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家賃一万円、庭付き、駐車場付き、付喪神付き?!  作者: 雪那 由多


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大家のターン再び 7

「緑青無事か!」

「真?真!やっぱり迎えに来てくれたんだね!」

 札の隙間から緑青の小さなおめめが見えて、別の隙間からも小さなおてての指先がチョンと必死に伸ばされていた。

 大家さんはその指先に自分の指先を重ねて

「さび大丈夫だ。すぐこんな狭い所から出してやるから……」

 言いかけた所で暁さんが張られた札に手を滑らせながら大家さんの手をゆっくりと籠から離した。

「綾人、それはさすがのお前でも剥がれないぞ。下手をすると怪我をする」

 ものすごく難しそうな顔で暁さんは緑青が入った籠を睨みつけていた。

「さすが九条の、その札の効果を一目で見抜くとは次期当主にふさわしい!幾重にも重ねた札の中には札を破れば同じように手が裂ける札もあるからな!」

 豪快な笑い声と共ににやにやと崩れ落ちた壁からやってきた爺さんたちだが、今も舞い上がる埃で家を破壊されたショックでこぼれた涙の痕にしっかりと土埃が残り面白い顔になっている。メンタルは強が

「迫力のない顔だなー」

 大家さんがダメ出しをしてくれた。

 いや、負け惜しみにそんなダメ出し要らないから、なんて言いたかったけど

「爺さんの愉快な顔より暁説明」

 そう言う間も無理だと言われても一生懸命札を剥がそうとする大家さんに

「それは言う事を聞かない付喪神と強制的に契約を結ぶための牢獄の様なものだ」

 忌々しそうに手を握りしめて

「捕獲された付喪神の意思で主をその術を掛けた人物に変更を願わない限り二度と出る事が出来ない仕組みになっている」

 まだそんな術が残っていたのかというように壁を叩くものの

「九条の、そちらではあまり知られてないようだが、我ら陰陽師ではまだまだ普通に使われるものだよ」

「寧ろこう言った事こそが真骨頂ですよね」

 忌々しそうに言えばにやりと笑う下卑た顔に見えない所にどんなトラップがあるのかに気が付いて大家さんの顔が凍り付く。

「主ー、ごめんなさい。知らない人について行っちゃだめって言われていたのちゃんと覚えてたよ。だけどつかまっちゃって逃げられなかったの。ごめんなさい」

 主の顔を見て安心したのもありめそめそと泣き出す緑青に大家さんは札の隙間から指を突っ込んで

「ほら、深山の子が泣くな。さびはちゃんと言いつけを守ったんだ。向こうがろくでなしなだけだからさびがごめんなさいは言う必要はないぞ」

 指先が緑青の鼻先を撫でれば嬉しそうにその指先を掴んですり寄る仕草のいじらしさに見ている方が涙が出てくる。

「ふん!どうせ心変わりするまでその籠から出る事は出来ないのだからお前たちには無用の長物!さっさと邸から出て行け!」

 そんな叫び声に大家さんはゆっくりと振り向いて立ち上がる。 

 だけど絶対あきらめないという視線のまま鳥籠を抱え上げた。

「お、おい!鳥籠を置いて行け!」

 まさかそのまま持っていくのかというような慌てる爺さんの声に

「持ち運びができる状態で置いていて何を言ってる!それにさびはうちの子だ。連れ帰るのは当然だろ!」

 なんて言いながらも籠を俺に預けてくれた。

 緑青を守り切れなかった俺にもう一度託してくれるなんて今度こそは期待を裏切らないというように大切に抱きしめて隙間から緑青に

「さあ、おうちに帰るぞ」

 優しく伝えれば外に出て空を自由に飛び回りたいはずなのにそんな事は一切口にせずに嬉しそうな顔でうんうんと頷いてくれた。

 そして大家さんと言えば俺に籠を預けた直後にバールを掲げ上げればまた自慢の家を破壊されると思ったのか爺さんの悲鳴と言うこの世の物とは思えないおぞましい声が迸った。

 そう、大家さんは二度目だからとさっきよりも効率よく壁を破壊し、暁さんももう知らんと言うように一緒に壁を足蹴にして手伝っていたのをそれでいいのかと思いながらも妨害しようとするじいさん達にその辺にあったものを投げつける俺もサイテーだと思っていても飾られた生け花の剣山まで投げたのだから……

 割とご近所なのにこれだけ暴れたのだからもう実家に帰ることは出来ないなと心の中で母さんごめんと謝るのだった。

 とはいえ狭い室内。

 壁に穴を開けた所ですぐ外にお連れの三人が待ち構えていた。 

 しかしそこは大家さん。

 バールを振り回して追い払うという当たれば怪我確実な事を平気でやってみせる俺様大家様。

「こ、こらっ!こんな狭い所で怪我をしたらどうする!」

 そんな主張に

「うちのさびの自慢の羽をこんなにもボロボロにしておいて怪我も何もないだろう!無事でいられると本気で思ってるのか!」

 なんて言いながら別の壁にもバールを突き刺して壁に穴を開けていた。

 ちらりと見ればちょうど仏間の隣の床の間のようで爺さんの悲鳴がまた一際大きく迸った。

 聞くに堪えんと言うように顔を歪める大家さんだがちょうど一人側にいたおっさんをバールの先っちょで服を絡みとって引き寄せた。

「ちょうどいい。俺が受け継いだ香炉を返してもらいたいから案内しろ」

 ものすごい悪役顔で服を絡めたまま顎にバールを押し当てる非道ぶり。

「やだ、大家さんかっこいい」

「なかなかそこまでできる奴いないよなー」

「お前はお坊ちゃんだからこういうのを見て育たなかっただけだろ」

「……」

 暁さんの目は相変わらず死んでいる。

 というか、俺だって見て育たなかったから俺達の方が普通ですと言いたい。

「それにこれ以上とないくらい和平的な交渉じゃないか」

 これが和平的と言うなら普段はどんな交渉をしているのだろうかと思うも大家さんから交渉という言葉がこんなにも似合わないのはなぜかと思えば家賃を言い値にしてもらったあの経緯があるからだろうか。

 今となれば逆にお世話させてくださってありがとうございますって言いたいけど。

 言うと絶対調子こくだろうから素直に感謝が言えないのが何とも言えない気持ちになるので心の中ぐらいならいくらでも言わせてもらいますよと心の中で伝えておいた。







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