静かな庭を臨む部屋 5
申し訳ありません。
編集ページが二ページ目に飛んでいたのに気づかなくて同じ話を投稿していました。
改めて宜しくお願いします。
俺は何を聞かされていたのだろうって思ったけど大家さんは結構ヤバい奴って改めて再認識した程度。いろんな意味でぶっ飛んでるからなーと思うのはあのパソコンぶっ飛んだ事件で十分理解していたつもりだったが
「俺もだんだん深みにはまっていってるなー」
今まで全く縁のなかったくらいの雲の上の存在の人達と急にお知り合いになったり、小さいころから聞かされ続けた目の上のたんこぶな人と協力したりと言った急接近にビビったりもしていたが今は大家さんがいれば大丈夫だという謎の安心感にしばらくの間ぼーっと手入れの行きお届いた庭を眺めていた。
苔むした石にヤドリギの生えた古木、お店の入り口とは違い植木鉢がいくつか並ぶ雑多でとても私的な空間なのに目立つ様な雑草はなく季節柄か落ち葉もなく、そしてこの暑さの中でも涼しげに静かな空気を放っていた品の良い庭だった。
俺がぼーっと庭を見ていたからかはち切れんばかりのお腹のちみっこ達が庭の存在に気が付いて
「真ー、お庭探検したいー!」
「真ー、玄さんがお庭に遊びに行きたいんだってー」
「真ー、緑青も初めて見る木がいっぱいだし石のお家があるから遊びに行きたいよー!」
「緑青、石のお家じゃなくってあれは灯篭って言うんだよ。
大家さんの目が覚めたらお出かけしなくちゃいけないからお庭から外に出ちゃだめだよ」
その一言でわーいと三体は窓を通り抜けてお庭へと飛び出して行ってしまった。
げっそりと心は疲れ切ってしまったが、こうやって楽しそうな声を聴いていればそれだけで十分癒される。
玄さんは植栽の木陰で初めて見る植物の味見をしていたり、緑青は灯篭の火袋を気にいってしまって
「真ー、お家にもあると良いよねー?」
何気に可愛くおねだりしてくるけどいくら小ぶりで手で削りだした味のある灯篭とは言えそんな渋いものはさすがに要りません。
「そこは大家さんと相談しようね?」
「相談ー!」
なんだかすっかり買ってもらえる前提で嬉しそうにきゅ~!なんてかわいらしい声を上げながら灯篭の回りを飛び回っていた。
「真ー、この石のお風呂いいねー」
「水盆って言うんだっけ。お風呂じゃないしそんな目で見ても買ってあげれないよ」
玄さんと岩さんが今遊んでいるのは一枚岩に水を溜めるように削り取った味のある物。灯篭と言い良い趣味だと感心してしまうも逆にお値段を考えればとてもじゃないがはいどうぞと買って上げれるものではない事も苔むした貫禄ある雰囲気がそう伝えている。
これはもう老舗オブ老舗だななんて勝手に頭悪そうな感じに考えているあたりこのお庭の見事さが俺には理解できていないからだろう。
それでも水盆の水に浸りながら上半身は半分石の上に置いて涼しい木陰でまどろんでいる玄さんを真似して温かな石の上の木陰で温まっている岩さんを見ればこういった石があってもいいじゃないかと考えてしまうあたりただ今俺ピンチの状態です。
サクッとネットでおいくらかななんて見たけど軽く十万突破した奴が出てきました。
いや、無理でしょう。
俺の食費何か月分ですか?
そういう所で計算しちゃいけないのは判ってるけどそれでもこのコンビはウルウルとした目で俺を無言で見上げてくる。
「緑青には買ってあげるんでしょ?玄も欲しいよう?」
「緑青に買ってあげるなら玄さんにも買ってあげてよう?」
うん。性質の悪いコンビだ。
そしてきゅるんとした黒いおめめに抵抗できない俺がいて……
「お、大家さんに相談しないとね……」
「「やったー!!」」
まだ買うって決まってないのにすっかり買ってもらう気になってる玄さんと岩さんにすでに決定したかのようなはしゃぎっぷり。
「まずは大家さんに相談だからね!」
こう言うのがせいぜいだった。大家さんこういった事までたよりにしちゃってほんとうに申し訳ありません。
寝返りも打たずに寝ている大家さんを見れないまま水盤の水面を叩いて遊びだす玄さん達にこれ以上おねだりされる前に俺は撤退というようにエアコンの効いた室内の戻ろうとすれば
「あれー、知らない奴がいる?」
「ここは俺達の縄張りだぞ」
「勝手に潜り込むな!」
「出て行け!」
突然の声に振り向けば四体の何かに囲まれてしまった玄さんと岩さん、緑青はいきなりの事に驚いて玄さん達の側に駆け寄ってひとまとめになって固まってしまっていた。
白と黒のツートンカラーの兎に二体の狛犬の様な犬と三毛猫に囲まれていた。ただしどれもこれも俺が動物園で見たものや神社で見かけたようなものとは違い、妙に親近感を沸いてしまうような形をしていたけど玄さん達にとっては初めての遭遇だろうから驚きのまま身動きが出来ないでいる。
しかも緑青は昨日からいろいろありすぎたので目じりに涙を浮かべ
「真ー!」
助けてー!という悲鳴に俺は今度こそ数歩の所を駆け足で駆けつけるのだった。
「うちの子たちになに意地悪している!」
囲まれていても圧倒的大きい俺が手を伸ばして緑青達を引き寄せれば
「あの人間私達の事見えてる?」
「声も聞こえるらしいぞ?」
「なんだ?客なのか?」
「客ならあっちのお店の方だ。お客様がお泊りするって話聞いてないぞ!
泥棒かもしれない!追い出せ!」
それでも威嚇するように牙をむく。あいつらは何だろうか、と……
だがしかしだ。
「三毛猫みたいな妖怪?かわいいなあ……」
一番つんつんして追い出そうとしているけどこれは何というご褒美だろうか。
「にゃ!妖怪とは失礼な!こう見えても長い月日を過ごした付喪神だ!敬うがいい!
それに俺には次郎と言う立派な名前がある!」
「へー、次郎さんか」
「や、やめろ!首は反則だ!それから耳の裏も!ああ、しっぽの付け根もだ!」
なんて言う割にはにゃ~となんとも心地よさそうな鳴き声と共に仰向けになっておなかも撫でるがいいとさらす駄猫。やめろ~と言う割にはここをさすれと自ら導くツンデレさんには初回サービスとしてもふりまくってやる。
「次郎さんが敵の罠に!」
「でも酷い事はしてこないわよ?」
「とりあえず気持ちよさそうだからもう少し見守っておこう」
こんな無防備でこの家を守るつもりは本当にあるのかとモフモフを堪能しているうちに
「次郎さんあったかいね!」
「ねー!猫のおばあちゃんよりあったかいねー!」
玄さんと岩さんよ。猫のおばあちゃんとそこまで仲良くなれてよかったねと二体の成長に感動してしまうもすっかり警戒心が強くなってしまった緑青が気にはなるけど俺の懐でしがみ付いて駄猫の様子を見ている。
捕まったのがよほど怖かったんだろうなとモフモフする手とは別の手で緑青をなでなでしておけば嬉しそうに手のひらに頭を寄せてくるから今はこれで良いだろうと次郎さんが満足するまでモフりまくり……
「こ、今回は負けを認めよう……」
「勝敗は一度きりだ。縄張りを守りたいのは判らない事もないけどいきなり喧嘩を売るのは間違っているぞ」
「敗者は勝者の言葉に従うのみ。その言葉守ろう……」
骨抜きになるまでとろけさせてやった実家に来る野良猫で鍛え上げた技に敗北宣言をした事より従順になった次郎さんとどうでもよくなった他の三体と一緒に縁側に移動をする事にした。




