第6話 第九魔王の脅威
呪響魔法によって生み出された反転神グルヴェイヴニュールはその場から動きもしない。魔眼で深淵の奥底を見る。そしてゼクアが口を開く。
「確かに感情は皆無のようだ。コレほど魔力体を作れたものだ。流石は魔王だ。俺に楯突くだけはあるな。」
ゼクアが「混沌化揺世界」で強化された魔力を放出したままさらなる魔法を発動させようと反射の対眼を解放する。
その魔力は今までの魔力の垂れ流しとは訳が違うようだ。
神界エルドネシアを破壊した時以上だ。
まるで8000年以上前12000の世界を滅ぼした大魔王のようだ。
反射の対眼が解放されただけで第九魔王ガミエルの身体に以上が発生する。存在ごと消させれてしまいそうだ。
ゼクアが本来の力を取り戻していたら反射の対眼を解放する時の魔力の余波だけで命は愚か。存在していた事実ごと掻き消されていただろう。反射の対眼は全ての起きゆる可能性を滅ぼす魔眼。
第九魔王ガミエルが冷や汗を流す。
「イヴエルにはこの力を見せる前に負けたのには理由があってな。俺はアルディア世界だけ壊したくなかったのだよ。」
「ふん。強がりか?自分がイヴエルに勝てないからと言って。」
「なら試してみろ。」
第九魔王ガミエルが指揮棒を取り出し音響を奏で反転神グルヴェイヴニュールを動かす。
「この反転神グルヴェイヴニュールはお前の力を複製した神。如何に貴様が強かろうとこの反転神グルヴェイヴニュールには遠く及ばぬ。」
ゼクアが眉一つ動かさず感情を一切見せず無言で宇宙空間に巨大な滅亡剣ゼフェイアを召喚したが今までとは違い大きさも異なる。
幻魔の魔眼が開く。
「幻魔の魔眼の第一門を開くとするか。」
赤黒い滅亡剣ゼフェイアが紫色の魔剣へと変化していく。
「解離剣ヴェゼヴェイア」
「その魔剣は!!深淵王ノヴェス.ヴェルドのか!?」
「俺はそんな奴知らぬがな。」
「この魔剣は決して振ることが許さねぬ魔剣。振れば全てが終わる。そしてこの魔剣の所持者には無限の魔力が降り注ぎ全ての可能性を反転させる。」
「そんな振ることが出来ぬゴミなんぞ。我には意味なんぞないぞ!!」
とほざきながら反転神グルヴェイヴニュールの権能を屈指して正面から反射の対眼の魔力を抑え込む。
ゼクアは反転神グルヴェイヴニュールの権能を指も動かさず魔眼だけで対抗する。
背後から第九魔王ガミエルがニヤリと笑いながら指揮棒をゼクアの背中にブッスと刺した。
刺したはずだった。なのに刺せない。
「言ったはずだこの魔剣は 無限の魔力が降り注ぎ可能性を反転させると。」
「貴様も8000年ぶりに本来の力に目覚めたのだ。我もその目覚めに応えねば名折れよ。」
召喚した反転神グルヴェイヴニュールの身体に第九魔王ガミエルは概念となり入り込む。
「ほう。概念化か。魔の深淵に踏み込んだという訳か。」
「我が力は反転。全てを反転させし者。」
呪響魔法を屈指し隕石を大量に呼び起こしゼクアの身体に飛ばしてくる。その数何と6000。その隕石は普通ではなかった。
第九魔王ガミエルの呪響魔法により呪いが付与されていた。
ゼグアの身体に傷を付けてみせた。
「ほう。傷をつけるとは中々やるな。だがまだ踏み込みが浅い。魔法とはこうやって撃ち放つのだよ。」
宇宙空間を覆うように紫色の魔法陣を描き魔法陣から紫色の炎を降らせる。
「紫魔殺燼滅振雨」
第九魔王ガミエルに直撃させる。直撃と共に第九魔王ガミエルが悲鳴をあげる。
「ぎゃああああぁ」
「これ以上打ち続けると宇宙空間も滅びかねん。」と呟き「紫魔殺燼滅振雨」を止め第九魔王ガミエルの首を絞めながら持ち上げ「お前も世界神ノウズベディアのようにこの世から消滅するか?」
と言い放つが第九魔王ガミエルは声すら出なかった。
死んだと思ったが第九魔王ガミエルが必死に指を一ミリ動かす。指を動かした瞬間あらかじめゼクアに殺されかけれることを想定していたのか?
蘇生魔法が自動的に発動する。
「死ぬかと思ったわ。ここからは我の反撃よ。」
幻魔の魔眼か光り輝く。
「貴様、幻魔の魔眼の権能を忘れた訳では無いよな?反射の対眼に気を取られ過ぎだ。」
「想像したものを具現化だ。反転神グルヴェイヴニュールの肉対は死ぬ。」
反転神グルヴェイヴニュールの肉体が崩壊していく。
「おのれ!!おのれ!!」
「お前の深淵は俺が大魔王になる前に通り過ぎた浅瀬に過ぎんようだな。」
再び魔法陣を絵描き「紫魔殺燼滅振雨 」をあらゆるものを反転させる力を失った第九魔王ガミエルの肉体に直接落とし込んだ。
即死だったのだろう。後型なく消え去った。転生する暇すら与えなかった。いや、蘇生という可能性すら反射の対眼で断ち切ったのであった。
エルシュカが目を覚ました。
「お?エルシュカ目を覚ましたか?」
ゼクアが魔剣を別次元に飛ばし自身の膨大過ぎる魔力を全て抑え込みエルシュカに影響を与えないように近寄るがエルシュカから言われた一言が悲しかった。
「アナタダレ?」だった。
最愛の嫁が俺を覚えていなかった。
恐らく長年世界神ノウズベディア、第九魔王たちに虐げられ脳に記憶障害が残ってしまったのだろう。
ゼクアが涙を流す。
「チクショ。俺が八千年前アルディア世界が滅びぬように戦い負け家族を奪われ八千年の時を経て復活し助けにきて記憶を失っているとは大魔王は愚か男として失格だ。守るべきものを何一つ守れないじゃねぇか!!」
各地戦闘が終わった不死王とメリアがゼクアのいる宇宙空間に次元を行き来する魔法を使い戻ってきた。
メリアがエルシュカを見て「ママ!!会いたかったよ!うわ〜ん!!」と子どものように泣きじゃくるが無慈悲にもエルシュカは娘のことも忘れ去っていた。
「ワタシガママ?ナニヲイッテイルノ?っと言うとでも思ったか!!」
とエルシュカの身体から第九魔王ガミエルの声が聞こえメリアを無慈悲にも胴体を半分に斬りつけた。
「我はこの時を待っていた!貴様が勝利を確信する瞬間我は身体を捨てこの小娘の身体に乗り移り厄災の力を得てそれに貴様がこの小娘に与えた魔力をも手に入れる事が出来た。」
「もう、貴様に魔力は残っておらんだろ?」
「転生したての身体では本来の魔力は使えぬだろ?解離剣ヴェゼヴェイアも閉まってしまったようだ。召喚できれば無限の魔力も使えるであろう。」
「だが無限の魔力を使う為にはその儀式として膨大の魔力を消費するのであろう?」
ゼクアの顔から一切の余裕が消え去る。
「大魔王覚悟せよ。」
第九魔王ガミエルはエルシュカの身体を使い呪響魔法で自身の魔力を強化させさらに世界神ノウズベディアと同様に厄災の魔眼をも解放させたのだ。世界神ノウズベディアはその力を使い切る前に死んでしまったが。
だがこの男、第九魔王ガミエルは何もかも違うのだ。次元が!
ゼクアが不死王に命令を下す。
「 リリアを蘇生させて!!逃げろ!!俺のことはいい!!早く逃げろ!!」と言い放ち2人を逃がす為に無くなりかけている魔力で右手に漆黒の炎を纏い殴りかかる。だかその拳も片手で受け止められゼクアは右腕の骨を砕かれ腕を半分に千切られる。
「ぐぁ!!」
「魔力も弱まり力無ければ嫁を傷付けたくないからか?全く効かぬぞ?」
「嫁の身体を傷付けることはできまい。貴様はエルシュカと出会い弱くなった。守るべきものがいるのは辛いなぁ?」
と煽り散らかす第九魔王ガミエルに対してゼクアは一言添えた。
「ならばその身体から無理やりでも引き剥がすとしよう。」
「少ない魔力で何ができる?」
再び幻魔の魔眼が見開く。先程の威圧感もなければ膨大な魔力を感じない。だが幻魔の魔眼の魔眼は想像したものを具現化するもの。
「想像したものを具現化する気か?それにも魔力は必要であろう?」
「確かに魔力は必要だな。だが発動さえできれば魔力量なんぞ関係ないぞ?第九魔王ガミエルよ!」
第九魔王ガミエルは首を傾げて
「ハッタリはよせよ。見苦しいぞ。大魔王よ。」
少なかったはずの魔力が急激に増加していく。一体何が起きた?
さっぱり分からない。第九魔王ガミエルは指揮棒を強く握り締め呪いを発動しようとするがしかしゼクアの膨大の魔力により指揮棒が砕け散る。
「なんと!!!コレほどの力をまだ隠し持っていたとは油断ならぬ者よ!」
「一体何を想像したのだ?大魔王よ。」
「まだ気づかぬか?大魔王に喧嘩を吹き掛けた愚かな小さき魔王よ。」
第九魔王ガミエルは何かに気付いたように目を見開く。
「まさか!無限の魔力を想像したのか??」
「やっと気づいたか。だがもう遅い。」と口にして解離剣ヴェゼヴェイアを別次元から取り出し振り回す。
振り回した瞬間、ゼクアが殺すと認識したもの行動を滅ぼした。
つまり行動できなくなった。
思考も止まり魔力も消え命だけが残る。
「この魔剣はな俺の望んだ未来を再現することが可能だ。まぁこんなこと説明しても貴様には聞こえぬがな。」
動きが停止し魔力も消えた第九魔王ガミエルに対して魔剣で斬りつける。生命を奪い去り魔法をも奪い去ったのだ。
「8000年ぶりに俺の血も騒いだものだ。よくこの俺から解離剣ゼフェイアを引き出したな。褒めてやろう。」
エルシュカのから第九魔王ガミエルの概念が消え去りエルシュカが目を覚ますがエルシュカの魔力が暴走する。
「ちっ!第九魔王ガミエルの魔力の影響か!」
厄災の魔眼が暴走しゼクアの生命を吸い取ろうとするがゼクアの魔剣により無効化されていく。無限の魔力には何も近づかせないが厄災神エルシュカの厄災の魔眼は凄まじく別次元世界のアルディア世界にも影響をもたらし始めた。
アルディア世界の太陽が漆黒に呑まれ月は砕け始め世界が滅び始める。
「ほう。流石は俺と肩を並べた嫁の魔力だ。だが制御が出来なければこの俺には届かん。」
ゼクアが質力MAXで反射の対眼を開き世界を滅ぼす厄災の魔力を力尽くで抑え込む。アルディア世界の宇宙空間を捻じ曲げる。その影響でエルシュカの魔眼の質力が一瞬低下する。
「もう頼むから起きてくれ俺が唯一愛したもの!」
と大声で怒鳴りエルシュカの腹を貫き魔法核を修正する。
「魔力とは魔法核にダメージが無ければ暴走なんぞしないはずだ!」
魔法核に細かい魔法陣を絵描き荒れ狂う魔力を沈静化していく。
暴走した魔力が徐々に収まっていく。
収まった瞬間エルシュカが口を開く。
「ゼクア。助けてに来てくれたの?ありがとう」
「あ!八千年も待たせて悪かった!」