第1話 再会
初の投稿です。
読みにくい部分や誤字脱字などがあるかもしれませんが、読んでいただければ嬉しいです。
あの時から、私の時間は止まっていた。
あの人が姿を消してしまった、忘れようとしても、私の脳裏から離れないあの日。
時間が止まっていた間にも、季節は流れた。
そして、あの日をもう少しで忘れられそうだと思った直後。
私の中の時間は、また動き出した。
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「ごめん! 今日は先に行くね。クラス楽しみにしてる笑」
早朝に届いたラインは、梓からだった。
私は、きっと見られないであろうラインに、了解のスタンプを押す。
歯磨きを終えて部屋に向かった。
開いた窓からは、まだ少し涼しい風が入ってくる。
梓は先に行くのか……。
春休みが終わって、話したいことも沢山あったけど、仕方ない。
そう思いながら制服に腕を通す。
すると、携帯が着信音を鳴らした。
急いで制服を着て、画面を見ると、宙からだった。
「おはよう、宙。どうしたの?」
「今日一緒に登校できないかなーと思って」
「うん、大丈夫。今準備できたとこ」
「じゃあ出て来てよ。もう外にいるんだよね」
急いで窓を開けて外を見ると、玄関前に宙が立っていた。
宙は私を見上げて、いたずらっぽく笑った。
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「春休みも終わっちゃったね」と、歩き出してから宙は言った。
春休みが終わり、今日は始業式。
私たちは進級して、高2になる。
「葉月は、春休み何かした?」
私の隣を歩く宙は中学も同じで、高1の時同じクラスだった。
高1の夏に宙に告白されて、今付き合っている。
「ほとんど毎日部活だったから、どこも行ってないなぁ」
私が答えると、宙は「俺も」と笑った。
私はバレー部、宙はバスケ部に入っている。
春休みはどっちの部も練習ばかりで、宙とは体育館で顔を合わせるくらいしかできなかった。
「クラス楽しみだなー」と、宙は呟いた。
もちろん宙と同じクラスになりたいけど、確率は四分の1。
しかも高1で同じクラスだったから、離れていてもおかしくはない。
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校門が見えた。
昨日入学式を終えたばかりの1年生であふれかえっている。
高1の前をなんとか通り抜けると、後ろから高1の声がした。
「やばい、今の先輩、超カッコよかった」
「確かに背も高かったし」
「隣にいたの、まさか彼女かな」
宙は、バスケ部のエースだし、背も高い。
しかも、誰にでも優しいから、男女関係なく人気があるんだ。
同学年の子達は、宙と私が付き合ってることを知ってるから、皆友達として宙と接している。
でも、先輩や後輩はそんなこと知らないから、容赦なく狙っているらしい。
校門をくぐって玄関にきたけど、玄関も人でごった返していた。
靴箱の先に、クラス発表の紙が貼られているんだ。
「なかなかクラス見られないじゃん」と宙は苦笑いした。
「あっ、葉月ー!」
人混みの中で梓がこちらに手を振っていた。
私は宙と、なんとか梓のところまで行った。
「梓、クラス発表見たの?」
「まだ見てないー。同じクラスだといいけど」
それから少しして、私達はなんとかクラス発表の前に来ることができた。
私は2組だった。
でも2組に宙の名前も、梓の名前もなかった。
「あ、1組だ!」と梓が隣で声を上げた。
「あ、俺も1組」と宙の声もした。
「よろしくね、梓ちゃん」
「こちらこそよろしくー」と二人は会話していた。
2組に誰か知ってる人はいないのかな、と探していると、後ろから肩を叩かれた。
「今年も同じクラス。よろしく!」
陽だった。
陽は梓の幼馴染で、高1の時同じクラスだった。
私は知り合いがクラスにいたことにホッとした。
梓は陽がいることに気づくと、二人で話しながら教室に行ってしまった。
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「俺らも教室行こ」と、宙が腕を引っ張ってくれた。
人混みを抜けて、廊下を歩く。
「クラス離れたね……。残念だなぁ」
私が正直に呟くと、宙は笑顔で答えてくれた。
「俺もクラス離れて残念だけど、まぁいつでも会えるし。隣の教室だからさ」
そして、静かで普段から人通りの少ない階段を並んで上がった。
宙とも梓とも離れたせいか、足が重く感じられた。
まぁ、陽はいるんだけど……。
踊り場まで上がると、上から一人の男子生徒が下りてきたので、私達は左に寄った。
下りてきた男子生徒は、見た目、宙と身長も変わらないくらいで、同じ高2だと思った。
でも、見覚えのない感じだった。
黒くて細い髪が、とても繊細な感じがした。
そして、その男子生徒が私の右を通った瞬間。
彼とすれ違った瞬間。
私は立ち止まってしまった。
「……葉月? どうかした?」
宙が上からこちらを向いた。
だって、だって……。だって。
あの透き通った涼しい目。
奥に優しさが隠れた目。
真っ直ぐに前を見つめる、力強い目。
あの頃と同じ、変わらない、優しい香り。
なんでここにいるの……? でも、そうだよね……?
隼人……。