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3. 調査(1)

 翌日、早速昼休みにバート・レノックス侯爵子息はナディア嬢の2年2組の友人を呼び出した。二人きりにならない様に、私が立ち会うという理由で私も呼び出された。バート、皇太子とナディア・ボーフォート侯爵令嬢は2年1組で、彼等と比べれば伯爵令嬢如きの私も一応上位貴族だから1組だ。


 ダーナ・ストーン男爵令嬢は成績優秀なのだが、1年の間にナディア嬢と仲良くしていた結果、クラスでは孤立して、協調性がないという理由で2組になった。もちろん、孤立したからといって成績優秀な侯爵令嬢を2組には出来ないから、ナディア嬢は1組だ。

「やあ、呼び出して済まないな、ダーナ嬢。第三者としてジュディー・コベントリー嬢が立ち会っているから変な噂は立たないと思うから安心してくれ」

「呼び出される段階で安心は出来ませんが、何用でございましょうか」

「昨年は同じクラスだったじゃないか、堅苦しい口調は止めてくれよ」

「…孤立無援、という言葉をご存じでしょうか。孤立したナディア様や私をお助け頂けなかった事は忘れておりません」

「殿下も俺も立場上、誰かの肩を持てない事は分かるだろう。まあ、そう尖がるなよ」

「…口調はお許し下さい。人の気持ちは簡単には変えられません。それで御用は何でしょうか?」

「人の気持ちは簡単には変えられないかな?まあ、それは良い。不躾に言わせてもらえば、聖女を誹謗中傷している者を見聞きしていないか?」

「……ナディア様を誹謗中傷していた者は探さなかったのに、聖女の場合は探すのですか」

「人それぞれの事情がある。そんな事は16年も生きていれば分かるだろう?まあ、我々も神を敵に回したくないのでな、証言を求めている」

「都合の良い時だけ証言などする筈もないでしょう。親しい者ならともかく、私達を見捨てた者に口など開くものですか」

「そういうところだぞ?ナディア嬢も他人に壁を作って、都合よく誰かが助けてくれるなんてあり得ない。それで、あんたは証言を拒否するというのだな?」

バートの雰囲気が一気に厳しいものになった。私に向けられたものではないにしろ、ちょっと怖いな、と思うレベルだ。ダーナ嬢もそれは感じた様だが、反感の方が強いらしい。

「拒否ではなく、知らないという事です。御用がそれだけなら失礼します」

ダーナは頭を下げて小走りで去って行った。


「もうちょっと優しい言い方の方が話を聞けたんじゃない?」

「最初から拒絶しているのはナディア嬢も同じさ。連中は心を閉ざしているのが分かったろう?」

「分かったけど、もう少し宥めすかして聞く方法もあったんじゃない?」

「ああいう手合いの口を割らせる方法を知っているなら教えて欲しいね」

「交渉事なら皇太子の側近候補のあなたの方が色々教育を受けているんじゃないの?」

「ないでもないが、女生徒に使う手段じゃないな」

「いや、拷問しろって言っているんじゃなくて!」

「拷問じゃない。色仕掛けの方だ」

「いや、それ学院で使ったら不味すぎるでしょ!」

「まあ、そういう訳で、俺達の立ち位置は理解してくれたか?」

「私に理解させる為に彼女と話したの?」

「いや、怒らせて問題発言したらとっ捕まえようという腹だ」

本当に性質が悪い。

「冗談だ。怒るな」

「それで、今後はどうするつもり?」

「もちろん、放課後にもう一人に会う。立ち会って話を聞いていてくれ」

「聞いていても、今みたいな内容じゃあ意見のしようも無いわよ」

「思いつく事があったら質問して欲しいが、そうじゃないなら話の内容は吟味してくれ」

「もうちょっと相手が話す気になる言い方をした方が良いんじゃない?」

「今更だ。こういう性格に生まれ育ったから、直し様が無い」


 クラスに戻る前に、2年2組に寄ってみた。ダーナ嬢は独りで座っていた。一言言っておこう。

「ダーナ嬢、立ち会っただけであなたにもお友達にも他意はないから」

「なぜ立ち会ったんです?」

ダーナ嬢は確かに警戒している犬状態だ。噛みつかれたくないなぁ。

「昨日、一声かけられてね。まあ侯爵子息に盾突く度胸はないから付いて行ってるだけだから」

「そうですか。あなたには思うところはありません」

「ありがとう。何かあったら相談には乗るけど、お友達に相談した方がいいかな?」

「そういう事がありましたらお願い致します」

全てに対してこうなのか、バートに付いて行った私だからこういう扱いなのか。多分前者だろう。発端はともかく、集団虐めの割を食った心の傷は、そう簡単に治るものではないだろう。


 放課後、バートは呼び出し先の応接室に向かう間に話しかけてきた。

「ダーナに会った様だな。どうだった?」

「まあ、とりあえず私とは手打ち状態にはしてもらったけど、逆にこれで終わりという関係ね」

「取り付く島もなかったか。それは残念」

「どうしようもないと思っていたんでしょ?思っても無い事を言わないで」

「一応、調査の相棒には気を使うさ」

「調査相手にも気を使った方が良いわよ」

「覚えておこう」

とりあえず直近の調査相手に気を使う気はなさそうだ。男は女の言う事など気にしてくれない、よく言われる事だが真理だ。

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