる。
生産スキルが上がりやすいのも、素材を無駄にしないのも称号効果なのだろう。生産速度も影響されているんだろうな。あと、生産ギルドからの待遇が良いのもかな?とりあえず、作った物を数点紹介しようか。
〔鉄の剣+1〕少し斬れ味の良い鉄製の剣。STR+14【製作者:ティル】
〔ラビットシールド+2〕ホーンラビットの皮で丁寧に作られた盾。DEF+7【製作者:ティル】
〔ラビットレザーセット+2〕ホーンラビットの皮で丁寧に作られた革鎧一式。 ヘッド DEF+3/ボディ DEF+10/ズボン DEF+7/アーム DEF+4/ブーツ DEF+5 (フルセット装備ボーナス:AGL+10)【製作者:ティル】
〔投擲ポーション〕投擲用ポーション。HPが30回復する薬。【製作者:ティル】
〔投擲マナポーション〕投擲用マナポーション。MPが30回復する薬【製作者:ティル】
〔ポーション+2〕HPが40回復する薬。【製作者:ティル】
こんな感じだな。あとは普通の回復薬、修行中に作った鉄シリーズの武器だな。いらないから数種類の薬系以外は全部売ってしまおう。エイミーさんに〈木工〉を教えて貰えたし。親父さんが木工職人なんだって。そのお陰で盾が作れたわけだ。・・・ていうか、自分用装備作った時から思っていたが、称号効果ハンパねぇ。ウサギ鎧の防御力がすげぇよ。俺の初期装備よりかなり高いわ。回復薬も投擲用作れたしな。
「ティルさんティルさん。この丸いゼリー状の物ってポーションですよね?」
「投擲用のポーションだな。ぶつけて使用する薬だ。」
「本当だ!投擲ポーションと鑑定出来ました!」
「戦闘中、離れた味方を回復することが出来る優れ物だ。」
「凄いです!こんなの初めて見ましたよ!」
「そうなのか?」
「はい!未登録アイテムです。」
へぇ、誰も作らなかったんだな。俺ってば凄いじゃん。
「ティルさん!これください!!」
「なんで?」
「ギルドに登録するんですよ!そうすれば、このポーションが広まりますし、冒険者の生存率も高まります。ティルさんもお金が貰えますよ。」
「それはいいな。みんなニコニコ、俺もニコニコ・・・最高じゃないか。んじゃ、レシピも一緒に渡そう。」
「あっあっ!そうですね!お願いします!」
うん、後で渡そう。興奮しているエイミーさん、ミスしそうだし。登録されるまでレシピは秘密だな。あ・・・少し高めに売っても良さそうだな。フフフ・・・今のうちに儲けよう。
「そういえばティルさん、冒険者ギルドに登録してます?」
「いや、してない。」
落ち着いたエイミーさんに投擲ポーションとマナポーション、レシピを渡した。そして、作業場の片付け中にそう聞かれた。冒険者ギルドに登録しておいた方がいいかなぁーなんて思っていると、
「した方が良いと思いますよ?ティルさん、草原狼をソロで倒せるくらい強いんですから。」
「エイミーさんがそう言うなら、登録しようかね。」
「私が冒険者ギルドに案内しますね。」
そんな会話をしながら片付け終わり、俺はエイミーさんの案内で冒険者ギルドに向かうのであった。
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んで、俺とエイミーさんは冒険者ギルドの受付にいた。
「それでは、ティル様の情報を確認させていただきます。」
受付嬢のフィオラさんがそう言って、ギルドカードを確認している。彼女の名はフィオラ。緑色の長髪で眼鏡をかけた美人さんだ。エイミーさんが言うには、堅物エルフとのこと。その堅物エルフのフィオラさんの顔が強張っている。
「このLVでこのステータス・・・。何、このスキル・・・初めて見るわ。魔物討伐数は平均より下・・・えっ!草原狼を討伐したの・・・!PTメンバーは・・・いない。ソロで・・・ソロで討伐ですって・・・!」
なんかブツブツ言ってる。・・・あ、こっち見た。
「ティル様、私では正直・・・判断しかねます。上の者に判断を仰いでまいりますので少々お待ちを・・・。」
一礼してその場を離れようとするフィオラさんにエイミーさんが、
「ティルさんをあまり待たせないでよ!」
ピタリと止まります、こっちを一瞬見た。・・・ギロリ、おっかねぇ!
「・・・少々お待ちを。」
改めてそう言って、奥に消えた。エイミーさぁぁぁぁん!余計なことを!!
「ティルさん、待ってあげましょうか♪」
なんていい笑顔をしてやがる。エイミーさんとフィオラさんて仲が悪いの?
・・・というわけで、冒険者ギルドの登録を終えた。ギルドランクはSS・S・A・B・C・D・E・Fに設定されている。一つのランクに+・-があり、F+・F・F-のように分けられる。細かく設定した方が生存率が高まるとのこと。俺達のようなPC冒険者は死戻りが出来るが、NPC冒険者はそれが出来ない。NPCにとってはこの世界が現実なのだから。そう思うと、このランク設定には好感が持てる。NPCと行動する時は、出来るだけ守るようにしようと密かに決意する俺がいた。因みに俺のランクはEになった。もちろん、異例だそうですよ?
「ティル様のご活躍を私個人も含め、期待しております。」
はい、また目を付けられました。・・・なんて思いながら、フィオラさんに挨拶をして冒険者ギルドをエイミーさんと出た。
「もう暗いですねぇ。ティルさん、どうします?」
「今日はここまでにしよう。販売は明日にする。」
なんか疲れたし、夜だし・・・、
「そうですか。では、ここでお別れですね。私はギルドに戻って登録手続きをしますので。」
とエイミーさんが一人で生産ギルドに戻ろうとしたので
「ギルドまで送ろう。街の中とはいえ、女性一人の夜道は危ない。」
「え・・・いいんですか?ありがとうございます。」
そして、俺はエイミーさんをギルドに送りとどけてから宿に帰った。
販売は次回になりました。装備で変わったステータスとかも次回で。




