お宝探しに東へ西へ 4
家に帰ればすぐに手を洗わせた。
基本外で遊ぶので家に入る時とご飯の前には手を洗う習慣を付けさせるように繰り返していたので最近では朱華も真白も逃げ出さないで手を洗うようになった。
逆に玄さんと岩さん、緑青が水遊びを始めるのでこれはこれで頭の痛い問題になったが、タオルを用意しておけば自分たちできちんと拭いてくれるので手間がない分問題ないが
「こらそこ!部屋の真ん中でドリル禁止!」
真白と朱華が部屋の何にもない真ん中でドリルをやると濡らした俺への逆恨みとして気持ちがいいという事を発見して以来続いている。
その後雑巾がけをする俺を真似て緑青が体をふいていたタオルを玄さんと岩さんを乗せたまま引っ張ってきて俺の雑巾がけをする真似をしてくれる。
もちろん真似なので真白も朱華もタオルの上に乗って緑青に引っ張ってもらって遊ぶと言う遊びの天才たちのおもちゃにしかなっていない。
というか緑青よ、お前意外と力持ちだな……
一番体重の軽い岩さんなら訳もないだろうが肉々しい鳥と意外とがっちりしている真白を乗せて飛んでいる状態で引っ張っているのだ。謎生体の付喪神って不思議ーと思いつつも一緒に住み始めた頃はみかんを持って飛ぶ事もできなかったのに……
ちゃんと成長しているんだなと少し自身にコンプレックスを抱いている緑青だがちゃんと成長している姿を目に見て理解しないと分からないよなと特に目に見えない所の成長は気付き難いしと一人で頷きながら
「緑青は力持ちだなー?
みんなをタオルの上に乗せて引っ張れるようになったんだ」
言えば掴んでいたタオルの端をぽとりと落とし、急に止まった為に慣性の法則でみんなででんぐり返りを打っていた。
「緑青は力持ちー?ほんとー?」
きゅ~!っと嬉しそうな鳴き声を上げれば
「真白もできるもん!」
そう言ってタオルの端を咥えて走り出した所で乗っていた玄さんや岩さん、朱華がころころと床の上に放り出されてしまった。
しかしそこは子供。
「きゃー!もう一回やってー!」
「緑青にもやってー!」
どんな事も遊びになってしまうちみっこ達のお世話は体力勝負だ。
「遊ぶのはいいけどご飯の時間だぞー」
そんな魔法の言葉。
しゅたっと朱華がテーブルにつけば
「みんなご飯の時間だよ。
いつまでも遊んでる子にはご飯はありませんよ」
仲良しなちみっこ達は朱華の食への欲求に身を震わせすぐに遊びを止めて食卓に着いた。
大家さん曰く
「朱華が付喪神になったのは全く気付いてなかったからな。
何十年と空き家になっていたからその間ご飯なんてもらえなかっただろうし、飢えって言葉を一番理解してるだろうからごはんに対する執着は凄いぞ」
なんてレクチャーを受けた意味を理解が出来た。
もっとも付喪神にご飯とか必要なのかと思うも一応神の末席に名を連ねる付喪神。神である以上信仰が生きる糧であり食事はもちろん信仰も空腹ともに極限の状態だったと言う。
大家さんはよくわからないなりにだが食事を与え、名を与え、使役する事で飢えは免れたらしい。だけど空腹の飢えだけはどうしようもないと言うように食べるモノへの欲求が酷いと言う。
確かにプチトマトの山を見て全部美味しそうに見えて一口ずつ齧ったなんて言ってたけどまさかそんな欲求からなんて想像つかなくて、だけど俺がパニックになってみんなの存在も忘れてまで仕事の泥沼にはまった時に再び覚えた飢餓と誰にも存在を理解してもらえない恐怖を思い出し、腐った野菜や果物を見てただ与えてくれるものはない事を理解した。
緑青達とは違い、この家の欄間に宿ったモノなので基本はこの家が行動範囲となり、使役された今では主である大家さんの行動範囲の中、もしくは数時間程度でも姿を保って居られるらしいが基本はやっぱりこの家中心と言う。
そんな朱華なので食事に対する思いは他の四体に有無を言わさぬ謎の力を持っていて、朱華が食事だと言えばみんなきちんと食卓に着くようになった。
ただし……
「真ー!今日の山菜ごはん美味しいね!」
「真ー!大根のサラダしゃきしゃきで美味しいね!」
「真ー!今日のお蕎麦のコシがないね……」
大家さんが何を食べさせていたのか知らないけどどうしてこんなにグルメになったのだと問いただしたい。
むしろ鳥に蕎麦のコシなんてわかるのか?!なんて全力で問いただしたい!
だけど
「朱華ねーお蕎麦の実が好きなんだー。
割って食べるとお蕎麦の香りが口いっぱいに広がってね!」
それはそれは幸せに語るのでヒマワリの種を与えて見れば
「ちょっとしつこいですね」
手のひらサイズの小鳥なのにしつこいとかほんと解ってるのかよ?!なんて全力で突っ込みたくてもまだ突っ込めなかった出会った当初の頃。
訳も分からず朱華が食べなかったヒマワリの種を食べれば確かにしつこくて……
ヒマワリの種をネットで購入したせいで何件かナッツ類がお勧めに出てきたのでカボチャの種ならいけるだろうと購入すれば
「サクッてして皮も剥いてあって食べやすくっていいね!」
なんとなく朱華の趣向を理解した瞬間でもあったなと思い出しながらこの賑やかな食卓を見守る。
相変わらずおにぎりを抱えてふわふわ飛んでしまう緑青と真剣にご飯を向き合う朱華。男前にご飯を食べる真白に食事のゆっくりな玄さんをかいがいしくお世話をしながらご飯を食べる岩さん。
テーブルの上は食べ散らかし具合はだいぶましになった程度のカオスは変わらないが、無事今日もご飯と言う名の戦場をくぐりぬけて
「よし、緑青。ごはんを食べ終えたからどんぐりさんを一度お風呂に入れてキレイキレイにしたら洞の中に宝物を入れておいで」
食器を洗いながらどんぐりをお水からゆっくりと温め、しばらく沸騰させてどんぐりの中に住み着いた寄生虫を退治してからザルに上げて乾かせば緑青がせっせと洞の中に運ぶのをみんながお手伝いをしていたのはきっと俺が知らない間に育んだ何かがあって……
「真ー!今度はポイしないでね!
そしてまたお散歩に行こうね!」
みんな揃って見上げる期待の眼差しに
「迷子にならないようにちゃんという事を聞くのならな」
そんな約束。
全員大喜びだからまあ良いかと幸せを分けてもらいながらお茶を飲んでから仕事に取り掛かるからいい子して遊んでいるんだぞと気持ちよく仕事に取り掛かったのだが……
次の日の朝。
水やりの仕事が終わった所で全員が俺を見上げて
「真ー!お散歩に行こう!そしてどんぐりさんいっぱい拾おうね!」
「玄はねー、昨日の公園がいいなー?」
「岩もねー、昨日の公園大好きだよー?」
「真白も広い公園で走り回りたいなー?」
「朱華はね、公園の木の実をお勉強したいと思います!」
いや、毎日は無理だって……
そう言わせてくれないうるうると見上げる瞳に俺は雨が降る日が来ることを切実に願うのだった。




