俺のケツと魔力中年マジカルリョーシュの逆襲③
「ちっ!魔瓶がすくねぇ。なんでアイツがあの魔法をつかえるんだ」
「どうした?探してるのは、こいつか?」
杖を無造作に振るう。
「ゔ」
首に鎖を付けた少女が乱暴に引っ張りだされた。全身にアザが見受けられ、頬はつい先程殴られたようで赤く腫れ上がっていた。
「なっ、カラスウリ?なんで、お前程のやつが捕まってんだよ」
「…さち、よ?…なんで、こんな、ところに」
2人は顔を合わせて、目を丸くした
「ふはは、なんだ?顔なじみか?魔女同士にも友情があるのか?こいつを責めてやるな。妹がわが手中にあるのだからな?」
「…外道がっ」
「選べ、魔女ども、大人しく、檻に入るか。仲間を殺されるかをな!」
「っ。好きにしろ」
彼女らを贄にして、異世界人を呼び出し、わしと契約させる。
そうだ。これを世界に見せつけてやろう。贄も手に入った。わしには魔力があふれんばかりある。
「まじかる・りょーしゅ♡いでよ、魔鏡号」
「素晴らしい。これが『千変』の力か」
机やいす、食事を代償に魔鏡をいくつも生み出していく。
「まじかる・りょーしゅ♡」
この街や王都上空、主要都市の上空。各地に巨大な鏡が上空に浮かび上がった。そこにはふっりふりの領主の姿が映し出された。王都の一角のカフェで遅い昼食を食べていた女区長とその姉は目の前でふりふりと踊るおっさんの姿に吐き気を催していた。
「おええええ、なんやあれ?」
「…あの魔力、さっきの、でも、もっと、汚くなってる。」
「ねーちゃんにけったいなもん見せて。あん時にちゃちゃっと始末しておけば良かったなぁ」
「…戻る?」
「…そうやな、とりあえずおっさんたちには報告しにいこか」
それにしても、あの領主の姿。どこかで見たことあるんやけどな。どこやったっけ。
「アナホリーダ全土につぐ。わしは領主だ。どこぞの領主とは言うまい。討伐隊がすぐ来ては困るからな。わしは今から異世界転生の儀式をおこない。そやつとともにこの大陸を支配してやる。今日はそのセレモニーだ!ふはは」
この力があれば、わしは世界さえ作り替えることが出来る。
その声は各地に響く。
アナホリーダ中の民衆。実力者。曲者。日陰者。権力者。ありとあらゆる異世界人がことの結末を見守ることになる。
祭壇の扉の前でもみ合っている男女が一組。通路に声を響かせていた。
「や、やめ」
「おら、大人しくケツを出せよ」
「いや、そんな、乱暴に」
「恥ずかしがってんじゃねーよ」
「あ、あん!」
「って、変な声出すなあああああ!!」
あ、襲われてるほうが俺です。
「はやく!はやく、姉様を助けないと」
カリンにとって姉は世界で最も大事な存在だ。気持ちはわからなくもないが。
「ちょっと落ち着けっての」
カリンの肩をがっしりと掴む。少し怯んだカリンだったが、キッとこちらを睨んだ。
「な、なによ」
「なぁ、あの2人がやられたんだぞ。戦闘力ナッシングな俺たちが突っ込んでいって助けられるか?」
「それは…っ。」
ぐうの音も出ないようだった。
「くっ…だったらどうするのよ。姉様がめちゃくちゃにされてもいいの?!」
「もちろんだめだ!」
彼女は俺にとっても恩人でもある。助けたい。
「だったら」
「いいか?喚くだけなら誰だってできるんだよ!頭を冷やせ」
できることと出来ないことがある。日本にいた時に思い知った。腕力、財力、知力、求心力、力が無いやつがいくら叫ぼうが誰も助けてくれない。だが、おれにだって、いまは力がある。俺自身には役に立たない力だが。
「俺たちで助けるぞ!」
グイッとズボンを下ろして、ケツを出す。異次元に繋がる光に手を突っ込む。俺たちを導いてくれ。手にしっかりと感触を覚える。太く硬いその杖を引き抜く。
「…ん~~~んほっ!はぁ、はぁ、」
ケツから『道標の杖』を引き抜いて、カリンに手渡す。頭を回せ。彼女の姉を、俺の恩人をたすけるぞ!
「…うん」
カリンも少し落ちついたようだ。
ゴミを見る目で俺を見る。
「あの、杖、1回、洗ってもらっていい?」
「…あ、うん」
よし、決戦だ!ちきしょう!!!
((ᕕ( ᐛ )ᕗᕕ( ᐕ )ᕗᕕ( ᐛ )ᕗᕕ( ᐕ )ᕗ
さぁ、最終決戦だ!