おれのケツともう1人の杖職人2
彼女が凄むと魔道士たちは一目散に逃げていった。
「ったく。で、あんたらはなんだ?ん…ココネか?」
召喚士がフードを外し、顔を見せる。怪訝そうだった女の顔が晴れやかに変わる。
ポニーテールを揺らしながら、近づいてくる。
「あ…うん。アンちゃん久しぶり」
「よく来たな!あの妹はいねーのか?!」
「今日は、わたしだけ」
「そっか、そっか!で、こいつは、なんだ?ボーイフレンドか?」
ニマニマしながら親指で俺の方を指し尋ねる。
「ち、ちがうよ」
「ギャッハッハ!だよな!こんなチンチクリンなわけねーわな!じゃあ、だれよ?」
失礼なやつだな。
彼女が睨みをきかす。
「ひっ」
「つ、杖を直して欲しくて」
「なんだ、依頼人か。ほら、来なよ。工房にはいんな」
彼女に連れられて、工房にはいる。
「おぉ!!?」
工房を中に入ると木々の香りが鼻を通る。
「なんじゃ、こりゃ」
外から見たほったて小屋からは想像できないほど、中は広く、中に森があった。1本1本の木がひとつひとつ違い、まるで植物園の中にいるようだった。細長い木、太い木、つるつるした木。木の表面の色も様々で、黄色やピンク色の木さえもあった。
「おら、早く来いよ!」
不思議な森を抜けると少し暗い広い空間になった。芝生の上に大きな長机、その上には見た事のない生き物たちの素材が乱雑に積まれていた。
「散らかっててわりーな!まぁ、そこらへんに座って、ちょっと待ってな。急ぎの依頼があってな」
彼女の手には、真新しい白い1本の杖。
そっと片手を地面につけると
「『起動』」
彼女が呟くと、芝生が黄緑に輝き出す。芝生の中をよく見ると見たこともない無数の文字群がそのいっぱいに広がっていた。よく見ると壁や天井も輝いている。
その文字がゆっくりと浮かび上がり、白い杖に吸い込まれていく。
「……きれいだな」
「うん、いつ見ても、綺麗」
とても神秘的な光景だった。光が収まると白い杖には無数の文字が焼き付けてあった。
「なぁ、あれは、なにをしてるんだ。」
「よ、よく使う魔法をやきつけてるんだよ。3級魔法みたいな生活で使うのとかは毎回呪文を唱えなくてもいいように」
「へ~、なるほど」
おれのケツの杖には、あんな模様はないけどな。
「うっし!完成だ。あとは『転移』」
その杖は空中にうかぶと瞬く間に消えてしまった。
「さて、直したい杖を見せてみな」
「これなんですが」
ぽっきりと折れてしまった杖を見せる。
「ん?あ~~~。こりゃ無理だな」
え?