表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Blood/Bullet/Parade  作者: FRIDAY
肆 Black/Blast/Ballad
49/51

49.青天下の静寂

 岸田はすぐに見つかった。逃げているとしてもそう遠くへは行っていないだろう、天城に訊けばほどなくわかることだ、と天城に頼り切りな現状に少なくない情けなさを感じつつ、とりあえず最後に岸田を見たところまで歩いたところで、そこに転がる岸田を見つけた。

 逃げようがなかった。岸田は、両の脚、その膝から下を、綺麗に喪失していた。


「――ふん、君か」

 肩を久坂に撃ち抜かれ、両足を金木に焼き切られ、それでも岸田は尊大な態度を崩さなかった。


「思わぬ伏兵がいたものだ。恐るべきはせいぜい、筧と久坂だけだと思っていたのだがね」

「……別に、俺は恐れられるような人間じゃない」


 ただ、生き延びようとして、生き残って来ただけだ。筧や久坂と同じように。

 だが、それでも、と岸田は首を振った。


「これだけの戦場で生き延びるということが、既に異能とも言える才能なのだよ。ここに至って、無事でいる人間など、調べるまでもなく君だけだ」


 久坂は死んだ。筧は、安否はまだ確認のしようもないが、既に戦闘の音は聞こえていない。


「七課は壊滅した。超能力者どもにも相応の打撃を与えたと、私は信じている。そうとも、私は決して、自分の信念を曲げるつもりはない。超能力者をひとり残らず排除し、我々の平和を守る。それが私の信念であり、大義だ。そのための芽も、既に世界中に撒いてある」

「……世界中に」


 そうとも、と岸田は頷いた。


「超能力者にまつわる極秘資料。その多くは既に世界中の、我々七課と志を同じくする組織へ渡してある。この日本国内にもまた、機関七課の下部組織のみならず、同じような組織は山とある。七課だけが特別だったわけではない――超能力者との戦争は、こんなところでは決して終わらないのだ。奴らをこの地上から駆逐するその日までな!」


 カ、と目を見開いて岸田は言う。対して相葉は、初めこそ驚いたようにわずかに表情を変えたものの、またもとのそれに戻ってしまっている。

 冷たく、冷え切った表情。


「そうか」


 岸田の言葉に対して、相葉の反応は短かった。ふん、と岸田は鼻を鳴らす。

「惜しかったな。君もこちら側へついていれば、遠からずの安寧が約束されたというのに」

「そんな約束は、いらない」


 即答だった。


「俺にはもう、もっと優先する約束が、ある」

 それがなくとも、岸田の側につくことはなかっただろうが。


「……そうかね。本当に残念だよ」

 言葉ほど残念さの感じられない、蔑むような顔で岸田は言う。

「道は分かたれたというわけだ。そうなれば、することはひとつだ」

 ああ、と相葉は頷いた。そして再び、銃口を持ち上げる。

「あんたの道はここで行き止まりだ。だが俺は、俺の道を行く」


 歩き続ける。

 合図はなかった。


 それまで完全に脱力していた岸田の腕が跳ね上がり、隠していた拳銃が相葉へ向けられようとする。

 けれど、絶対的に相葉の方が早かった。

 銃声は一発。ごとり、と今度こそ力を失った岸田の腕が落ち、握られていた銃が滑り出る。


「――――」


 数拍、相葉は銃を構えたまま動かずにいた。だが、やがてそれも下ろす。

 ふ、と吐息した。短く吸って、吐く。


 見上げる。


 空は、憎たらしいほどに澄んで、晴れ渡っていた。

 虚空に響く音は、ない。耳に痛いほどの、静寂。

 ただ、緩やかな風だけが、動くもののなくなった戦場を撫でていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ