小さいながらも作る夢の国 2
一応あのぎっくり腰は夕方になる頃何とか動けるようになったので病院に行ってシップを貰い、一週間安静と言う言葉を貰った。
まあ、会社勤めではないから一週間自宅待機は慣れたものだし、ありがたい事にスーパーの宅配サービスをお願いすれば生活は困る事はない。
ちみっこに心配されたけど、ベッドの上で仕事をしたり、縁側で仕事をしたり、庭改造を眺めながら仕事をしたり別段普段と何も変わらない生活をしていた。
庭改造一日目。
遠藤さんが仕事が終わってから庭を畑に改造すために来てくれたのはいいのだが……
「草刈りも大変だけど根っこを取るのも大変だからユンボでチャチャッと表面刈り取っちゃいますね」
ものすごい良い笑顔で庭の表面の土をカーペットをはぐかのように雑草の根っこ事掘り返すようにして耕していました。
いや、これは耕すと言っていいのか?
庭改造二日目。
綺麗に四角く掘り起こされた庭に今度はどこからか持ってきたのか柵で囲ってくれていた。
「これ、少し前に更地にした家の物ですけどモノも良いので害獣対策に使えるかもってとっておいたものですがそれで囲っておきますね」
まだまだ新しめの柵でぐるりと囲まれた畑はそれだけで防御力が上がったようにも見えて凄いなーと感心してしまう。
庭改造三日目。
俺も空いた時間にちみっこと一緒に掘り起こされた土がいい感じに乾燥してきたので根っこ付きの草と土を分けて分別しておく作業をする。
遠藤さんは俺の体を気遣って無茶はしないでと言ってくれたがこれぐらいなら大丈夫だからとちみっこ達と一緒に美味しい野菜が作れるようになると良いよねと盛り上げて草と土を分けていた。ちみっこも主の家の様な美味しいお野菜が出来る畑になりますようにと張り切って手伝ってくれたけどいつの間にか砂遊びに変わっていた。予想通りとは言え楽しそうで何よりですとバケツを持って来て土を詰めてひっくり返して作ったお山を用意すればみんな大喜びでお山に登ったり、掘ったり、崩したり。いつもとは違う遊びに大満足のちびっこは土遊びをしながら寝てしまうと言うはしゃぎっぷり。回収して縁側のカーテン越しの土鍋に移してもぐっすりお昼寝モードでうんともすんともせず。こういう所がかわいいよなとしばらく眺めた後また分離作業を始めた。
やがて少し涼しくなってきたころ遠藤さんはやってきて
「今日は波板貰って来たからコンポスト造ろうなー。
分離してもらった草をまとめて入れるやつ。そのうち肥料になって畑に漉き込むんだー」
言いながら地面に円を描いてそこに杭を打ち、内側に波板をぐるりと張って俺が分けた雑草をポイポイと投げ込んだ。
落ち葉などもともとまとめていた奴もその中に放り込んで、最後は水道からホースを引っ張ってきて水をかけて
「時間はかかるけどこれだけ雑草があるから肥料は作りたい放題だ」
にかりと笑う満面の笑顔に心の中で問う。
時間がかかるのは判ったがそうなると畑はいつできるのだろうかと疑問を抱きながら本日は終了。
庭改造四日目。
遠藤さんの仕事の終わる時間が近づくころちみっこ達は今日も来るのかなとそわそわしていた。
ちみっこ達の事が視えないし気付きもしない遠藤さんだがちみっこ達的には来るたびに何か庭をいじくる遠藤さんを大層お気に召していた。
「真ー、そろそろ来るかなー?」
「真ー、遠藤さん遅いねー」
「真ー、今日は何をやるのかなー?」
「真ー、またバケツのお山作ってー?」
「真ー、ごはんのスイッチ押さなくていいのー?」
若干待つのに退屈になってかよそ事にそれて行ってしまっているが、いつもより少し遅れて遠藤さんはやって来た。
「遅くなりました!
堆肥を分けてもらってきました!」
ものすごい良い笑顔でやってきて
「すみません。重いのでトラックで畑の方まで行ってもいいですか?」
軽トラの上にはこんもりとした黒い土がのっかっていて、これをバケツリレーなんてした日には明日絶対筋肉痛って言うかぎっくり腰再発だ。絶対避けねばとどうぞ―と言えば運転が上手な遠藤さんはバックをして新しく作ったスロープを避け、家と梅の木の間を潜り抜けてお池にも嵌らず畑の横に止めたかと思えば荷台に乗って
「今日はトラックから降ろすだけにして畑の中に入れておくな」
ほくほく顔で堆肥を降ろしている遠藤さんは嬉しそうに
「これ宮っさん、ええと職場の人に貰ってんですよ。作りすぎて放置してたから持って行っていいよって」
「だったら何かお礼を……」
「そうそう、できたお野菜をお裾分けしてくれればいいからって、ほんと良い人なんだ」
大工の仕事をしているだけあって動きが早くてあっという間にトラックから降ろしてさらに箒で余すことなく畑に入れてくれた。
「明日漉き込みながら畑を耕す予定なので真は無理しなくていいからな!」
そんな笑顔。
「ほんと何から何まですみません」
「気にするなって。それよりそろそろ何育てるか決めたか?」
「えーとですね、運動がてら農協まで行ってきましたが初めてだからさつま芋とかじゃが芋とかそこから始めようかと思いまして」
「いいね!農協においてある野菜なら今植えれば問題ないから他にも気になる奴があったら選んでくると良いよ」
「でしたら遠藤さんも何点か選んでみては?」
そんな提案にきょとんとして
「ええと、畑貸してくれるの?」
「園芸部ですので」
「他人が家の中通っていくの怖くないの?」
「あー、だったら家の裏側通って貰えば。
裏側ならあまり視線が気にならないし、仕事部屋があるから来た時すぐわかるし」
大体実家も前の仕事をしてた時も割と通りから家の中が見えるような造りだったからその辺は案外気にしてなく、でも泥棒除けと言うか泥棒が入りたくならないような気分にするお札をこっそり見えない所に張っていたのでそこまで心配はしてなかったが、そうか。田舎だとそう言うのが気になるのか。
ちょっとしたカルチャーショックを覚えながら
「まだあんまり知り合いも少ないのでこうやって来てもらえる方が俺には安心できますしね」
あいにく俺の家の周囲は畑や空き地で埋められているのでなかなかご近所さんと交流が持てないでいる事をちょっぴり寂しく思っていればなぜか遠藤さんの目が潤んでいた。
「真、今日はいきなりだから無理だと思うけど今度晩飯誘うから。
ついでに工場の人達も紹介するから。
折角遠くから引っ越してきたのに寂しい事言うな?!」
涙は零さなかったけどなぜか俺は遠藤さんに抱きしめられていて
「いいか、真は独りじゃないんだからな!」
かわいそうな子認定されてしまっていた。




