ご近所さんと遭遇してみる? 1
正直人間苦手なものは必ずあると思う。
ちょっと特異体質だったためにグロ耐性は十分についてホラー映画なんて日常過ぎて面白くもないまでは言わないけど、さすがに二十五年経験し続ければ大丈夫なのとそうでないのは見分けがつく程度に経験値は積んできた。
勉強面では兄貴のおかげで苦をすることなく大学に行けた当たりひょっとして兄貴もまじめに勉強すれば家を継ぐ以外の選択十分ありじゃない?なんて実際兄貴にも言ってみたが
「そうなると今度は真が家の後継ぎになって本家の暁さんが……って比べられる事になるよ?
俺は慣れっこで耐性が出来ているけど真はそうじゃないだろ?」
俺をかばっていると言う事実にそんなことを言う周囲に怒りにも似た感情が沸いたけどすぐに打ち消した。
何も考えていない俺と両親との板挟みになっていた事を思えば甘えていた自分を殴りつけてやりたくもなった。
「でもいい事もある。
勉強なんてしなくても就職確定、将来安定!嫁さんもそのうち親が見繕ってくるから適当に結婚して適当に離婚すれば義理は達成だ」
結構なクズだった事には呆れたけど。
そんな感じで家を出るまで比べる相手が間違っているとはいえ俺は割と自由に過ごし、就職と共に家を出た後は年末年始しか顔を出さないようにしていたので父さんの野心が育っている事には気づいてなかったが。
まあ、親父の事はともかく俺はその苦手なものと戦っている。
「なんで長さが足りねーんだよ!!!」
玄さんと朱華の為に縁側から降りられるスロープを付けようと一大決心したのに上手く作れないとはこれ如何に。
「真ー、横の柵の長さが足りないよー?」
「真ー、この急斜面だと玄上れないよー?」
なぜか窓が閉まっていても出入り可能な付喪神なのに段差は越えられないと言う謎の仕様に滑り台ではなく自力で登り降りできるスロープを作ろうという事になった。
もちろん美術はそれなりに点を取ったけど実技が全くダメだった俺は今こうやって苦戦している。絵を描く分には問題なかったのだが、それが三次元になると点でダメだった残念な欠点だ。
もうね、しっかり計って準備を整えていたのにもかかわらず設計通りに作れないってどういう事なんだと教師ですら頭を抱える始末。
俺の三大ミステリーと名付けて学校卒業すれば作る事なんてないだろうしと放っておいたのがそもそもの間違えでした。
「じゃあ、もっと板を繋げて、この際だから横の柵はない方がいいな。
玄も朱華も落ちないように真ん中を歩くようにしろよ。とりあえずもう一枚の板を繋げて……」
「わーい!滑り台だー!」
べきっ!
「……」
「真ー、板が割れちゃった……」
「真ー、真白が板を割っちゃったよ……」
「真ー、壊しちゃってごめんなさい……」
これでお庭からお家に出入り自由になると思っていた朱華と玄の膨らむ期待が壊れてしまったのと真白の全くの悪気のなさからの朱華と玄の泣き顔を見ての大反省に三体揃って涙をこらえながら鼻をすすると言ういじらしい姿に俺が見向きもしなかった事へ猛反省していた。
なんせ朱華達自力で家に帰れないちみっこ達はお家に帰りたい一心で頑張るものの帰れなくて縁側の下でしくしく泣きながらそのうち疲れて本体に戻ると言う生活だったらしい。
もちろんその間にネズミに襲われたりネコに追いかけられたりそんなサバイバルもついてくるのだ。
お家に出入りができるスロープがどれだけ心待ちにしていたものか言うまでもない。
ちなみに玄関や勝手口からも侵入を試みたのだが古い家特有の段差を越えられないのでどうあがいても主が用意してくれた寝床に帰れないのが悲しくて仕方がないと言う。
「玄も朱華も真白もごめんな。
俺こういう工作って苦手でダメダメなんだ。
今度もう一回勉強してくるからもうちょっと待っててな?」
うるうると涙が今にもこぼれ落ちそうな三体にヒシっとしがみ付かれれば今度こそと頑張ろうと気合を入れた。
とはいえ、設計図通りにまで準備してもなぜか完成しない工作にこれは誰かに頼んだ方がいいのかと思えば
「おにーさん、大丈夫っすか?」
妙に軽いノリの声が耳に届いた。
視線を向ければ大きなつばの麦わら帽子にクーラーボックスを肩にかけて手には草刈り機を持っていた男性が立っていた。
とりあえずご近所さんだからと会釈をして
「大丈夫じゃないかも。なんか設計図通りにできなくって」
ひらひらと設計図を振りながら返事をすれば軽いノリの人は気軽にやってきて
「見せてもらってもいいっすか?」
「素人が作ったものなのでお恥ずかしい限りですが」
本当に恥ずかしいと項垂れてしまえば
「ちょっと失礼しますね」
そういって数十分。
真白に壊されたスロープを直して、歪で途中で足りなくなってしまった柵を切り落とした板で代用したりしながらなんとか設計図通りのスロープを作ってくれたのだった。
この人には当然真白達の事は視えてないので喜ぶ真白達にじゃれつかれても全く気にしないと言うように作業を続けてあっという間に設置までしてくれた。
「こんな感じっすか?」
「はい、ありがとうございます!」
思わず握手。
だけどその人は少し困り気味な顔をしていたものの
「ここは雨が当たるから耐水スプレーとかかけて木が腐らないように気を付けてくださいね」
そう言って屋根を見上げれば着地地点が見事軒先からはみ出ていた。
こういった事も計算しないといけなかったかと玄さんと朱華が昇れる角度だけを計算した自分が恥ずかしく思うも俺が工作が苦手だと見抜いた通りすがりの人は苦笑しながら
「俺、遠藤って言います。町の工務店で働いてますのでよかったらまた相談に来てください」
そういって名刺を渡してくれて、じゃあといいながら草刈り機とクーラーボックスを片手に家の前の道路を上って行った。




