表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
家賃一万円、庭付き、駐車場付き、付喪神付き?!  作者: 雪那 由多


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

79/243

自分と向かい合う時間 4

 練習用の半紙で良かった。

 本番用でもなければ頂いた紙でもなくってさすがにほっとしたけど

「岩さん、墨で汚れちゃうよ」

 岩さんはもちろん下敷も汚れまくり、持ち上げた文鎮の下にも墨がじわーっと溜まっていた。

「岩は黒いからよくわからないねー?」

 まったく気にしてないようだった。いや、気にしてください。

「ほら、机の上とか黒くなっちゃってるから」

 慌てて拭くも墨は落ちてなかったから無事汚す事はなく済んでほっとする横でいけない事をして怒られたと理解してしゅんとする岩さんがいた。

「怒ってるわけじゃないよ」

 言いなが岩さんを掬いあげて台所のシンクへと置いてぬるま湯で岩さんについた墨を洗い落としてあげた。

「墨はね、一度つくとなかなか汚れが落ちないんだ。

 ここは大家さんから借りているお家だから汚してもいけないし、あの机はずっと昔からこの家にあった机だって聞いたから。ずっと大切に使われてきた机を汚したら大家さんとても悲しむと思うんだ」

「うん。ごめんなさい」

 ちゃんとごめんなさいが言える岩さん。その反省をしている姿にとてもいい子だとうるっとしてしまう俺はただの親ばかだ。

「岩さんはお絵かきが好きなのはちゃんとわかったから。

 これからお絵かきをする時はルールを決めよう」

「ルール?」

 お絵かきをしてはいけないという事は理解できた岩さんはお絵かきもしていいという言葉にきらきらとした目で俺を見上げ

「そうだ。俺が大家さんのお家を汚さないように気を付けるように岩さんも気を付けなくてはいけない」

 言えばわかったと言いうようにこくんと頷くのをみてピクニックに使うシートを広げてその上に半紙を置いた。

 それだけでワクワクしだした岩さんだが、それにストップをかけて俺は使う事がないだろうと思いつつも処分できなかった水彩絵の具を持ってきた。

「真ー、それなーにー?」

 初めて見る絵の具を不思議そうに見る岩さんに

「絵具だよー。絵具はいろんな色があるんだよー」

 説明しながら小さなお皿の様なパレットに干からびかけた絵の具を出して、何とか水で伸ばして程よい状態にして

「初めてだから黄色と水色と赤紫色を使ってみようか?」

 ふむふむと手元を覗く岩さんに見やすいように半紙に色を乗せていく。

 さすがに画用紙はなかったので使いにくいが岩さんの好奇心を思えばそこは次回のお楽しみにしてもらえばいい。

 絵具の筆でさっ、さっ、さっと紙に乗せてどんな色か見せれば

「真凄いね!黒い色だけじゃないよ!」

「ふふふ、絵の具がすごいのはこれからだ」

 そう言って黄色と赤紫を混ぜて

「これは朱華の色に近いかな?水色と赤紫を混ぜると緑青の色にも似てきた」

「真凄い!」

 しっぽの先っぽを床にたたきつけて拍手をするかのように興奮する岩さんが初めて見せた玄さん以外に興味を持つ様子に少しだけほっとしながら

「色は何を混ぜても良いから。ただし紙の上からはみ出さないように書くのがルールだよ?」

「ルール!」

 分かったというようにピンと背筋を伸ばしてからパレットのインクを体に塗り付けて半紙一面に色をどんどん乗せていく。

 何を描きたい、ではなく色を塗りたくるのが楽しいというように塗りたくり、そして俺が色を変える時に筆を洗って雑巾で拭ったのをちゃんと見ていてか同じように色を変える時は筆洗いで体を濡らしてから雑巾で体を綺麗に拭ってから別のパレットに飛び込んで色を増やしてそして紙の上で塗り重ねていく。

 紙を変えて何枚も絵具を運び


「真ー!楽しいね!」

「うん。岩さんも上手だね」

 

 いろんな色を塗りたくったただそれだけの物。

 だけどその過程の岩さんの笑顔が見た事もないくらい輝いていて……


 黒色だからわからないなんて思っていてもしっかりとカラフルになってしまった岩さんが少し疲れてきたのを見計らって岩さんを台所のステンレスのボールで用意したお風呂に入れてあげるのだった。




 岩さんがいない……

 ふと池の岩でお水遊びで冷えた体を温めていた玄はいつもそばにいる岩さんがいないからきょろきょろと視線を彷徨わせてしまう。

 途端に心細くなってしまったけど

「真ー、もっと絵具出してー!」

 家の中から岩さんの声が聞こえてきた。

 岩さんの声にほっとして玄もお家に戻ろうとよちよちと歩き出せば

「玄さんもうお池遊び終わり?」

 緑青が頭の上をふよふよと飛んでいた。

「岩さんがお家の中で遊んでいるから何やってるか見に行くんだー」

 そんな寂しさをごまかす気合を入れた声。

 もちろんスロープを上っての距離は空中で直線に進むことが出来る緑青に取ったらまだるっこしくて

「ねえ玄さん。また抱っこして運んでいい?」

「玄は重いよ?」

 決して重くもないが緑青の飛行能力が持ち上げられないだけ。

 だけどそこは男の子。

「玄さん位持ち上げられるもん!」

 負けず嫌いの緑青は抱っこするねーと言って玄さんを抱っこしてふらふらと空を飛んで縁側まで何とか上がった所で

「朱華も縁側を上がれるようになったよ~」

 負けじと一生懸命羽をパタパタと羽ばたかせて赤いお顔なのに顔を真っ赤にして上り切った縁側で羽を広げて息を切らせていた。

「朱華も頑張ったねー。

 緑青もありがとうねー」

 一人らくちんで縁側にあがった玄は二人をほめちぎっていれば

「みんなして何してるのー?」

 ひっくり返して置いてある植木鉢を足がかりにしてぴょんと縁側に飛び乗った真白が息を切らしている二人に見せつけるかの余裕な姿で現れた。

 ふふんという顔で朱華と緑青を見下ろすけど朱華と緑青は自分の目標が達成したのでそんなのお構いなしに立ち上がって玄さんが歩もうとしている方を向いて……

 固まった。

 ピクリとも動かなくなった三体に真白も不思議そうに同じ方向を向いて顔をひきつらせていた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ