17.考える時間
制圧作戦は最終的に、機関七課側の勝利で収束した。多大な犠牲者は出したものの、敵拠点を制圧、壊滅させ、かなりの数の超能力者を処分した。これまでのどの作戦と比較しても、戦禍、戦果ともに最大規模であるという。
そして作戦終了から数日を経た日、相葉は機関七課施設の地下、一角にある独房施設に収容されていた。
汚れてはいないが清潔とも言い難い四畳半ほどの空間。三方は壁、残り一面は鉄格子。向こうには廊下と、向かい側の独房が見える。そこにもまた、誰かが収容されていた。部屋の中には簡素なベッド、簡易なトイレ。それだけしかない。鉄格子越しに差し込む廊下の蛍光灯が、わずかな光だ。
拘留。
罪状は、味方殺しである。
戦後処理の精査の中で、相葉が長島を射殺したことはすぐに発覚した。しかし、戦場では味方殺しなどよくあることだから、大して気にすることもない、と久坂は言った。
「あんな乱戦の中じゃあ珍しくもないよ。私だって結構やっちゃってるし……直接殺してないだけで。盾にするのはノーカンなんだよね」
あの爆砕の中ですら飄々と生き延びてきた久坂は、しれっと、そんなことを言っていた。
実際、久坂の言うとおりであるらしく、数日から長くて一週間で釈放される。よくあることだが、何もペナルティを与えないというのはモラルの低下という面で問題があるから、形式的に罰則として行使されているだけだ。
さらに言えば、相葉に関しては情状酌量の余地が大きい――乱戦と、当時立ち込めていた密度の濃い煙の中で敵と味方の判別は難しく、誤射の危険は非常に高かった。白井を射殺したのが長島で、長島を撃ったのが相葉であることは、白井の銃創と相葉の残弾数から確実ではあったが、それは間に白井を挟んだ状況で撃ち合って、その結果そうなってしまったのだろう、と結論付けられた。
勿論、違う。
真相を、相葉は知っている。
だが、決して誰にも言わなかった。
わざわざ身の危険を受けに行く必要はない。
生活のしにくい独房と、極めて簡素な食事。常連らしき者も収容されていて、二日目には早くも毒づいていたが、相葉は何も言わなかった。不平も、何も。
ただ、考えていた。
黙って、静かに、考え続けた。




