42.最強の殿(しんがり)
崩壊し四散した瓦礫、もとは人間だったモノ。それらを間にして睨み合う新派と超能力者。
その中央に、突撃する。
「――行けっ」
筧の発声と同時に、相葉はまっすぐに飛び出した。背後には久坂と氣境が並び、最後尾を筧が走る。
走り出して十メートルも行かぬうちに、チュン、と銃弾が頬を掠める。わずかな熱が走るが構うことなく、同時に相葉は内心にカウントを始める。
筧の定めた手筈はこうだ。
筧の号令と同時に全力で飛び出し、本部へ向けてまっすぐに走る。気付いた敵が攻撃してきたら、その初弾から三拍数える。
あとは脇目も振らずに全力疾走だ。
一。
初弾から続いて次々とどこからともなく銃弾が降って来る。だが、前触れなく現れた相葉らに咄嗟に照準を合わせることなどできず、的外れな地面を抉るにとどまる。そのときに迂闊にも姿を見せた兵士は、すかさず久坂が撃ち殺す。
二。
『右前方に一歩です』
脳裏に響く天城の言葉に、考える間も空けず反射的に従う。相葉が一歩右に着地すると同時に、まっすぐ進んでいれば相葉が踏んでいたはずの地面が大きく抉れる。
超能力者の攻撃だ。
超能力による攻撃は、紙一重では避けられないものも少なくない。だからその都度天城が敵に干渉し、また相葉に回避のための指示を与える。後ろに続く久坂や筧は、培った戦闘経験で難なく躱していく。
三。
「――走れ!」
背後から筧の声、それに被さってバシュッという空気の抜けるような音が重なる。
その正体は一拍後に明らかになった。
左右、敵が隠れ潜んでいる瓦礫が爆砕した。
悲鳴、絶叫、怒号。その中を、相葉は駆け抜ける。疾走の間にも、爆発は重奏する。
一瞬とも数十分ともつかない短距離走を走り抜け、もとは堅牢な壁であっただろう場所から本部の内部へと飛び込む刹那、相葉は背後を盗み見た。
そこには、筧の背があった。
粉塵と、数百いるであろう敵を前にして、凛と、堂々とまっすぐに伸びた背が。




