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二連惑星の月

古典的なショート・ショートです。

西暦3×07年人類は人口増加と食糧危機を防ぐために他の惑星への移住計画を立てた。

そして、およそ100年後人類は”宇宙空間歪曲航法”(ワープ)の謎を解き明かし、数千機の惑星調査船団と数百もの母船が遠く銀河の果てに飛び立って行った。


「船長!一光年先に惑星があります。コンピューターで調べたところ、地球と全く同じと云える環境です。」

地球を出発して二年目惑星調査船の一つであるα号の通信士が興奮した声で叫んだ。

「なにぃ!間違いないのか・・・?!」 

「はい、全く地球と同じ気候風土です。」

「文明があれば厄介だぞ・・・!」

「大丈夫です、知的生命体の反応はありません。」

「よし、通信可能な母船に連絡をとれ・・・その後すぐ”ワープ”に入る。」

通信士は通信可能な母船をレーダーで探し始めた。

「船長、ユニコーン イプシオン アポロン号が通信可能です。すぐに連絡を取ります。」

通信士は光速無線ののスイッチを押した

ワープを重ね三日後その惑星にα号は着いた。


「美しい星だな・・・母船はいつこちらに着く?」

船長は通信士に聞いた。

「ユニコーン イプシオン アポロン号揃って一週間後です。」

「よし、その間にこの惑星の調査だ、着陸態勢に入れ。」

「了解。」 操縦士は宇宙船をゆっくりと確実にその惑星に着陸させた。

その惑星ほしの調査は順調に進んで行った。三十数名の船員たちが調査した結果地球と同じ環境である事が分かった。

船長をはじめ船員たちは狂喜乱舞した。空気も海も山もあり知的生命体は存在せず人類の移住には最も適した星と思われた。


天空にはこの星に着陸して六回目の月が輝いていた・・・。

「・・・美しい月だな・・。」 ブランデーグラスを片手に、船長は自室のパネルに映し出された満月を観ながら一人悦に入っていた。

「た・・大変です船長!!」

あわただしい声と共に、船長室のドアがノックされた。

「はいれ、どうしたのだ?」青ざめた顔のコンピューター技師が、コピーした用紙を抱えて入って来た。

「М・C{メインコンピューター}が恐るべき事実をはじき出しました。」

そう言って技師は抱えていたコピー用紙を渡した。

読んで行く船長の顔が徐々に険しくなっていく・・・。

「私はこの惑星に着陸してから、気候風土などその他あらゆるこの惑星のデーターを、М・Cで分析いたしました。そして、今日М・Cはこの恐るべき事実をはじき出して来たのです。」技師はそこで一息ついて話し始めた。

「この惑星ほしと天空の月の直線上に、我々人類には住む事が出来ない気候風土の惑星ほしがあり、月のまわりを二つの惑星が周っているのです・・。」

「つまりあの天空に輝いている月が、この惑星ほしのまわりを周っているのではなく、二つの気候風土の違う惑星ほしが月のまわりを周って居ると云うのだな。」

船長は用紙から顔をあげて言った。

「そうです。そして最後に恐ろしい事が書かれています。」

そう言って、技師は船長の顔を凝視した。



「・・・ここに書かれている事は、事実なのか?!」

全てを読み終えて船長は苦虫をかみつぶした顔で聞いた。

「今まで、М・Cが間違えたことはありません。」

「すると何か、あの月は宇宙怪鳥の卵で、二つの惑星は餌箱だというのか!?」

「残念ながら、間違いないと思われます。卵が割れて、二つの惑星すあなを支配している生物達は宇宙怪鳥の餌となるのです。」                         

「我々は、折角見つけたこの惑星ほしを捨てなければならないのか・・・!」

船長は右手で握り拳をつくった。

「惑星ではありません、宇宙怪鳥の巣穴です。母船へ連絡して移住計画の中止と、我々も一刻も早くここから脱出しなければいけません。」

「わかった・・・。」

船長は船内全域に通じる無線のスイッチを入れた。



「・・だめです船長!母船に連絡が取れません。この惑星の何かが原因だと思われます。」

通信士は光速無線のスイッチを切りながら首をかしげた。

「よし、通信は後だ。我々は先程言った理由で、この惑星ほしを脱出する。メインエンジンを始動せよ!」

船長の声が船内に轟いた。

しかし、いくら待ってもメインエンジンは始動しなかった。

「どうしたのだ?!」

船長が操縦士に聞いた。

「分かりません、エンジンが始動しません。」

操縦士は通信士同様首をかしげた。

「やはり・・・・。」

技師がポツリと呟き、整備士たちを罵っている船長の方に向き直った。

「蜘蛛の巣にかかった蝶は、何故自分が飛べなくなったのか分かりません・・・我々はある意味蜘蛛の巣にかかった蝶なのです。」

・・沈黙がα号の船内を支配した・・・。

                                           



最初にその惑星の空に現れたのはイプシオン号であった。続いてアポロン、ユニコーン号がその巨大な姿を現した。

「よし着陸態勢に入るぞ。」

それぞれの船長は、我先にと母船を着陸させて行った。

母船の居住区からは、この美しい惑星に歓喜の声が上がっていた。

「きれいだなぁ・・。」

「まるで地球ネ。」

「ママ見て、あのお月様の中に何かいるよ・・・!?」

子供の言葉に母親は、この第二の地球ともいえる惑星に夢中になっていて、子供の言葉に笑顔を返すだけであった。


大歓声の中、三隻の母船は・・・・・・無事この惑星に着陸をした・・・。






                             おわり



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― 新着の感想 ―
[一言] 発想がおもしろい。好きですよ、こういう作品。三点リーダーが多いのが気になりますが。
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