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家賃一万円、庭付き、駐車場付き、付喪神付き?!  作者: 雪那 由多


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一人で歯を食いしばっていたつもりでも気が付けばたくさんの人に支えられている事を気付くのはいつも事が終わってから 4

 真白のお話を黙って聞いてくれた主はすぐにお出かけの準備をしてくれた。

 上手に説明が出来たか自信はなかった真白だけどこうやってすぐに

「九条の所に行くぞ」

 こう言ってくれたということは真がピンチって言うのはわかってくれたみたいで嬉しくて涙が出そうだ。

 ちょっと大きめの荷物と冷蔵庫からご飯を持ち出し、ここまで連れてきてくれた犬さんも一緒に車に乗って送り届けてくれた。

「あずきもありがとうなー。ずいぶんおばあちゃんになってあまり散歩も遠出しなくなったって聞いてたのに真白を連れて来てくれてほんと助かったよ」

 車を運転しながら後ろの椅子に座って窓の外を眺めていたあずきおばあちゃんは嬉しそうに「わふっ!」と一声吠えてしっぽをふりふりと振り回していた。

「主ー、あずきおばあちゃんはご主人様のお役に立ててうれしいってー」

 あずきおばあちゃんの言葉を主に伝えれば主は嬉しそうな声で

「俺も嬉しいぞー。だけど宮下のおばさんを心配させちゃだめだぞー」

「わふっ」

「主ー『はい』だって」

「真白はすごいなー。リアルバウリンガルは優秀だな」

「えへへー、主に褒められた」

 嬉しさが勝ってパーカーの帽子の所に居た真白はぴょんと飛び跳ねてあずきの胸元に飛び込んでくるりと丸まって甘えていた。

 だけどそれも短い時間。

 宮ちゃんのお店の所まで来たら車を止めてあずきに首輪をつけ直せば

「あら綾人君こんな時間にどうしたの?」

「おばさんこんばんは。あずきがうちにまで散歩に来てたから俺も散歩に行くついでにあずきをお家まで送り届けに」

「あらあら、珍しい事」

 そういってあずきに手を伸ばせば逆らってはいけない相手と言うようにすり寄って甘えるしぐさをするあずきにおばさんは仕方がないわねと首元をなでながら勝手にお出かけしちゃだめよとたしなめるだけ。

 そんな様子を見て大丈夫だなと思えば

「じゃあ、少しドライブしてきますので」

「夜道には気を付けるのよ」

 明かりが少ないから、なんて余計な事は誰も気にしない田舎道を心配してくれるお見送りの言葉に適当な愛想笑いで返した後、主はゆっくりと車を走らせた後、大きな村道に出た瞬間スピードを上げた。

 普段はのんびりと車を運転していたから車がこんなスピードを出す事を知らない真白は怖くなってすぐに主の懐に潜り込んだけどシートベルトが邪魔をして全然懐に潜れなくって、怖いながらも胸元にしがみ付きながら目をつむっていれば車が止まった。

「真白、ついたぞ」

 そういっていつの間にかおなかのあたりまで潜り汲んでいた真白を背中へとちょこんと乗せ直して取り出した鍵を使って真の家へと入った。

「九条生きてるかー?」

 主はかっこよく真の家に入ったけど真白は知っている。

「主、これ、不法侵入って言うんでしょ!」

 テレビでやってたという事を言えば少しだけ視線を遠くへと投げた主だけど

「これは大家として家を貸した人が無事かどうかの確認作業なので不法侵入とは言わないのです」

「主すごいねー!難しい事知ってるんだねー!」

 手放しで褒め称える使役の様子に少しだけ罪悪感を覚える大家だったが一歩家の中に入ってその顔を歪めた。


 散乱した室内。

 据えた匂いが充満している。

 さらには室内は明かりが何一つついていないのにカタカタと言うもの音だけが響いていた。


 ホラーだ。

 ここはどんな事故現場の事故物件だ?

 頭が痛くなるのは当然だと言うようにどうせすぐに会話なんて成立しそうもない家主を無視して大家はひときわ立派な床の間を飾る客間の欄間へと足を運んだ。

「ひよこ、出ておいで」

 なんて手をさし伸ばしても全く姿を現さない様子にため息をつき

「朱華、出てこい」

 少し強めに言った言葉に欄間の鳥の目がきょろりと動いて、鳥の姿がゆらりと揺らめいたと思えばそこから尾羽が立派な真っ赤な鳥が姿を現し、伸ばした腕に音もなく止まるのだった。

「こら、朱華がこの家を守るのだろ?」

 ゆっくりと首をめぐらした朱華はこの家の悲惨な状態を見てぽろぽろと涙を流す。

 これは重傷だなと溜息を吐きながら朱華を肩に乗せ換えて今度は龍の香炉の前まで来た。

 耳をすませば「痛いよー、怖いよー」と繰り返す泣き声によほど今まで体験した事のないくらいの思いをしたのだろう。

 姿から見ての通り最大限の最弱化をさせてしまった主として香炉と言う本体に強制的に戻ってしまうくらいのダメージは想像もつかない。だけど真白曰その事件が起きてからもう何日も過ぎているのだ。それでも本体に引きこもってるのは相当だろうという事は想像つくも、だからと言っていつまでもそんなところでうじうじと泣かせているほどやさしい主ではない。

 龍の香炉を手に取り庭に続く扉を開けて縁側へと座る。その隣に香炉を置いて

「緑青、出てこい」

 声が聞こえてなくても強制的に呼び出す。

 こういったことはラノベ知識しか知らない主だが大体何とかなると言う謎の根拠は全く興味がないからと言うのは誰にも言った事はない。でもいつか役に立つ知識として記憶の片隅に留めておいたことを実践すれば香炉から光が走って、目の前の大空に走った光がうねって形になった。

「あ、主……」

 よく聞きなれた声とはかなり変わってしまったもののその声も聞き覚えはちゃんとある。

「やっと顔を出したか緑青」

 言えば、泣きはらしていたと言うように真っ赤になった目からこれまた見た事のないバケツをひっくり返したような大粒の涙をボトボトと落としながら

「主ー!」

 胸元に飛び込んでくる巨体の緑青を受け止めるべきかどうするべきかとっさに悩んだ末にさっと身をかわして横からその体を掴んで

「甘えん坊だなあ」

 なんて言う言葉とは裏腹にあの巨体を正面から受け止めたらどうなっていたかと言う計算するまでもない結果に冷や汗が止まらなかったけど、それでもこの結果に緑青はいたく満足してくれて、俺に甘えるようにくるりと巻き付いてきた。

 だめだ。

 このままだときゅっと〆られてしまう。

 とりあえずかなり心に恐怖のダメージを負った緑青を傷つけずに

「さび、主にも抱っこさせてくれ」

 いえばポンと小さな音を立てるかのようにして次の瞬間にはいつも見慣れた小さなさびが目の前をぱたぱたと飛んできて俺の胸元へと飛び込んできた。

 うん。

 今回はちゃんと受け止めれるぞと自信をもって抱きしめて受け止めた。

「主―、怖かったのー。びりびりしてすっごく痛くってすっごく熱くって!」

 思い出しては泣き叫ぶさびに

「だけどけがとかはなくって良かったな?怖かったけどさびが無事な姿を見れて主は安心したぞー」

 言えばさびは自分の体を確認して

「ほんとだー、どこもケガしてなかったー」

「緑青良かったねー!」

 ちょろちょろとした駆け足でさびを抱く腕に真白もやってきて久しぶりの緑青を確かめるように、嬉しさを表すように真白は


「おかえりー!」


全力で緑青をぺろぺろと舐めまくるのだった。





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