05.迫り来る死の気配
「――作戦終了。結界は五分後に解除。二分で戦後処理、一分で遺体収納と殉職者計測。一分で完全撤収。以上、復唱」
「作戦終了。結界は五分後に解除。二分で戦後処理、一分で遺体収納と殉職者計測。一分で完全撤収――以上」
納刀した少女の言葉を復唱したのは、一見したところその横で、拳銃を腰横のホルスターに仕舞った少女だけに思えた。だが実際は、もっと多くの人間が復唱したのだろう。どちらも己の耳元に、指先を添えていた。そこに、通信機でもあるのかもしれない。
だが、随分と込み入った命令を下したわりに、そしてそれを受け取ったわりに、彼の視界の中にいるふたりは、全く急ぐことなく、動かない。
「――まあ、遺体収容って言っても、こっち側で死体遺して死んでる奴なんて、いないんだけどねえ」
ライフルの方が、先程まで生きた人間だった血だまりを一望して、笑う。確かに――残っているのは、その彼らに銃殺された方だけだ。もっとも、そちら側にしたところでばらばらなのだが。
「いつものことだろう――この区画は、お前とカジだったな。カジはどうした?」
「死んだ」
「そうか。後でまとめて報告しておけ」
りょーかい、とライフルの方が軽い調子に頷く。――人が死んだ話をしているというのに、軽い。
ふたりがそうしている間にも、あちらこちらの路地からわらわらと、武装した人々が現れた――一見したところ、それぞれには武装しているということ以外に共通点が見当たらない。男も女も、少年も少女もいる。強いて言うなら、若者が多い、ということか。
一体、何の集団だ?
サバイバルゲームにしては――凄惨だ。
帯刀している少女が、集まった全員を一望して頷いた。
「よし、点呼は後だ。撤収する――と、そう言えば、クサカ」
「ん、なに」
「作戦開始直前にお前が言っていた、乱入者というのはどこだ」
「あ、そーだった」
忘れてた、とライフル少女は短く舌など出して見せた。それを見て、帯刀少女は呆れたように息を吐く。
「忘れるな。目撃者をただで帰すわけにはいかないんだから」
「わかってるって。えっと、どこだっけかな……生きていれば確か……」
ぶつぶつと言いながら、ライフル少女がこちらへ近づいてくる。
……どうする。
近づいてくる足音、命の危機に反射的に逃げ出そうともがくが、手足はがっちりと拘束されているのだ、動くわけがない。
……駄目だ。
脳裏によみがえるのは、ほんの数分前の惨劇。
狐狩りでも行うかのようにためらいなく、彼女らは人間を殺害した。凄惨に、殺した。ならば次は自分の番なのではないか――そう思い、予想し、しかし彼は全身から力を抜いた。
抵抗のしようが、ない。
諦めたのだ。
ただでさえ向こうは武装していて、対するこちらは丸腰の上に、既に手足を拘束されて満足に動くこともできないのだ。
となれば自分の命運は、もう彼女らの胸三寸。
できることは、ない。
そうして諦められること、それこそが、彼の生まれ持った奇妙なメンタリティだった。
叫ぶことも、暴れることも、しない。
受け止めて、受け入れて、諦める。よく言えば冷静で、悪く言えば鈍感。
そしてこのメンタリティが、彼を救う。救ってしまう。
地獄へと導いてしまう。
とはいえ。
……殺される。
死への恐怖が皆無というわけではない。いくら鈍くとも、恐れは生物としての本能だ。
足音は、近づいてくる。
……殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される――




