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家賃一万円、庭付き、駐車場付き、付喪神付き?!  作者: 雪那 由多


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先輩と一緒 1

 気が付けばどっぷりと日が暮れて外は真っ暗だった。

 アイヴィーさんはいつの間にかお仕事の為にログアウトしていたし、水野さんはリモート会議で一瞬だけ実家に帰っていると言う。

 そういや先輩も水野さんもこの街の出身なんだっけ。

 小学生の時からの幼馴染だなんて仲良しだなあ……

 社会人になって東京に出てきて以来実家に居た時の友達と直接会う事がなくなったので少しだけ今も続くその関係性を羨ましく思いながらも

 

 くうううぅぅぅ……


 腹は減る。

 盛大に腹の音を鳴らしてしまえば隣にいた先輩の手も止まる。

「真、なかなかナイスなタイミングだな」

 半眼の先輩がくるりと振り向けばその瞬間


 くうううぅぅぅ……


 俺と同じように腹を鳴らしてくれた。

 ちょっと恥ずかしくて二人で顔を赤くしながら笑ってしまえばそういや食べるものあったっけと考えてここ数日まともな生活をしていなかったから食べるもの無かった事に気付いて

「あの、食べるものがないのでどこか食べに行きませんか?もちろん俺が支払わせていただきま……」

 なんて最後まで言わせてもらう前に先輩の手が肩に置かれた。

「あのな真よ、この田舎にこんな時間開いてる店はないんだよ」

 いや、観光地なんだからあるだろ普通……

 そう突っ込みたかったが

「どの店も閉まる時間が早くってそろそろラストオーダーの時間だ」

 そう言ってため息をこぼす。

「だったら、コンビニ行ってなんか買ってきます」

 驚いたことにこの地域のコンビニは24時間営業じゃない。坂を下った先にあるコンビニならまだ間に合うと言うように言えば

「今綾っちが食料調達に行ってくれてるから火でも熾しておこうか」

「火?」

 何をと聞き直したかったけどよくよく見れば大家さんもいない。

 いつの間に居なくなったのか、それよりもどれだけ集中してたのか自分でも驚いてしまったが

「とりあえず外の倉庫にいろいろあるって言ってたから少し休憩がてら手伝え」

 指先でちょいと外に行こうと言うハンドサイン。

 そして外に出ればいつの間にかちみっこの姿もどこにもなく、再度の失態に大家さんに連絡を入れようとすれば


『集中しているようだったから声はかけなかったけど一度ちび共連れて飯を食べさせてくるから』

 

 そんなメッセージが残されていた。

 時間にして20分前ほど。

 どれだけ気付いてなかったんだよなんて頭を抱える間に祐樹先輩はあまり中を見た事のなかった外にある倉庫を漁って


「えー、これ運べって言うの?」


 ずるずると引きずって取り出してきたものは

「U字溝?」

「自宅バーベキューの必須アイテムだね」

「必須アイテムですか?」

 バーベキューコンロじゃないんだと言う驚きもあったが

「これだと大人数でも対応できるからな」

 なんて必死で運ぶ姿が申し訳なく、俺もすぐさま手伝わせてもらった。

 今日は雨も降りそうもない天気なので庭の真ん中に置くように指示された場所まで運べば

「いい感じの使い古した金網と炭も発見したぞー」

 どこで見つけてきたのか一輪車に乗せて炭や金網、バーベキュー用トングも持ち出してきた。

「前の住人が残していったものがあるって聞いていたけどなかなか楽しんでいたんだな。あ、炭も備長炭使ってるなんて贅沢だー」

 なんてウキウキしながら古い金網をU字溝に無理やり押し込んで使い古した炭を乗せていく。

 ガスボンベにバーナーを付けたもので火を着けようとするけどすぐにはつかず、なんかガスがもったいないなと思っている合間に炭に火が着くけどすぐに消えていく。それを見て

「真、悪いけど代わって」

 なんてガスバーナーを渡されたので先輩の見よう見まねで炭に火を着けていればその間に家の中からドライヤーを発掘してきた先輩は延長コードを駆使して庭まで持って来て

「ほい、代わるぞ」

 そういって炭にほんのりと火が着いた場所に向かってドライヤーを当てていた。

 いや、たしかに理にかなった方法だけど。

 一瞬にして気持ちよく火の勢いが増して着火した事に驚くも先輩は当たり前のようにドライヤーをもとの所に片づけに行った。

「えー?バーベキューってこんな感じだったっけ?」

 炭に火を熾す手順はわかってはいたがさすがにドライヤーはないだろうと自分の知識を疑ってしまう。

「んー?バーベキューってこんな感じだろ?」

 逆に先輩は疑問を何一つ覚えることなく新しい炭に火を回すように積んでいく。

「ひょっとして真はバーベキュー初めてとか?」

「大学時代に友人と何度か。火を着けるのにものすごく苦労しましたね」

 言えば笑う先輩も

「そういや真が入社する前に一度社員旅行でバーベキューしにキャンプに行ったんだけど、その時も火が着かなくって大騒ぎでさ」

「うちの会社そんな事してたんですね」

「まあ、その年の流行りでもあったしね。

 女子社員はみんなSNS映え目指して準備を手伝うそぶりはなかったし、うちの会社基本インドア派ばかりだろ?」

 言われればそうだなとどちらかと言えば俺もインドア派なので頷いてしまえば

「アウトドアのバーベキューなんてほとんど家族でやってみた程度の経験値しかなくってさ、その企画書を貰った瞬間俺は悟ったよ。ハンド扇風機必須だって」

 けらけらと笑う様子にハンド扇風機の役割を理解した。

「準備がいいと言うか……」

「あってもなくっても問題ないものだからな。備えあれば患いなしって教え込まれたことを実践しただけだよ」

 誰に、とはこの場では聞くのも野暮だ。

「炭って簡単に火がつかないことをその時知りました。

 頑張って枯れ枝とか枯草集めて一生懸命燃やして火を移してやっと準備できた時の達成感は半端なかったのに……」

「上級者になると如何に手間をかけないかがポイントになるよな」

 なんて笑う先輩だけど、だからか会社でも要領よく立ち回っているのはたんに経験値の違いだという事を理解すれば

「俺、この仕事が終わったら快適にバーベキューを楽しめるように頑張ります!」

「頑張りどころが違うって」

 お前は相変わらずどこかずれているなと優し気に笑う兄貴のような存在の先輩はそれでもバーベキューに必要なアイテムを教えてくれた。




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