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家賃一万円、庭付き、駐車場付き、付喪神付き?!  作者: 雪那 由多


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神降臨! 3

 仕事が終わったのを見て今は何もできないと言うように放心していた。

「終わった……」

 終わったんだ。

 どう考えても終わるわけのなかった仕事を4人の応援が来てくれただけで完璧に終了したんだ……

 四人でも無理だったはずなのに何とかプログラムは完成したんだ……

 出荷状態のパソコンを見てどれだけ絶望したか言葉では言い表せれないが、ほっとした瞬間涙があふれ出て、水野さんが黙ってそっとティッシュの箱を差し出してくれた。

「ありがとうございます」

 なんて溢れ出た涙と鼻水も綺麗にふき取れば

『厳密に言うとこれをもって向こうの会社のシステムに食い込ませて管理の指導をするまでが仕事だろう。終わった気になるな』

 泣くにはまだ早いと言うように現実を教えてくれてまた涙が出てきて、再度そっとティッシュで拭った所で気が付いた。

 ああ、このためのティッシュだったのかと先ほどから背中を向けて目を合わせてくれない水野さんもきっとこういう事を経験してからの優しさなのだろうと気付けば先輩たちが不憫すぎてさらに涙が出てきた。

 火曜日の日付が変わる頃になって完成して今、大家さんのチェックを終えた所。

 タブレット越しのやり取りは淡々と進んでいく。

『基本は説明しやすい使い慣れてるだろうお前が居た会社のシステムをベースにしてある。

 今度の会社はもともとカードキーで部屋の出入りをしていた所をハンドレスにしただけだからそこまで大きな変更はない。

 ただ、入退室の履歴がこれからはきちんと残るからカードを借りての入室は出来なくなる。もちろん誰かのカードでついでに入室したと言う履歴ではなく入った人の数だけ残るから悪いことは出来なくなる』

「会議室や資料室でさぼることが出来ないって事ですね」

『監視社会のいやな所だ。ちなみにトイレの利用回数とかまでカウントされるからそういったデリケートな部分は向こうと話し合いを重ねるように』

 そんな細かな説明を聞いていれば

「綾っち、トイレにもシステム付けるの?」

 先輩の素朴な質問に

『犯罪性の高さもトイレと言う場所は上位ランキング入りをしている。

 もちろん会社の屋上も出入りをカウントするし、更衣室も監視対象だ。

 個人的ロッカーまではさすがに対象外だがそれだけ真剣に取り組もうとしているのなら応えるのも腕の見せ所だろ?』

 言いながら誰かがあくびをこぼせば誰ともなくあくびを落とす。

『とりあえず今は一回寝るから。昼にはいくからそれまで一度寝て頭をリセットしておけ。もう一度詰めて話をするぞ』

「はい」

「綾っちも無理したんだからしっかり休んでね」

『うん。寝る』

 それがスイッチと言うようにタブレットからログアウトして途端に静かな部屋の中には麓の家に行くのも面倒だからと麓の家から布団を借りてきたと言う植田先輩はロフトを使って下さいと言ったのに居間の適当な所に布団を敷いてお休みと俺に電気は消してくれとここではもう仕事が出来ない事が決定した。

 並んで敷かれた布団に水野さんも潜り込んですぐに寝てしまう様子に今日は俺も素直に寝る事にしようと電気を消して寝室のベッドにもぐりこんだ一瞬で意識を飛ばした。






 不意に聞こえた賑やかな声。

 どこか甲高い子供の声とピタピタと顔をくすぐるどこか冷たい体温に目が覚めて行けば


「真起きたー?」

「真まだ眠そうだねー」

「真あったかくて気持ちいいねー」

「真よだれのあとがついてるよー?」

「真目が覚めたらご飯の時間だよー?」


 何でも一番乗りが好きな緑青から始まって大体最後は腹ペコ朱華のささやかな催促に苦笑が落ちる。

 久しぶりに戻った日常だ。


「みんな久しぶり。

 みんなの事のお世話役なのに大家さんの所にあずかってもらう事になってごめんね」

 何が情けないってこのちみっこ達のお世話を買ってでたのに、彼らが付喪神と言う意識体だから耐えれたけどただの小さな生き物だったとしたら目も当てられない事になっていただろう。

「ひどいお世話係でごめんね」

 素直に謝罪をすればトトト……ベッドに座り直した俺の肩まで真白が昇ってきて

「主が言ってたよー。誰だって失敗はするって。

 だから失敗しないように頑張るんだって。

 真はその頑張ってる途中だからこれから何度だって失敗するけど真白達で同じ失敗をしないように注意してあげてって言ってくれたよ」

「だからねー、玄もねー、真が同じ失敗しないようにちゃーんと見ててあげるねー」

「岩も見てるよー」

「みんなありがとう」

 言えば朱華も緑青も俺の肩までよじのぼってきて、この愛くるしい付喪神との共同生活がこんなにも心癒されるなんてと感動してしまう。


 だけど感動と言うものはそこまでだった。


「じゃあ、真も目が覚めたからごはんにしよー! 

 主があの方のお弁当沢山運んでくれたからみんなで食べよー!」

 

 待ちきれないと言うように俺の肩からぴょんと飛び降りた朱華は懸命に羽をパタパタと動かしながら……


 床に着地?

 ちなみに朱華はまだ飛んでいると言うように懸命に羽を羽ばたかせていた。


「な、どうして?」


 大家さんに連れていかれたころは頼りない低空飛行ながらでもきちんと飛べていたのにと思えば

「玄理由知ってるー」

「え?なにかあったの?」

 どういう事と言うように聞けば


「主の所でたくさんいろいろなものを食べさせてもらってねー。

 朱華ねー、太ったんだよー」

「飛べなくなるくらいにねー」


 玄さんと岩さんの容赦ない言葉を認めないと言うように朱華は羽をばたつかせるも浮く事はなく……


「朱華はお空を飛べるんだもん!」


 なんとも言えない悲痛な叫びになんて返せばいいか分からないけど

「とりあえず運動をしてご飯の量はきちんと守ろうね?」

 そんなごく普通のアドバイスをすればぶわっと涙があふれ出して

「あの方のご飯を食べれない生涯なんて生きてる意味がないじゃないか!」

 そんな血を吐くような叫びにどういう事だと思うも

「おー、九条起きれたか。今ちび共に起こしに行かせたけど……

 朱華は何をやってるんだ……」

 大体何があったか分かったと言うような大家さんだけど

「食べ過ぎて飛べなくなって……」

「これを自業自得と言う。

 まあ、そんな事よりみんな待ってるから顔洗ってはよこい。

 ちび達の分はちゃんと取り分けてあるからばれないように食べろよ」

 そんな大家さんの言葉に


「わーい!朱華ねー、おまめさんのご飯好きなんだー!

 真ー、おまめさんふっくらしてて美味しいんだよー!」


 さっきまで自分のふがいなさに泣いていたのにもう笑顔で駆けて行った様子を見てダイエットは当分無理な事をなんとなく理解して、そんな朱華の現金な様子に俺と大家さんはどうしたものかとため息をこぼすのだった。








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