俺は魔法少女100人からケツを狙われている!3
「名前……」
神様は戸惑っているようだった。
「あぁ、」
「……そういえば、昔桜のやつと冗談で子供の名前を考えたことがあったのう……。女の子なら、さくらもち」
「センスがすげぇな」
「じゃろう!」
自信満々に答えた神様に、不安を抱きつつ聞く。
「……お、男なら?」
「そうさのう……、」
生唾を飲み込む。
「桜のやつが言っておったのは、ギンガじゃ。」
「ぎんが……」
噛み締めるようにその言葉をつぶやいた。
「桜の奴は星を見るのが好きだったんじゃ。やつのいた日本とアナホリーダ。文明も言葉も違うなか、星だけは一緒だった。だからかのぅ。……なんだ不満だったのか、それならばワシのイチオシのモチモチのスケとかは?」
黄金の巫女はみんなネーミングセンスが壊滅的なのか。
「……ありがとう。名前。ずっと不安だったんだ。行ってくるよ。」
「あぁ。広大な銀河を守れるくらいの英雄になってほしいと言っておった。」
扉が開き、若い勇者は戻っていった。
「さよなら…………かあさん、ありがとう」
目を開けると目の前にカリンがいた。
「……え、な、あんた、どこから」
「カリン、ありがとな。世界中のみんなに呼びかけてくれて」
「さっそくで悪い。カリン頼みがあるんだが」
「……?」
カリンに頼み事をし、俺はさちよさんたちの元へ急いだ。
「魔装!!」
会得したばかりの魔装を纏って走り出す。
至る所の大地は抉れ、濃い魔力跡が漂っていた。バラバラになった魔道具が散らばり、魔法少女の2人はボロボロだった。
「どうだ。ガブコ。あと何分戦えそうだ」
「……師匠のほうはどうなんですか。」
「ガッハッハッ!面白いくらいにすっからかんだぜ」
「右に同じっす」
はじめはまともにやりあえていたと感じていたが、徐々に魔王の力が上がっていった。魔王が魔王たりうる所以だ。すでに先代勇者からたくされた魔道具は尽き果て、残るは己の杖のみという状況だった。
「貴様らはよく戦った。12星座の小娘どもに匹敵するほどにな。記憶に残しておこう。太陽(Sun)」
魔王か片手をあげると巨大な炎の塊が浮かび上がる。さらにもう一方の片手をあげる
「痛みなく殺してやろう。呪炎……」
赤い炎の玉が漆黒へとかわる。
「漆黒呪殺」
「ははっさすがにお手上げっす」
「ガッハッハッ!!あとは託したぜ!少年!!!」
目の前に確実に迫る死に、2人はすでに戦意を失っていた。
ガブは目を閉じ、死を待っていた。邪悪な魔力がすごい速度で近づいてくるのを感じる。
だが、暫くたっても、変化はない。恐る恐る目を開けると、目の前に迫っていた黒い炎はなく、代わりに。
「なっ」
「がっ」
さちよとガブコの腰に深々と針が刺さっていた。魔王は向こうに、地中から?いや、常に警戒をしていた。だったら、新手か?思考を巡らす2人の背後に気配がする。そいつの放つ、馬鹿でかい魔力量に冷や汗が落ちる。
「黒蠍座手術台。さちよさんガブコ、ありがとな。そこで休んでてくれ」
聞き覚えのある声がした。
2人の体の傷がゆっくりとだが癒えていく。さちよは目線をあげる。
白い魔力が立ち登り、マントも山高帽子も白く輝く。
片手には7個の魔石が輝く剣を携え、もう片方の手には黒い杖。以前と違い、杖の周りに小さな杖が10本程浮いている。
「……けつたろう、、か?」
「誰がケツ太郎だよ!?違うからね?!」
「見違えたっす」
「時間を稼いでくれたおかげだ。今は回復に努めてくれ。あいつの相手俺がやる。」
「お前1人で止めると言うのか」
神様の体は魔王に完全に乗っ取られてしまっていた。黒髪の絶世の美女。長い髪はオールバックにしており、彼女の額には何やら怪しげな魔法の文字が書かれている。彼女の体の周りには、星が回っている。ひとつひとつにとてつもない量の魔力が込められていることがわかる。
「気を付けろよ。あいつがあれを出してから私たちの攻撃が一切かすりもしなくなったんだから」
「問題ない!!」
「……お前は誰だ」
魔王は油断なく聞く。
「俺の名前は、ギンガ。偉大な勇者と巫女から生まれた、お前を倒して英雄となる者だ!!」