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01.始まりの不幸
相葉・瀬音にとって何が不幸だったのかといえば、それは間違いなく『気が付いてしまったこと』の一点に尽きるだろうが、それと同等かそれ以上に大きなミスと呼べるものは、それに注視してしまったことと言えるだろう。だが、そうといってもやはり、誰も彼を責めることなどできはしまい。
誰だって、街中を、雑踏を、ライフルを背負って飄々と歩いていく女子高生を見たならば、注目せずにはいられなかったはずだ。
その姿を視認することができたものなら。
目を離すことなどできなかったはずだ。
だから、彼にとってのミスはやむにやまれぬものであったとはいえ――しかしやはり、彼は目を逸らすべきだった。
後悔しても後の祭り、というものだが。
それが出来なかったがゆえに、彼はどうしようもないままに、地獄へと引き込まれていってしまったのだ。
しかしそんな中で、ただひとつ救いを挙げるならば。
彼が地獄においても揺らがないメンタリティを持っているということだった。
――それが幸か不幸かは、彼にも、誰にもわからないが。