襲来
「姫様、そこにいたらあぶのうございます」
ぞうさん砲の真下のバルコニーで、砲身の行く先を見つめる第3王女に爺やは声をかける。
「あら、爺や。守備の方は?」
「万全でございます」
発射装置を差し出す
「……戦況は」
「芳しくありませんな。お父上様たちも奮戦はしておりますが、彼らの強さはそれ以上でございます。」
「我が国の命運をこのボタン一つが決めるかもしれないのですね。」
「左様でございます」
「爺やは3年前の戦争を最前線でいたのよね。勇者は魔王に勝てると思った?」
「思いませんでしたな。勇者側が圧倒的に不利でした。大幹部との連戦により疲弊し。仲間が死に。魔王を倒すための巫女のメンタルがくずれ不調に。それでも勇者は魔王を封じれたのは奇跡としか言えませんな。そして、奇跡はそう易々と起きませんよ、のう、2代目勇者殿」
「はぁ、はぁ、はぁ」
「その根性は認めて差し上げますわ。重症の体を魔法で無理やり動かして、ここまでやってきたのですから」
「発射は、させねー」
「爺や、30秒」
「はっ」
彼が手をかざす。空中に魔法陣が浮かび出す。いくつもいくつもいくつも。
「……おいおい、冗談だろ?」
「ほっほっほ、冗談ではございませんよ。」
魔法陣から異様な気配を感じる。
「は、は、まじかよ……」
魔法陣からは大量の異形のもの達が現れる。コウモリのような羽を生やし、角を生やし、悪魔の出で立ち。
「悪魔の召喚術ははじめてですかな?昔はかなりぽぴゅらーな戦い方だったのですがな。異世界人の召喚よりもずっと簡単でして、生贄という名の対価があれば、簡単に呼べるのですよ。」
「簡単っつっても、限度があるだろ」
目の前に埋めつくされる悪魔の軍勢。
「姫様から与えられた時間は30秒。若人よ。恨みはないですが肉塊とおなりなさい」
一斉に飛びかかる悪魔たち。
「……」
その爪や牙や、魔法を俺は静かに見ていた。
「……ほぅ」
ゆっくりと景色が流れ、スローモーションの様に自然と身体が動く。
「瀕死になってからの覚醒ですかな。かつての勇者さながらですな。彼も死が近くなるほど強くなるタイプでした」
「はぁ、はぁ、はぁ」
お前は俺様と神が『二倍』で作りだした模造品だ。
自分が人間じゃないことに愕然としたが、この場では感謝すべきなのか。魔力を感じる力は抜群に伸びていた。大量の悪魔の魔力に、あの爺さんの魔力。近づいてくる。第2王女の魔力に、覚醒した巫女の魔力。巫女の魔力?巫女ってなんだ?
巫女?
黄金の巫女?
俺様を封印しやがった。
巫女の気配
「あ、れ……」
バツン……
意識がとだえる。
第3王女は発射装置に手をかけ動けずにいた。
そのボタンを押すだけで、国が一つ消し飛ぶ。
躊躇いの感情がなかったわけではない。
だが、彼女の手が止まったのは別の原因がある。
自分の腹心であった爺や。
国を留守にしている王族たちを除いてこの国で現在最も強いはずの男の命が風前の灯だったからだ。
「一体なんなんですの!!貴方は!!」
荒れ狂う黒いオーラに包まれたその人物は咆哮する
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」
お前は俺様と神が『二倍』で作りだした模造品だ。
ここからはお前の記憶には残らねぇ
勇者は魔王に勝てなかった。だから、勇者の力と魔王の力を混ぜたのさ。




