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家賃一万円、庭付き、駐車場付き、付喪神付き?!  作者: 雪那 由多


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雨が降った空を見上げて駆けあがる 2

 緑青と言う付喪神はとにかく気位が高かった。

 見た目からわかるように龍と言う姿形がそうさせるのか、緑青の本体と言うべき香炉が大陸から渡ってきた歴史ある物なのだからかまでは判らない。

 とにかく預けられた五体の付喪神の中で常に一番であることが緑青の矜持であったことは語らずとも見ていればそれだけで十分理解が出来た。

 まず一つ。

 五体の中で唯一持つ飛行能力が順位付けの中で優位に立ったのだろう。

 同じく飛べるはずの飛べないひよこ事朱華と比べればどちらが優雅なのかは考えるまでもない。

 そんなアドバンテージを有効に使って誰よりも何よりも主のお側に真っ先にたどり着く事が出来る。

 それが緑青の自慢だった。

 言い換えればそれだけが緑青の自慢だった。

 

 だけど主に立派な大人になるんだよと出された先の家の住人を幸せにしてあげなさいと言う修行先ではなかなかの困難が待ち構えていた。

 立ち替わりに何人もの住人が入れ替わった。

 幸せにしてあげるどころか一緒に暮らしてくれる人もいなく、時々通りすがりに主が顔を出してくれるぐらい。


「なんとも難しいから修行なんだろ?」


 そう言って主のお家へと連れてくれることはなかったのが寂しかったけど、この家に来て知り合った朱華が緑青たちが来てくれたことで嬉しそうに綺麗な鳴き声を聞かせてくれるし、この家の守り神でもある朱華が歓迎してくれるので主と離れ離れになっても寂しさは十分に紛れていた。

 そんなある日、緑青たちを認識してくれてお話してくれる住人がついにやって来た。


 九条真。

 彼女に振られて会社を辞めた哀れな孤高のボッチ。


 主にそう説明されて今度こそ仲良くなるんだぞーなんていうけどそんな人と仲良くなれるのかな?どうせ気配にびびって逃げ出すんだろうと散々繰り返してきたパターンにそのころには陰ながら支えると言う気はもうなくなっていた。

 出て行くならさっさと出て行ってくれ。

 静かな家でみんなで楽しく過ごせればいいじゃないかと言うくらいにはここでの生活を満喫していた。

 だけどここから先は新しい住人を迎えて大きく変わるのだった。


『こいつらしゃべってるー!!!』


 そんな大絶叫の男、九条真との出会いは主から与えられた修行に十分価値のある日々を迎える事になった。

 主からもし何かしてほしいのなら同じように何かをしてあげなくてはいけない「ぎぶあんどていく」とかいう奉仕の精神を忘れてはいけないと言われた。

 全く意味は分からないけどこの男からご飯を貰ったのだ。

 貰った以上何かお役に立たなくてはいけない。

 みんなと話し合った結果朝ごはんを貰う為にきちんと朝に起きてもらう為に起こす事を使命とする事に決めた。もちろん夜ご飯を貰う為に夜にはきちんと寝てもらうように一緒に添い寝をすればいいよねと言う玄さんの提案にそれは完璧だと全員で賛同するのだった。

 少しずつ(?)なかよくするにあたって真はほんと良い人でご飯も食べさせてくれるしおやつも食べさせてくれる。

 主に貰うごはんやおやつと比べると質素だけど食べさてくれるだけで十分だろう。

 今までこの家に住み着いた人間は緑青達の事を一切見向きもしない酷い人間だったのだからこうやってお茶を淹れてくれたりみんなでお昼寝をしたりという事は一切してくれなかったことを思い出すと真が幸せになる為に緑青たちが頑張る事にふさわしい人間だと、真白、玄、岩、それに朱華までそうだと言ってくれるのだからみんなで真のために頑張ろう!と応援する事に決めたのだった。

 

 だけど真が優しい人間だから。

 緑青達にも優しい人間だから。

 

 主以外誰にも気づかれる事のない緑青達を真剣に大切にしてくれる人間を知らないから大切な我が子のように必死になってくれるのを緑青は不思議に思っていた。


 玄さんがいなくなったと言って一日大慌てで探しに行ったけど玄さんがその気になれば本体に戻ってくるのに。戻ってこなかったらそれは玄さんの意思なのにと慌てる様子が意味わからないけどとりあえず応援しておいてお弁当を楽しんだりお庭で遊んだりしていた。

 多少の物足りなさは感じたけど、本体がすぐそばにあるから心配する必要はないとその必死な様子を上空から眺めていた。

 

 ちゃんと玄さんを見つけてくれた時は驚きと、やっぱり連れて帰ってきてくれたのは素直に嬉しかったけど。

 少しずつ信頼が膨らむ中真がお庭に大きなお池を作ってくれた。

 お水遊びは大好きだから玄さんと一緒に潜ったりして遊んだ後の日光浴はサイコーだった。だから前は遊ぶのに夢中で気づけなかった白い箱に水遊びで少し疲れた体と好奇心で触れれば……


 意識が飛んだ。

 体に残る痛みは主の家の鶏達にヤラレタ時以上の痛みと苦しみだけが残った。

 とにかく痛くて主に助けてと呼んでも本体から動けない緑青はただ内にこもる事しかできなくて……


 あれだけ望んだ主にやっと呼ばればぼろぼろになった真白と何故か神々しいまでの姿に戻った朱華が出迎えてくれた。

 両手を差し出されれば嬉しくて飛びつかないわけにはいかなくて、両腕で緑青をしっかりと抱きしめてくれた主に嬉しさを伝えるように全身を使って喜びを伝えれば恥ずかしがり屋さんの主はすぐに緑青を小さい無力な姿に変えてしまった。


 緑青知ってるよ?

 主って小さい子が好きだって。


 恥ずかしがり屋の主に言うと全力で違うって言うから言わないけどね。


 気が付けばなんか真が大ピンチだったみたいだけど主の家にも来た見覚えのある眼鏡とか酷い料理を作る人が来て一生懸命お仕事していたからお邪魔しないようにしていれば主の家にお泊り会と言う久しぶりのふるさと(?)の里帰りに目いっぱい主に甘えれることが出来て気が付いた。

 

 朱華を始め玄さんと岩さん、そして真白の神格が緑青より上がっていた……


 朱華は黒い奴らを追い払ったと言う理由は判ったし、玄さんも仲間を増やして泳げるようになったからかな?もともと一つの個体の岩さんも一緒に成長してたし、真白は主の家までいろいろな方の力を借りて主の家までたどり着いて緑青達がお世話をしている真を助けた事が神格が上がった理由だと想像はついた。


 いつも一番だと思っていた緑青がいつの間にかドべになっていた……


 砕け散ったプライドは誰にも言えなかったけど、時々顔を合わす真のお兄さんに打ち明けることが出来た。


「緑青だって頑張ってるの。

 主の修行だって一生懸命にしてるのに、真のお世話も頑張ってるのに緑青だけが何も変わらないの」

 

 めそめそと涙をこぼしながら家の裏の雑草を引っこ抜く真のお兄さんに打ち明ければ


「だったら少し真のお兄ちゃんのお家に修業に来ない?

 お兄ちゃんのお家の近くにもいっぱい付喪神様がいるからどうすれば主に褒めてもらえるか教えてもらえるよ?」


 そんな嬉しいアドバイス。


「ほんと?!」

「きっと緑青が一生懸命なら教えてもらえるよ」

「だったら緑青行く!」

「じゃあ、主や真に立派な姿になって驚かせて喜んでもらうようにこっそり行こうか?」

「行くー!」

「何かあった時の為に本体も持って行かないとな?」

「床の間の香炉が緑青だよ!」


 嫉妬にまみれて焦っていた緑青は気づかなかった。

 真の優しいお兄さんだからと言う安心に陽気な笑顔に宿る宿った昏く染まった闇をひた隠す瞳を……




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