俺のケツと「渇望の杖(アクエリアス)」
「はぁ」
「なにをあんたアンニュイなため息をついてるのよ」
領主との戦いから1週間。衛兵たちの寄宿舎をしばらく間借りしていたが、さすがに長居をし続けることは出来ない。城は崩れてしまい、とりあえずの復興の本部が設置されていたためだ。捕らわれていた人は解放され、領民を使った魔術を行なおうとした領主たちは捕縛されていた。ガブコが王都に連絡をとり、然るべき処置を行う予定だ。
「杖が治らない~」
領主にへし折られた「渇望の杖」は戦いの後ポッキリと折れてしまったのだった。「渇望の杖」俺のいた世界にもあったなアクエリアスつまり水瓶座。つまり、おれのケツの杖は12星座の杖があるってことか?引き抜くには強い思いが必要になる。「渇望の杖」は水瓶。乾きを潤す。おれが路銀を稼ぐために売った杖のなかにもあるのだろうか。
「あ~~~~」
「あんたね。シャキッとしなさいシャキッと!」
「おはようっす!!カリンさん!変態さん」
爽やかな挨拶とともに入ってきたのは、この街の元衛兵長である青髪の少女だ。
「あ、ガブコちゃん!」
「うっす!」
朝から元気だ。窓から見ると衛兵たちが朝の訓練から引き上げていくところだった。
「?今日やけに衛兵さんたちボロボロじゃないか?なんか顔から血が出てる人が多くないか?」
「ああそれはっすね」
そんなことを話していると扉を赤髪の美女が蹴破り入ってきた。
「ガッハッハッ!鍛え方がたりねーな!いやーいい汗かいた!」
「ちょ!さちよさん服、服!」
「ガッハッハッ!ん?おぉ!すまねぇ!すまねぇ!」
「発育の暴力!!!!」
衛兵たちが血を流してた理由がわかった。鼻血だあいつら。薄いシャツで、豊かな胸が上へ下への大移動だった。
「ん、ガッハッハッ!やけに真剣な目してんじゃねえか」
「師匠胸をお借りするっす!!」
「ん!許す!」
まさか、こんなところで組手か何かするのか?
こんな宿舎の一室でやるには、狭すぎる。
「ちょ、ま、」
もみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみ
「何やってんだ!」
思いっきりずっこけた。
なんてうらやま、いや、うらやまけしからんことを!!!
「胸を借りてるっす!」
「馬鹿なの?!」
「師匠の胸すごいっすよ!ボリューミーでいて、指が吸い付くような。変態さんも1回いっとくっすか?ヒーリング効果抜群すよ!」
「なるほど!ヒーリング効果か!」
それなら仕方ない!こないだの戦い凄かったからな!
「……ねぇ?さちよさんの胸触ったら、一句よんで見なさい」
「ああ!実況してやるぜ」
カリンの胸では表現出来ない擬音語たっぷりの俳句読んでやらあ!
ぼいんぼいん、バインバインの、ぼいんぼいん(字余り)
よし、これでいこう
「……辞世の句にしてやるから」
「ひょ、」
「あらあらあさからみんな元気ね」
たまずささんが、パンを持って入ってきた。
「姉様!」
「あらあら、仲良くしてた?」
「超仲良しです!なんならハグでもしようかと」
たぶん彼女のハグは鯖折りだと思う。
パンをかじりながら今後の話をする。
「杖を治す方法が知りたい」
「まぁ、杖職人なんて職業ないからな」
「そうなのか」
「大昔に金髪の魔法少女が、杖を世界中にばら蒔いたらしいな」
「それって」
「神のじょーちゃんだな」
さちよと俺は心当たりがあった。
星がきらめく神の間にいる。あの少女を。
「ガッハッハッ!あたし、死んじまったか!」
「陽気なやつじゃのう」
「んで、あたしが行くのは、天国?地獄か?」
「ん?どういう意味じゃ?」
「あたしは魔法少女としてありえないほどたくさんの人を救ってきたし、ありえないほどたくさんの人を不幸にしてきた。」
次回土曜日