付喪神との付き合い方には初心者マークを掲げます
兄貴も帰ってまた静かな日常に戻った。
ガタンっ!
いえ、全然静かになっていません。
「何があったの?!」
なかなかの物音にこの部屋だけは絶対入るなと言い含めている仕事部屋から慌てて飛び出せば
「「「「……」」」」」」
俺の顔を見てさっと視線をそらせたちみっこ達に何をやったのかなんて今さら聞く理由はない。
ころころと転がるバランスボールに本来なら本棚に収められている本が床に散乱しているのを見れば聞くまでもないだろう。
「あのねー、真白がボールの上に乗って遊んでいたら岩さんの上を通過し、驚いた所で飛び上がったら朱華がいる本棚とゴチンコしちゃって、朱華も驚いて慌てて飛び出したら本が落ちちゃって、緑青が本の下敷きになっちゃったの。玄は日向ぼっこして見てたんだよー」
「ろくしょー!!!」
慌てて崩れ落ちた本の山をかき分ければ目を回している緑青を発掘して大好きな主が用意した鍋へと連れて行った。
「うーん……」」
なんてうなりながら目を回してる緑青の痛々しさに
「どうしよう、動物病院でいいのかな?兄貴に……って、実家は危険だ。大家さんに聞いてみよう」
なんてスマホをポチポチ。
祈る気持ちで変身を待っていれば既読がすぐについたのでほっとする。
そしてすぐに返事が戻ってきた。
『こいつらの本体は別にあるのだからそこまで心配する事はない。そんなのはうちではしょっちゅうだ。もし気になるのだったら香炉の中に突っ込んでおけば大体問題ない』
「いや、問題しかないだろ……」
大家大丈夫かと思いながらも数少ないアドバイスにそっと緑青を掬い取って香炉の中へとそっと横たえさせれば一瞬目が開いたかと思ったとたんすっと香炉に溶けるかのように姿が重なって消えていった。
「は?緑青ーっ?!」
まさか消えてしまうとは思わなく叫び声をあげながらまた大家さんにメッセージをポチポチと打つ。
『あいつらは付喪神なんだ。本体に帰っただけだから心配する必要があるわけないだろ』
そのうち何でもない顔をして他の奴らと遊んでいるぞと言うあきれ返った文面に俺はそっと追加の一文を書き加える。
「付喪神なんて初めてお目にかかります。全くの初心者なのでぜひともご教授お願い致します」
なんてお願いをする形で教えを請えばそこは大家と言うべきか
『詳しい人を紹介するからそっちから学んでくれ』
なんて、らしいって言ったららしいのだろうが適当だなあと半分呆れてしまうもすぐに知らない人から友達申請が届いた。
「いや、申請できない設定にしてあるのに」
なんで?と思う合間に大家さんからまたメッセージ。
『とりあえずつっきーって言うんだけど、こういった相談ごとに乗ってるから安心して相談しろ。つっきーもちび達の事知ってるから大丈夫だし、あいつも忙しいから。そろそろ申請届いているはずだから承認頼むな』
なんてすごく適当な文面を途方に暮れながらしばし眺めながらも他に頼れる相手は今はいないからと承認すれば
『つっきーでーっす。ちびーずのご相談は何でしょう?』
ブロックしたくなるようなかなりむりのある文面にイラッとしてしまう。
いや、がまん、がまん。
あの大家の知り合いだと思えばなんとなくイラっとした気分が半減した。
それから挨拶と状況を説明すれば
『うん。その状態でいいよ。
今はびっくりして姿を維持できなくっているだけだから。
むしろ安心してる状態だからまた元気になったら顔を出してくれるよ』
なんだろう。
大家と言ってる事は同じはずなのになんでこうも安心感があるのだろう。
ほっとして涙が出てくれば電話の向こう側で「驚いたよね」と俺を気にかける言葉までかけてくれた。
「ありがとうございます」
って言う感謝の言葉がやっとな俺とは別にくすくすと笑うつっきーに思わずぼやいてしまう。
「大家さんがすごく適当な人なので本当に大丈夫か心配で……」
チーンとティッシュで鼻をかんで心の内を明かせば
『まあな。あいつ自分の興味あること以外は適当だから』
どうやらつっきーも苦労しているようだ。
「でもまあ、一応俺を頼ってくれた程度にはちびーずを心配しているから」
どこかそこは信頼のある力強い確信にそうは見えないんだけどとは言えなかった。
『それに内緒だけどあいつな……』
そういって大家さんの秘密を教えてくれた。
つっきーが言う通りしばらくしたら緑青は朝ごはんの時間にちゃっかりと混ざっていて朱華のミニトマトを取り合っていた。
食卓は相変わらず悲惨を極めた状況だが慣れればこんなのは掃除すればいいだけだと開き直ることが出来た。
だけど以外と言うか
『あいつな小さい奴らにはすごく親切なんだよ』
なんて意味ありげな笑いを含んだ声に
「小さいって、小動物とか?」
なんて意外だと思いながら、だったら兄貴とかとうまくやれるかもと考えた所で
『いや』
そんな否定の言葉。
それからたっぷりと含みを持って
『あいつより小さいって言うのが条件だ』
なんとなく残念な大家の基準にはだったら俺は親切にされないじゃんと言うこの一連の適当な雑な扱いの理由を納得するのだった。




