09.敵を知り己を知れば
敵は異能者。相葉の所属することになった機関七課では便宜的に『超能力者』と呼称されている。
その正体は、わからない。ただ、人外の能力を持った者たちだ。その一端は、既に相葉も目にしている。
手を触れることもなく、それどころか十メートルも離れた物体を、潰す、砕く、捩じる。そのような力。
誰に、どのような条件で発現するのか、あるいは与えられているのかは不明だ。だが彼らがその気になれば世界に混乱をもたらすことも、殺戮の限りを尽くすことも可能であることだけが確か。
だが、相葉が所属することになった機関七課という組織、その全容は不明だった。
『機関七課』とは、それを未然に防ぐために、先んじて超能力者の存在を洗い出し、秘密裏に討伐することを目的に組織されたものであるという。
母体は不明。資金源も、組織全図も不明。
どうやら相葉がいるところが本部であり、下部組織が国内に散在しているという。だがそれぞれがどこにあるのか、そもそもこの本部がどこにあるのかも知らされていない。外に出ることが許されるのは作戦のときのみであり、それ以外は外部との接触を一切断たれている。作戦に向かうときも、目隠しのされたトラックで輸送されるため場所の特定は不可能だ。そして施設内部には一切窓がなく、テレビもネットもない。
ただそのような組織があり、超能力者を殲滅するという目的を有しているということ以外は、一介の兵士には知らされない。
ただ、命がけで超能力者を狩り、次の任務までを生きながらえる。
末端にとっては、ただそれだけの日常。