第四章プロローグ おれは75人の魔法少女にケツを守られている。
大陸大魔女会議
アナホリーダ大陸の魔法少女たちの集いである。
大陸のどこにあるのか。外界から遮断された部屋。通行証をもつものだけが、ここにアクセスできる。窓はあるが、外に出ることは出来ず。触れることの出来ない外の景色はアナホリーダ各地の様子を映し出していた。
部屋の中には大きな丸いテーブルが3つあり、いすが並べられていた。
1つ目のテーブルには10席中8席が埋まっていた。
2つ目のテーブルは空席が目立ち2人しかいなかった。
3つ目のテーブルに向かう赤髪の魔法少女は松葉杖をつきながら現れた。
「お勤めごくろうさん。さちよ、怪我の具合はどうだ」
「あら、あなた、てっきり牢にいるかと思ったのだけれど」
「包帯ぐるぐる巻きなのですよ!さちよさん!?」
次々と話しかけるのを受けて、松葉杖の彼女はよっこらせと椅子に座る。彼女の席にはNo.11と書かれていた。
「ガッハッハッ!唾つけときゃ治るんだよ!珍しいじゃねーか!1桁とキリ番は分かるが、ゾロ目まで呼ばれるつーのは。何事だ」
彼女が見渡すと大陸中の著名な魔法少女たちが、ぼんやりと浮かび上がる。各地に散らばる彼女たちは通信魔法でここにいる。立体映像と言えば分かりやすいだろう。
「お前の参加も驚きだぜ。No.11。何から話をすればいいのか。俺は頭を抱えてーよ。貴様で最後だ。まったくめんどーな」
初めのひとりの席にはNo.2。彼女は頭をかいた。ボーイッシュな見た目の短髪の女性。左目には眼帯をしており、眼帯には魔法陣が描かれていた。
2人目にはNo.30の札があり、彼女は長い髪を手で遊ばせていた。あとの驚いた少女の席にはNo.77が書かれていた。小柄なその娘は可愛らしい色合いのワンピースを着ていたが、その腰には不釣り合いな無骨な黒い槌がぶら下げられていた。
「これ以上待ってもこないだろ?出欠をとるぞ」
「No.90No.80 No.70No.60No.50No.40 No.30No.20か。キリ番は流石だな」
キリ番 は各No.のまとめ役である。下位No.であっても、魔法の実力はかなりのものであり、全員3年前の戦いの生き残りである。魔法力よりも経験や統率力で選ばれている。それぞれの桁10人の魔法少女たちをまとめあげて各地の平和を守っている。
「…王国西部の作物の出来が悪いなNo.78を派遣しよう」
「…帝国の盗賊団が徒党を組んでいる。No.56を送り出そう」
「…あの程度の連中はNo.70番台で十分だろ……」
出欠の合間にも話し合いは続いている。
さちよに話しかけていた女性がNo.2に話しかける。
「No.10は?あの陰気メガネは?」
「シングルスたちのまとめ役だぜ?俺がいうのもあれだが心労でねこんでる」
「ご愁傷さまね」
「つぎは、ゾロ目組だな。No.77 『傲慢』777(ジャックポット)、No.66『暴食』毒林檎姫 。No.11『強欲』赤鷲。恩赦が条件としても、でてくるものは少ないか」
ゾロ目 は、特殊な魔法、危険な思想ゆえ、要監視対象とされている魔法少女たちである。懸賞金すら掛けられている場合がある。
「流石に~あたしたち~タイザイは~参加者は~少ないね~。ね〜王都には〜美味しいもの~いっ~ぱいあるんでしょ~」
「ヨダレ!ヨダレがたれてるのですよ!溶けてる!溶けてる!テーブル溶けてるのですよ!」
No.66の彼女はだらだらとヨダレをたらすとテーブルは煙をたてながら穴をあける。
そんな様子を見てひそひそと周りの魔法少女たちは会話する。
「何か~いーたいな~らーいつでもーきくよ~。お近づきのしるしに〜。あたしの〜りんご〜たべる?それともあたしのりんごたちに〜たべられちゃう〜?」
「ひっ」
彼女がゆらりとてをあげると彼女の背後に赤と緑の巨大なリンゴが現れる。そのりんごにはギザギザとした針のような歯がびっしりと生えていた。
「やめんか。」
ぱっくりと口の開いたりんごを手に持ち魔力を溢れ出そうとした少女を嗜むように声を発した。魔法少女というには、かなり歳を得た魔法少女だった。No.は5。言われた側は少し考えていたようだが、
「…は〜い」
おとなしく座った。
「1桁はNo.5『想像創造』 No.3『心音』あとはNo.2 の俺か。」
1桁台魔法少女としての実力・功績全てにおいてトップクラスの魔法少女。各国の要人の警護や特定魔法地域の守護、遺物の管理など、大陸の要である。
「今日の議題はちまたで話題の白い仮面の魔法使いについて…か。今ややつを革命の申し子として祭り上げるものも現れ始めた。貴族や現体制への不満を持つ者は少なくない。あっという間に膨れ上がるぞ」
「帝都の魔法少女たちの所在はまだわからんのか」
「帝都所属の魔法少女25名。全員行方不明。だから、柄でもない俺が議長してんのさ」
魔法少女が行方不明?
「……ガッハッハッ!!No.2お前も面白い冗談言うよーになったな!」
周りの静かな空気をさすがに気づいたのか、さちよはおずおずと聞いた。
「……なぁ、冗談だよな。」
「めんどーなことになってんだよ。こないだの魔法学園『氷豹』の不祥事。No.更新試験で侵入者を許した不備。各国は自国に魔法少女や魔導師たちを引き揚げさせている。それに2代目魔王の出現で裏社会が活気づきつつある。山賊、海賊、各地の野盗などの被害の多発。さらに『顔』を奪われてる要人たちが何人もいて、命令系統もぐしゃぐしゃだ。各地に転送された魔獣たちは魔力の限り暴れていて転移駅は受け入れ拒否。機能していない。あの1日だけでよくもまーこんだけ引っ掻き回してくれたもんだぜ。『心音』現在までにわかったことは?」
「…区長会では数えきれないほどの被害が報告されてるよ。市民の死者はいないけど、重症者は多数。物資が不足してるわ。こんなことを言いたくないけど、お手上げ」
「ちっ。だから、No.試験なんざやるべきじゃなかったんだ。国を開ければ隙をつかれる。」
「おいおいちょっと待て。『蒼豹』たちは命をもって奴らを止めたんだぞ。不祥事ってどういうことだよ!」
「……お前の気持ちは分からんでもない。だが、周りから見たら自業自得でしかねーよ。…睨むな。睨むな。『蒼豹』に世話になったやつは大勢いる。俺もその1人だ。だから、こうやって対策考えるため集まってんだろ?」
「座れ、赤鷲。話が進まぬ。『蒼豹』は氷像と化し、その氷は溶けぬ。魔王の呪いとやつ自身が呪った呪いが混ざりあって、現在解呪不可能だ。魔王もどきに呪いをかけたことだけは評価してる。あとは奴らが動き出す前に叩き潰す。そのためにも、我々に猶予がどのくらいあるか知ることが急務だ。帝都の魔法少女が必要だ」
「なんで帝都の魔法少女が、関係あんのさ」
「帝都の魔法使いたちは、呪いに関してかなり知識が深いからな。元々魔王城の近くにできた国。呪いの被害も他国よりも多かったため、呪いの研究者も多かったようだぞ。そいつらが全員抜けたんだ。たまったもんじゃない。」
「今回赤鷲。貴様を呼んだのは、貴様の知る限りの白仮面の情報と貴様を助けたあの黒い杖職人の小僧に用があるからだ」
「あ?なんで少年に用があるんだ?」
「いま、白い仮面の魔法使いどもを相手にするためにも、奴の黒い杖の力を利用しない手はない。」
「残った魔法少女75人で彼を守り、鍛えて、魔王討伐の勇者にする。」
「は?」
次回4.30 0:00更新予定です。
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