47.誰が為に君は戦う
「――天城さん」
久坂の遺体を、これからの戦禍の及ばない陰にまで運び終えた相葉は、静かに名を呼んだ。
周りには誰もいない。応じる声はない。
ただ、脳裏に返るのみだ。
『はい』
ずっと、天城は見ていたのだ。相葉を通して。久坂の戦いを、久坂の最期を。だから、
「手伝ってもらえるか」
相葉がそう言ったとき、天城は決して、何を、とは返さなかった。
わかっている。
相葉を通して戦いを見ていたのだから、相葉の思いも、およそ全てを知っている。
『――ええ』
首肯は、短く。
『私にできることを、私にできる限り……でも、ひとつだけ聞かせてください、相葉さん』
脳裏に響く言葉は、静かだ。
『これからの戦いは、あなたが生き残るための戦いですか? それとも……』
それとも。
相葉の心もまた、不思議なほどに澄んでいた。だから、一抹の迷いもなく、答えられる。
「違う。――もう、俺だけが生き残るための戦いじゃあ、ない」
聞いていただろう、と相葉は言う。
「約束、したから」
久坂と。
いつか生まれ変わってくる久坂が、平和に生きられる世界に変えてみせると。
「だからこれは、そのための戦いで……いや」
それだけでは、ないのかもしれない。
怒りもなく。
悲しみもなく。
けれど、
「仇を討ちたいっていう気持ちは……少しくらい、あるのかもしれない。だから決して、ただ大義のための戦いっていうわけじゃない」
大義なんてない。
私怨だな。
自嘲するように言い捨てた相葉に、今度は天城は何も言わなかった。
生まれ変わりなどを信じるのかと、野暮なことも。
私戦になんて付き合っていられないと、真っ当なことも。
ただ、そうですか、と頷くのみ。
『では――始めましょう、相葉さん。終わらせましょう……この、空しいばかりの戦争を』
ああ、と短く応じて。
相葉は静かに、踏み出す。




