お宝探しに東へ西へ 1
晴れた空。
白い雲。
噎せ返る様な緑の匂い。
そして、肥沃な大地の匂い。
いや、肥料の匂い……
「知り合いの農家さんに牛糞貰ってさ、しっかり乾かした奴だからそんなに臭わないと思うけど……無理だったかw」
こうなる事が分かっていたと言うようなにこにことした意地の悪い笑みに俺はしかめっ面で
「すみませんねー。こう見えても街中で庭のないような家で育ったので」
「うんうん。俺もこっちに就職するまではそれなりに街中に居たからね」
「なんでまたこちらに就職を?」
「普通に就職活動してたら?」
特にこだわりを持って就活をしたわけではないようだ。
「しいて言えば田舎だからいろんな植物に触れる事が出来るのかって思ったんだけど、さすがにこれだけ過疎化が進んだ所だから庭じゃなく放置された場所しかなくってさあwww」
これは笑いごとなのだろうかと考えてしまうが
「結局綾さんの所に再就職させてもらって師匠の下でやっと満喫できる環境になったんだけどね」
そう言って苦笑。
「こき使われてますね?」
「覚悟してたけど想像以上に人使い荒くてさ、だけど誰も疑問持たなくて言われた通りに仕事しててさ、みんな頭おかしいよって思ってたんだけどいつの間にか俺も同じように仕事してて、朝五時起きとかないわーって思ってたんだけど普通に起きれるようになったし」
「うん。それ分かる。
俺も結構夜型だったけどいつの間にか朝方に変わっててさ」
二人して牛糞を漉き込んだ畑に沢から流してこんでいる水が溜まっていくのを眺める横で池で朝から水遊びしているちみっこの笑い声が酷く楽しげだ。
「師匠から例の紫陽花畑から何本か持っていってって貰って来たし、綾さんの所のアナベルとか紫陽花も何本かひっこ抜いてきたのを植えたから少しは殺風景なのが落ち着いたとは思うけど」
「せっかく挿し木を作ったのにまだ植えれないとは……」
自分で作った挿し木だからこそ愛着がわくのではと言いたかったが
「今移植すると普通に枯れるっすからね」
「育ててこそ愛でると言う事ですね」
愛着がわく前に枯らしてはいけない。根本的な問題だ。
「ホスタとかいろいろ北側の方に植えていくけどシェードガーデンみたいな感じで綾っさんの所から株分けしてもらうから楽しみにしていてください」
「いや、遠藤さんの方が楽しそうで……」
初心者としては朝顔と向日葵ぐらいしか育てた事がないので何を言っているのか全く分からなかったけど
「入り口は綾っさんの所からもらったアナベルを門代わりにしてドーンと育てましょう!
駐車場はしっかり車が止めれるように確保して、家の裏側の斜面の土留め代わりに紫陽花を植えて裏側の通路を抜けた先の倉庫を目隠しするようにツルバラで四阿を作りましょう!いい感じに風を防いでくれはずなので、あー、ベンチとかテーブルも欲しくなりますね。
廃材で良ければ適当に貰ってきますんで作りますから」
「よろしくお願いします!庭でお昼とか食べれたら楽しいと思うので是非!」
「よし任された!」
すごくいい顔をして俺に説明する様子は俺も庭づくりが楽しいと思えるくらい心から楽しんでいた。
「表側の梅の木は立派なので残しましょう。洞があったり、風で木がねじれてたり貫禄はあるから。ちなみに梅は師匠のお気に入りなので俺はお触り禁止なのです。
そろそろ手入れに来ると思いますのでよろしくお願いいたします」
「いえ、こちらこそお世話になります」
遠藤さんもだけど師匠さんもかなりな園芸マニアックなんだなって思うもののまだ咲いている所を見ていないからピンとは来ないけど緑青がお気に入りなのだ。きっと良い木なのだろうと梅の木を見れば……
「あ、どんぐりが詰まってる。
リスが置いて行ったのかな?リスの巣になる前に撤去しますね」
なんてささっと綺麗にした所で
「あー!緑青の宝物ー!」
洞に中を覗いていたのが気になっていたのか俺達を見ていた緑青がとっちゃダメー!なんて涙を流しながら遠藤さんの手を引っ張っていたけど、悲しいかな。遠藤さん、視えない人だしこういう事に一切関係がないような人なので遠慮なく洞の中身を掻き出していた。
ちょっとかわいそうかと思ったけど
「うわっ!蛆が沸いてたw」
なんて絶叫しながらも綺麗に掻き出してくれて最後はだいぶ傷んでいたどんぐりを箒と塵取りを使ってゴミ箱に処分してくれた。
「ふーっ!すっきり!」
「緑青の宝物ー!一生懸命集めたのにー!」
酷い!酷いよ!と遠藤さんにぶつかるも一切気づきもしない様子に苦笑する。
「そろそろ水止めて来るな」
「お願いします!」
言いながら緑青を捕まえて
「今度一緒にどんぐり拾いに行こうな?」
「緑青の宝物なのにー……」
めそめそとぐずってしまうも
「玄もどんぐり拾いに行きたいー!」
「岩もついて行くー!」
できる子玄さんの一声に岩さんも賛成という声を上げれば
「真白もいっぱいどんぐり拾いたい!」
「朱華も拾う!」
こうなればさっきまでめそめそしていた緑青は嬉しいと言う顔に変わり
「みんなで一緒に拾いに行こうねー!」
「「「「ねー!」」」」
仲良しさんで何より。
ほっこりとその様子を見守っていれば
「じゃあ、俺仕事に行くんで失礼します!」
「こちらこそありがとうございました!」
「また明日お邪魔します!」
車に乗って去っていくのを見送りながら
「よし、ごはんにするか」
「「「「「はーい!」」」」」
みんなで家の中に入ればもうすぐご飯が炊ける少し甘い香りが部屋いっぱいに広がっていた。




