部屋でSurmise&Ministration
【お断り】
性的な描写があります。
閲覧の際はご注意ください。
宮殿に戻った私は、デネボラさんと共に、謁見の間で国王様と王妃様に、リギル・トリマンこと園山慎也を星に還した事、ツィーナフさんからアルティメットポラリスが心優しいセレスチャルソルジャーの体内に宿っているのを告げられた事を報告する。
「ふむ……セレスチャルソルジャーの体内にアルティメットポラリスが宿っているとなると、捜索はより難航を極めるな……」
「外見だけで宿っているかどうかを判断する事は、どう足掻いても不可能ですからね……」
国王様も王妃様も、予想外の展開にかなり頭を悩ませている。
「そちらの件は、私とレグルスで引き続き、情報収集も兼ねて調査致します」
「はい。私達にお任せ下さい」
「あなた方にそう言っていただくと、とても心強いです。頼みましたよ……デネボラ、レグルス」
「「はいっ!」」
「うむ、今回も大儀であった。下がって良い」
「「失礼致します」」
私達は一礼をして退室する。
その後私は、デネボラさんに渡していた核を入れるポーチを返却してもらい、自分の部屋に戻る。
もう既に外は暗くなっているし、何より慎也を成敗した疲労もあるので、私は部屋のドアを閉めるや否や、着ていた服を脱いで湯浴みをする。
「はぁ~、気持ちいい~。落ち着く~」
軟らかく触り心地のいいお湯が、疲れを吹き飛ばして心に癒やしを与えてくれる。
湯浴みをしながら、デネボラさんとツィーナフさんからの情報から、独自の目線でいろいろと推測してみる事にする。
まずは、デネボラさんが思い出させてくれた、フォーマルハウト――悠介を星に還した男と女……アークトゥルスとスピカは誰なのか、という点だ。
あの優秀で慕われていた悠介を星に還せるなんて、かなりの薄情者なんだろう。そう考えると、欲望に塗れた――私の復讐対象である8人の中にいる事は、ほぼ間違いないだろう。
しかし廉と拓哉は組になっていて、オリオン座か南十字座のどちらかの一等星の力を授かっているから、真っ先に候補から外れる。
そうなると、あと6人も候補がいる。ここから絞るとなると、なかなか特定するのは困難だ……
違う視点から考えてみよう。
6人は転生前、悠介の事をどう思っていたのか……
転生前に一部のクラスメイトから酷い虐めに遭っていて、且つコミュ障だった私が、本人に尋ねるなんて事が出来た例が無い。
だから私は、ずっと人間観察みたいな事をやって、誰が誰の事をどう思っているのかを見てきていた。
その時の記憶を辿っていくと、元嗣は悠介からいろいろと勉強を教えてもらってたし、梓も悠介に片思いをしていた感じだった。
勉強を教えてくれた恩人……初恋の人……
そんな人を軽々しく星に還すなんて、果たして出来るだろうか。
仮に出来たとして、それは最早サイコパスだ。
2人にその兆候があったのかは正直分からない。
ボンテーユ王国で会ったおばあさんは、2人掛かりでフォーマルハウトを――悠介を星に還していたと言っていた。
もしアークトゥルスとスピカがその2人だったら、自分だけのものにしたいはずだから、誰かと協力するなんて事はしないだろう。
故に、元嗣と梓も候補から消える。
そう考えると……アークトゥルスは亮太か和樹……スピカは優海江か智美という事になる。
4人とも優秀な悠介を疎ましく思っていた節があるから、可能性はかなり高い。
それぞれがどちらであるかは、これからの情報収集で、徐々に人物像が絞られていくはずだ。
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次に、ツィーナフさんが教えてくれた、アルティメットポラリスが体内に宿っているセレスチャルソルジャーは誰なのか、という点だ。
ツィーナフさん曰く、その人物は欲が無くて、争い事を嫌い、自己犠牲を厭わない性格だそうだ。
その情報からして、私の復讐対象である8人は、どう考えても有り得ない。という事は、残りのクラスメイトの中にいる可能性が濃厚だ。
そうすると、最初の候補は私を除いて7人……
しかし、翔と夏美は組になっているから、アルティメットポラリスがどちらにも気付かれず、体内に忍び込む隙は恐らく無いと思う。
第一、互いが互いを欲し求めている、言わば欲求願望丸出しの時点で、アルティメットポラリスを宿す資格が無い。
この2人も候補から真っ先に消そう。
あと、源人は自分にメリットがあるか否かで行動するような計算高い奴だ。私への虐めに加担する事はデメリットでしかないと思っていたのか、私を虐めたり遠目に見て笑ったりする事は全く無かったものの、用は何もしなかった訳で、自己犠牲も厭わないという点では完全に外れている。
こいつにもアルティメットポラリスは宿ってない。
となると、候補は4人という事になりそうだ。
確かに愛と誠は学級委員だったから、クラスでの争い事を収めるのに尽力していた。
涼平も喧嘩をしたところを1回も見た事が無かったし、誰とも気兼ね無く話していた。女子生徒への劣情も全く無さそうだったし。
そして琴美は、兎に角大人しかった。全然前に出て行かなかったし、私への虐めも嘲いも一切してこなかったし、「ああなりたい」「こうなりたい」というのも全く無かった。
う~ん……こっちもなかなか絞れないなぁ……
これも、これからの情報収集で明らかにしていくしか無さそうだ。
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あぁ、少し逆上せてきた。いろいろと考え過ぎて長湯しちゃったかなぁ。
頭がボーッとしてしまいそうなので、私はすぐに風呂から出る。肌に付いている水滴が一瞬で乾き、肌理が細やかでハリとツヤが出た肌と、艶やかで滑らかになった髪には、本当にうっとりする。
部屋に戻った私の足は、自然と片隅に置かれた大きな姿見の許に向かっていた。
私が姿見に吸い寄せられているかのように……
鏡の前に立つと、一糸纏わぬ生まれたままの姿の、鏡の中のもう1人の私が見詰めてくる。
童顔で水色の艶やかなセミショートヘアの少女……
やっぱり、いざ自分の生まれたままの姿を見ると、すごくドキドキしてくる……
気のせいだとは思うが、以前見た時よりも綺麗に、可愛くなっているようにも見える。
より女性らしい体付きになってる気がするし、胸も僅かに膨らみを増してる気がしなくも無い。
一糸纏わぬ生まれたままの姿でいる事で、私はツィーナフさんに奉仕をしているような気持ちになる。
事実ツィーナフさんは、こうしている事が、後に私自身の力を向上させ、天球界を救う事に繋がるはずだと言ってくれた。
今も部屋の何処かで、この姿の私を見ているはず。
今の私は、彼女の視線をハッキリと感じられる。
もっとツィーナフさんに見てほしい……
もっとツィーナフさんに見せてあげたい……
そう思った私は、以前のように片足を半歩引いて、背中の後ろで手を組んで妖艶なポーズを取る。
見られてると思うとすごく恥ずかしいけど、ツィーナフさんだったら全然嫌じゃない。寧ろ自分の為になるのなら、いくらでも奉仕してあげたくなる。
この瞬間に、間違って男の人が入って来たら間違いなく襲われるだろう。でも私は、ツィーナフさんが誰も入って来れないように、結界みたいなものを部屋中に張っているような気がした。だから私は安心して、鏡の前でそのポーズを取り続けた。
どれくらいの時間、鏡の前にいたんだろう……
私はポーズを解くと、一糸纏わぬ姿のまま、今度は暗闇の景色が映る大きな窓に近付く。
窓を開けてベランダに出て、夜空を見上げる。
以前見た時よりも、星の数は確かに増えているが、まだまだ暗い部分が広範囲を占めている。
私はそんな夜空を見据え、改めて心を落ち着かせて、ツィーナフさんに向けて話し掛ける。
「ツィーナフさん。私がこうして幸せに生きていられるのも、偏にあなたがレグルスの一等星の力を授けてくれたお陰です。本当に感謝しています。あなたが救ってくれなければ、私は現世に対して強い憎しみを抱き続け、罪の無い人達にまで危害を与えてしまった事でしょう」
一呼吸置いて、再び話し掛ける。
「私は、これからも滅亡した星座を復活させる為に、魔物を倒して核を回収し、そしてアルティメットポラリスが宿っているセレスチャルソルジャーを逸早く発見し、その者と共に、あなたにアルティメットポラリスを献上します事をここに誓います」
もう1度一呼吸置き、再度話し掛ける。
「この度は、いろいろと御教示いただき有難う御座います。このような姿でいる事でしか、あなたへの誠意は示せませんが、どうかこれからも変わらず、私を見守っていて下さい。宜しくお願いします」
最後に一礼をする。
暫くしてから頭を上げ、窓を静かに閉め、そのままベッドに横たわって眠りに就いた。
一糸纏わぬ生まれたままの姿なら、寝ている間もツィーナフが守ってくれる……そんな気がした。