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エピローグ ⑭余韻

 朧守は石段に座り、そっと灯真の様子を見ていた。


灯真が石段に向かって歩いて来ると、朧守は立ち上がった。

――しかし、もう彼と目が合うことはない。

灯真が車に戻ると、どこからともなく桜の花びらが舞う。


 朧守はゆっくり空を見上げた。

彼の大好きなこの短い季節を。この風景を。

彼が好きな理由を、今なら分かった気がした。


谷を挟んだ向かいの山には、遅咲きの山桜が一面に山肌を彩っている。

風が運んでくる春の香り。優しく吹き抜ける温かな風。山に響く鶯の声が、新しい始まりを告げる。


 

 朧守だけが知っているのだ。

彼とここで出会ったこと。

彼が大切な思い出と共に、自分の為に記憶を渡してくれたこと。

そして、彼は全部忘れていることを。


人間は忘れる事で、前を向くか……。



灯真の車が動き出すと、朧守は後を追うように階段を降りた。

――だが車はすぐに見えなくなってしまった。


風が吹く。

風鈴はいつまでも優しく、澄み渡る綺麗な余韻を響かせていた。

朧守はそっと自分の胸に手を置いた。


「巡る風よ……。お前は、いつも優しかった」



おわり。

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