自由を謳歌するのは子供の特権です 1
子供の食事は戦場だ。
誰が言ったか知らないが世のお母様達には本当に頭が下がる、と。
綺麗にご飯を食べる。
まだまだ難易度が高い年齢の子供の食卓は悲惨の一言に尽きた。
「真ー、緑青がお茶零したよー」
「真ー、玄さんがこぼれたお茶で遊んでるー」
「真ー、バナナ食べたからお替わり頂戴」
「真ー、バナナ甘いからミニトマトが食べたいー」
「真ー、主からもらったトウモロコシも食べたいー」
テーブルの上はカオスと言う名の戦場とでもいうのだろうか。
玄さんはやっぱり水遊びが好きだし、一緒になって岩さんも遊んでいるし、朱華は食にうるさいし、緑青は勝手に置いてあったトウモロコシの葉っぱを剥いて食べようとするしもう食卓はカオスな状態だ。
「なかなかの光景だね?」
兄貴はよその家の出来事なのでデレデレとしながら可愛い可愛いと言いながらもこぼれたお茶を布巾で拭い去り、さりげなく玄さんと岩さんをぬるま湯で洗ってくれた。ありがたし。
「お風呂あったかいねー」
「ねー」
「玄さんと岩さんだけずるい!緑青も入るー!」
まさかの風呂好き。
大き目のボールにお湯を張っただけのプールは三体入ればもうイモ洗い状態。
だけどヘンタ…… 兄貴はバシャバシャと水をかけられてもしょうがないなとにこにこしながら一緒に遊んでいた。
もう帰れよ。
そんな本音は何とか飲み込めば
「真白逃げて!洗われるよー!」
「朱華も捕まったらまた洗われるぞー!」
水が苦手なのだろう。
顔を真っ青にして机からぴょんと飛び降り、朱華は真白の背中に乗って二階のロフトへと二体して向かっていった。
「朱華はのぼれないからねー」
縁につかまってまったりしている玄さんの言葉になるほどとおもうもロフトに行ったと思ったもののむき出しの梁に二体はここが安心だと言うように一階を覗き込んでいた。
「いい場所知ってるな」
俺が昇れば間違いなく落ちる場所を安住の地とした真白と朱華に関心をしてしまう。
そしてなぜかこの場所におはじきとかが置かれていた理由を理解した。
「大家さんも渋いおもちゃを与える」
「そうだ。その大家、一度会うことは出来ないのか?」
「んー、どうだろう?」
とりあえずと言うようにスマホを取り出して電話をすれば
「あ、大家さん、九条です。今朝はお野菜ありがとうございました。
ちみっこ達も喜んで食べてます」
『まあ、あの野菜で育てたからな』
なんか誇らしげな声に昨日感じた気難しさは感じなかった。
やっぱり初対面って言うのが緊張させる理由だったのかなと思いながら先輩が師匠と言う人、悪い人じゃないと少しだけ親しみを持ちながら
「あの、今うちに兄が来てまして、付喪神の事でちょっと聞きたい事があるみたいなのですが……」
『悪い。今からちょっと出かけててしばらく留守にする事にしてるから』
まさかの留守発言。
そういやうちに来た時あのまま山の方に行った気配なかったなーなんて思えば
「ではいつ頃のお帰りに?」
『今回はいろいろあるからひと月ぐらいは留守になるかも?』
そんな疑問形。
「ずいぶんとお留守にされるのですね……」
さすがにひと月は想定してなかったと言うように言えば
『夏の休み前にいろいろお世話になった人に挨拶に行くとそうなるってだけだ。
そういうお前もぼちぼち前の会社の友達とか呼ばなくていいのか?』
したたかに嫌な事を言われた。
だけど大丈夫。
俺には尊敬する先輩がいる!
「休みに帰ってきた時会いに来てくれるって約束してくれてますので」
誇らしげに言ってしまえばそうか、そうかと大家さんも相槌を打ってくれたあと
『そういや彼女に振られたばかりだって?
まあ、新しい恋を探すのもいいがあの街だと…… いや、気にしないでくれ』
かなりな角度でえぐってくれた。
さらに塩を摺り込むように意味ありげな言葉も残してくれた。
「大家さん、俺何かしました?」
気難しい方と聞いていたが、何気なく柔らかーな感じで距離を取られてるのはなんでだろうと思えば
『いや、お前は何もしていない』
きっぱりそう言ってくれてほっとしたのもつかの間
『しいて言うのならお前と一緒にいる男? 兄だったか?
朱華が変なものを持ってると警戒してるみたいだから俺も警戒する事にしてるだけだ』
ぞっとした。
こういう事は全く経験がないとは言わない。
だけどどこに居るかわからない相手が一瞬だけ見せてくれた鞄の中のお札の事を知っているのだ。
しかも名前を与えて支配下に置いた付喪神と言う式神の感覚を共有して。
「そう言うの、解るものなのですか?」
恐る恐ると言うように聞けば
『朱華は目がいいからな。それにあの家の出来事なら解らない事はない。
見た目こそ力を封じてひよこだけど、本性はあの欄間を見ての通り。
それにもうすぐ夏だからな。
ひよこでも朱華の能力は最大値に近い』
思わず黙ってしまった。
ちゃんと修行をしていれば名のある人物になり実家の業界では知らない人はいないだろう。なのに多分修行もしてないのに自然にこういうことを言えてしまう大家さんにぞっとしてしまえばスマホ越しで小さく笑われたような声が聞こえた。
『ばーか、真に受けるな。
お前の家の近くにある動物除けの柵のセンサーが反応したから設置してあるカメラの履歴を見たら面白いものを持ってたからからかってみただけだ』
なんてゲラゲラと笑う。
きっとおなかを抱えて笑い転げているのだろうと言う姿を想像して沈黙してしまえば
『ま、あいつらは見た目通りおしゃべりをして気持ちのままに行動するしかない正真正銘のガキだから。
だから保護者はちゃんと守れよ』
最後の言葉こそ真剣みを帯びたぞっとする声だった。
「はい……」
そんな返事しか返す事を許されないような底冷えをする声。
なんかとんでもない人とかかわってしまったと途端に寒気を覚えるも
「真キャッチ―!」
頭上から呼ばれて上を仰ぎ見れば
ぼすっ!
赤い塊が目の前を覆いつくしたかと思えば
「真ー、行くよー!」
そんな掛け声に慌てて赤い塊事朱華をどければ今度は真っ白の塊が顔面を覆っていた。
「「真ナイスキャッチ―!」」
「どうも」
ちゃんと守れよ、なんて大家はいったものの
「俺の方が守ってもらいたい!!!」
心の中で絶叫する真だった。




