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先輩の導くままに 2

 田舎の古民家と言えばジャングルの様な雑草が行く手を阻むって言うのが常識(?)なのに今日から入居という事で家の周辺の雑草を刈り取ってくれたらしい。

 切りそろえられたばかりの綺麗な広い庭、庭木も手入れしてくれたのか伸び切った枝を打ち落としてくれたばかりのようで断面はまだ新しい。

 古木となった二本の梅の木はヤドリギとなって何かの植物が生えているくらいの年季が入っている。

 赤と白だろうか。

 まだまだ固いつぼみからうっすらと覗く淡い色合いに花が咲く日を楽しみにしながら玄関を開けた。


 もわん……


 なんて篭った空気は感じない。

 換気をしっかりしてくれていたんだと受け渡し直前まできちんと手入れしてくれた大家さんには感謝が止まらない。

 そして綺麗に掃除された玄関はもちろん、室内も整えられていて感謝をしてしまう。

 即日入居OK、現状渡しとなっていた為にどんなものだろうと不安はあったが、これだけ綺麗にして貰えれば文句はない。

 多少の残置物はあるけどキレイな新品のトイレ、新品のユニットバス、新しい換気扇の台所。


「これで家賃十万円とは格安すぎだろう!」


 購入と言う選択もあったが、さすがにここまでリノべーションした物件はン千万を軽く超えたものとなり、賃貸としてお借りする事になった。

 元が築二百年近くある古民家だとしてもフルリフォームで手入れをしっかりしていただいた新築同然の綺麗な土壁やフローリング、梁の走る天井もあるから文句なしだ。

「いい大家さんに巡り合えたな」

 なんて動画ではわからない室内の様子を見る。

 古い家によくある田の字型の間取り、広い縁側、急な階段を上った先の天井の低い屋根裏部屋はロフト使用になっていて、梁を眼下に広間が見える室内窓もついていた。

 柱も太くほんと良い家だと思いながら古い家なら必ずある美しい欄間で区切られた客間へと向かえば一瞬呼吸を止めてしまう。

 撤去されたとはいえ

「やっぱり仏間なんだよな」

 綺麗な床の間に作り替えられているけどしみついた気配は早々簡単には落とされていない。なんとなく視線を感じてしまうのはこの家にかつて人が住んでいたという証拠だからだろうか。やがて気配は薄くなっていくのだろうけど、それを待つことなく台所に行って置いていかれた食器棚に入っていたコップを綺麗に洗い、お水を入れて仏壇があった場所に置く。

 この街に入ってすぐに見かけた和菓子屋さんの栗饅頭も添えて何もなかった仏間だった所に供え


「挨拶が遅れましたが、これからよろしくお願いします」


 誰も何もない場所だけど手を合わせてご挨拶をする。

 ふっと軽くなったような気配になんだか呼吸も楽になり、受け入れてもらえたことを理解すればさてと気合を入れて立ち上がる。

「まずはごあいさつ代わりに掃除をして……」

 もう少しすればやってくる宅配便の荷物を受け取ってガスを開くのを立ち会えば引っ越しは完璧だと背伸びをするのだった。

 それまでに車に詰め込んできた荷物を下ろす。

 貴重品はもちろんだが掃除道具や前のアパートで使っていた使いかけの食料品を台所のテーブルに並べておく。

 家電製品はないものの、作りのしっかりとしたテーブルと椅子のセットは一人暮らしにしては大きいけどありがたい。

 対面キッチンではなく窓から外に向かってのシステムキッチンと言うスタイルに年季を感じているけど新品のピカピカで築百数十年と言う年季は感じる事はない。それどころか窓から見えるところに小さな花壇があり、毎日ここに立つ奥様を慰めるような名前の知らない花達が咲き誇っていた。

 使い勝手がよさそうなシステムキッチンに

「前のアパートって狭かったからこういった余裕のある台所ってあこがれるんだよな」

 たとえ一人暮らしには大きすぎるとしてもだ。

 直前まで使っていた為に梱包するのを忘れた電気ケトルでお湯をわかしてお茶のティーパックでお茶を用意する。

 もちろんここに来る途中に寄った和菓子屋さんのそば饅頭を頂く。

 そばの産地でもあるのかお蕎麦屋さんもよく見かけるのもあり

「せっかくこんな大きなキッチンがあるのなら自分でお蕎麦を打ってみたいな」

 古い町なので蕎麦打ちの体験もできるお蕎麦屋さんもあり今度そこに行ってみようと新しい土地に浮ついて今までやった事のない好奇心を刺激してしまう。


「早くなじめると良いな」

 

お茶と饅頭を持って整えられすぎた庭を眺める縁側に移動してまったりとしていればやがてやって来たトラックの音に新しい生活が始まる期待に胸を躍らせた。





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