筆に願いを 2
「真―、お仕事終わったー?」
「真ー、真からなんか匂いがするー?」
煤を払い除けてちみっこ達の様子を見に庭へと降りれば縁側で遊んでいた真白と朱華がさっそく駆け寄ってくれた。
なんかこう言うのがあると仲良くなった気がするよな~なんて初めて大家さんの家にお邪魔した時みたいなみんなが全力で駆けて行く様子が少し羨ましかったけどついにこうやって信頼関係も生まれれば全く知らない土地に来て友人関係はもちろん知り合いも一から作り始める新天地にはもう寂しさなんて何もない。
「今お仕事終わったからね。匂いは墨かな?お札を書いてたから」
本当はいろいろとめんどくさい手順があるお札作り。
だけどうちの家系はなぜかそれをすっ飛ばしてお札を書けてしまうと言う……
きっとここが本家から流れて受け継いだ力なんだろうね。
父さん達はこんな裏方の仕事ではなく本家がしているような事にあこがれているからの執着なのだろうが、これだって十分なんじゃなかろうかと思うも欲望は膨れ上がるものでそれどころじゃ収まらないのが現状なのだろう。
「「お札~?」」
それは何と言うように二体はコテンと首をかしげる。
くそっ、かわいいを知り尽くしてるちみっこよ。思わず指先で首筋をくすぐって遊んでしまうじゃないかと縁側に座って膝の上に乗せて首筋をコチョコチョと指先でくすぐってしまえば気持ちよさそうに目を細めていた。
「部屋の隅に黒いのがあっただろ?
あれ、直接触ると良くないからお札って言うモノで綺麗にお掃除してきたんだ。
少し前にも家の中に溜まっていただろ?」
「真が怖くなっちゃった時お家の中いっぱいだったね?」
「ごめんなさい。気づきませんでした」
ちみっこの声も聞き取れないくらい体調に異変が出た程に追い詰められていたのでそこは素直に謝っておく。これからは少しでも見かけたら掃除するからねと謝れば
「あの時のは朱華と主でやっつけたよー!
羽でパタパタして集めてからお空にぽいってやるんだよー!」
さすがこの家の守り神。
ぴょんと俺の膝の上から飛び降りて部屋の中でパタパタと羽ばたけば集まる埃……って、やだよ朱華さん。お願いだから丸まった埃を転がして楽しそうに育てないでください。掃除に手を抜いていたわけじゃないんだけどどうしても視線が低いとみる場所が違い過ぎて……
朱華と同じ身長の綿埃が出来た頃には
「ごめんなさい。きちんと掃除をするので許してください」
手のひらサイズの付喪神といえどもここは神様の住む家。
朱華は仕方がないと言うように埃を羽でパタパタと家から押し出すように転がして縁側から庭に落とした。あ、それはいいのですか…… ちょっと眺めていたら
「主がこうやってお掃除してたのー!」
主直伝だと言うように誇らしげに胸を張るもののその主さんとやらに問いただしたい。
Q:縁側から落としたこのゴミはどうするのでしょうか?
どんな答えが返ってくるとは想像がつかないけどあれだけ大きな家なのに綺麗にして朱華たちもお掃除の概念が分かっているという事はかなりマメに掃除をされていたのだろうと少しだけ尊敬してしまう。例え出たごみを庭に捨てるとしてもだ。
「朱華は凄いな。だけどあれは危ないから触っちゃだめだよ?」
「危ないのー?」
真白が不思議そうな顔をすれば
「あれはねー、べとべとして臭くてきもちわるいんだよー」
朱華が体を震わせて説明すれば真白もやだー!と怖がってみせた。
とここで疑問が一つ。
「朱華はあの黒いのを知ってるけど真白は知らないのかい?」
そう取れる反応に
「朱華がお掃除しているし、岩さんがぱくって食べちゃうからお家の中がいつも綺麗だから真白は遠くから見ているだけだもん!」
胸を張って言い切る事ではないの前に
「岩さーん!!!」
速攻で庭から裸足で降りてお池で玄さんと緑青で泳いで遊んでいる岩さんのもとへと向かえば
「なーにー?」
今日も玄さんを先頭に水上電車ごっこで楽しんでいました。楽しそうで何より!
玄さんは池のふちに置かれた幾つかの大きな石の段差を利用して
「到着~!」
ちゃんと駅設定の石の段差から池から上がる電車ごっこの徹底ぶりに和むわぁなんてほっこりしてしまうけど今はそうじゃない。
「朱華から聞いたけど岩さん家の中の黒い埃みたいなやつ食べたって?
お腹とか痛くないの?!」
しゃがんで視線を合わせるように聞けば
「岩はおなか痛くないよー」
何か問題でもあるのと言うようにこてんと首を傾げるも岩さんがもともと黒いから何か悪いものでもついてないか心配になるけど当人が問題ないというなら大丈夫なのだろう。
「岩さん、あの黒い奴は悪いモノだから食べちゃダメだよ?」
「うんー。美味しくないよねー?」
そういう問題なのかと思うも
「これからはちゃんとお掃除するから見つけたら教えてね?」
「判った!真に言うねー!」
任せろと言った所で石のくぼみから
「では~左回りでどんぐり駅まで出発しまーす!」
そんな玄さんの楽しげな声に
「玄さん待ってー!」
そう言って慌ててお池に飛び込む岩さん。
「飛び乗り乗車は大変危険で~す。おやめくださ~い」
「ごめんなさーい!」
楽しそうな声でそう言って駅を出発してお池のふちに沿って反対側の石にはどんぐりがいっぱい飾ってあるところを目指して泳ぎ始めるのだった。
A:そのうち風化するから気長に待て(主談)




