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嫁取り編(3)


 龍吾も新村へ出張(でば)ってきて、親子で松姫と対面した。婚儀は梅雨明けとし、今更ではあるが大輪家から申し入れて、戸塚家から媒酌人を出してもらうことも決まった。いったん佐賀家に帰った松姫一行は、新村に持ち込む荷物の準備や礼法のおさらいに忙しくなった。


 ある日、老女の菊路は下女のひとりに呼び止められた。松姫に随行することになっている女だった。


「菊路様は、村松の秋葉屋様にお会いになることがおありですか」


「いや、お目もじしたこともない」


「そうですか。十橋家のご親戚だとかで、うちの実家にご挨拶だと言って干し海老の詰め合わせが届いたのです。お礼を申し上げたくて」


「……自分で文を出してくりゃれ」


「はい、お引き留めいたしました」


 下女は頭を下げて去ったが、菊路は気の遠くなる思いだった。


 松姫の奥を取り仕切る菊路は、秋葉屋が情報収集の鍵になる人物のひとりだと聞かされていた。それがすでに、輿入(こしい)れ随行者の身辺調査を終えている。それはつまり、素性のわからない忍びが誰と誰なのか、もうお見通しだということだった。


 おそらく自分の実家にも、もう海老の詰め合わせか何かが届いているのであろう。もし大輪家が強引な諜報で秋葉屋の利益を損なえば、菊路の実家に不慮の何事かが起きるかもしれなかった。危険で強力な相手との暗闘に巻き込まれてしまったことを、菊路は知った。


嫁取り編 了


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