大家のターン再び 11
どうしたんだろうか?そう思いながら岩さんで埋め尽くされる道路へと向かえば
「茶々、アゲハ、おじじ大丈夫?」
塀の上で茶々の背中の上に避難していたアゲハとおじじが震えながらも緑青に向かって大丈夫だというように頷いていた。
心なし涙が出ているようだったが
「緑青、知り合いか?」
大家さんが岩さんの大きな体をよじ登ってプルプルと震える三体の使役を覗き込むもさすがに暁さんまでよじ登るという気概は見せてくれなかった。
「あのねー、籠の中に居る時ずっとそばにいてくれてたくさんお話してくれたんだよー」
なんてほっこりするような話。
きっと怖くって寂しくって泣いていただろう緑青を励ましてくれてたんだと思うも大家さんはどこか厳しい顔。
何がいけないのかと思ったものの
「暁!これは何だ!なぜ吉野の付喪神達がこんな所に居る!」
「あ、親父と爺さん。さすがに気付いたか」
「気づかないわけがないだろ!飛び起きて駆けつけた次第だ!」
「さすが爺さん夜が早い。それよりそんなに怒ると血圧が上がるぞー」
「吉野の!とりあえずこの付喪神を何とかしろ!」
「えー?」
顔を真っ赤にして怒る暁の爺さんに何にもするつもりがないという顔をするも
「主ー、お話長くなるならお散歩してきていーいー?」
「見える所に居ろよ」
「岩も行くー!」
言いながら玄さんの背中に体を巻き付けて空へと上がって行ってしまった。
「なにあれ……」
さすがに目が点になった。
「真ー、玄ねー、大きくなるとお空も泳げるようになるんだよー」
すごいでしょ!というように優雅に空中散歩をする様子に
「緑青も行くー!真も行くー?」
「ええと、今は大家さんと大切なお話があるから今度にさせてもらうよ」
うん。さすがに怖いから無理。とは言えない俺をかわいそうな子を見る目は止めてください暁さん。
大家さんの付喪神は相変わらず自由だった。
小さな山の様な玄さんが岩さんを体に巻き付けて、その尻尾を掴んだ緑青が引っ張ってもらいながら優美に泳いでいた。
「金ぴかのおうちはっけーん!次の駅は金ぴか駅でーす!」
うん。家の池と何にも変わらない光景。
スケールが違うというか視線が違い過ぎるというか。頼むから壊さないでくれよと願ってしまうのは当然か。
「で、吉野の。説明をしてくれるのだな」
言い逃れをさせてくれない厳しさを持つ声に大家さんは感情を消した目をして
「暁、とりあえずこのあと飯田さんの家に連れてってくれ。
爺さん達も知らない人たちも話を聞きたいようだから詳しくはあとから連絡入れる。今日はこんな時間だから解散しよう。爺さんもとりあえず暁から詳しく話を聞いてくれ」
「ちょっとまて、お前逃げる気か?」
大家さんはにやりと笑って
「さびー、玄さーん、岩さーん。戻ってこーい。行くぞー!」
「「「はーい」」」
体は大きくても素直な返事。
だけどその巨体は見る間に小さくなって……
ほぼ落下のように落ちてきた玄さんと岩さんを慌ててキャッチする俺と暁さん。
緑青はあれだけボロボロで血がにじんでいた体は美しいまでの空色の体で
「主ー!キャッチー!」
そこが到着地点と言うように甘えるように大家さんの顔に突撃すれば……
どさっ……
緑青が飛びついた勢いのまま大家さんは倒れた。
「主ー、こんなとこでねんねすると風邪ひくよー?」
とどめを刺した緑青ののんきな声はもうあんなことがあったなんて想像もつかないくらいの穏やかな声。
だけど現実を見ろ。
「くそっ!逃げやがって!」
暁は盛大に舌打ちをしながらも綾人を持ち上げようとするも意識のない人は本当に重たいというようにふらふらな足取りになれば真もあわてて手伝ってくれた。
「爺ちゃん、とりあえずこれを置いてくるから。
帰ったら話すからひとまず家で待っていて。
あとこの爺さんの親族の人にも話したい事があるから一緒に待っていてもらえると助かる!」
「まて!お前たちはどこに行くつもり……」
「飯田さんの所!この時間に飯田さんの家だよ!どんな嫌がらせだよ!!!
ちびーずもついてこないと置いてくからな!」
「つっきー待ってー!」
「玄さんが今一生懸命追いかけてきてるから待ってー」
「つっきー、玄は頑張るから待っててねー」
「誰かちびーずを連れて来てくれ!」
涙交じりに叫べば同情する親父が手伝ってくれた。そして哀れな子羊を見る目も止めてほしい。
でも分かるよ。
うちもそれなりに厳格な家だけどあの家はまた一筋縄ではいかない家なのだ。爺さんはともかく親父も苦手だよなと分かってはいるが同情するなら手伝いやがれ。綾人もお前重いぞとぼやきながら路駐していた車に放り込んで呼び止められる前にさっさと車を走らせた。
やっと大家のターンエンドです。




