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メモリーズ。  作者: ひよこ丸
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第1話 再会

初の投稿です。

読みにくい部分や誤字脱字などがあるかもしれませんが、読んでいただければ嬉しいです。

あの時から、私の時間は止まっていた。


あの人が姿を消してしまった、忘れようとしても、私の脳裏から離れないあの日。


時間が止まっていた間にも、季節は流れた。


そして、あの日をもう少しで忘れられそうだと思った直後。


私の中の時間は、また動き出した。



********************************


「ごめん! 今日は先に行くね。クラス楽しみにしてる笑」

早朝に届いたラインは、(あずさ)からだった。


私は、きっと見られないであろうラインに、了解のスタンプを押す。


歯磨きを終えて部屋に向かった。

開いた窓からは、まだ少し涼しい風が入ってくる。


梓は先に行くのか……。

春休みが終わって、話したいことも沢山あったけど、仕方ない。


そう思いながら制服に腕を通す。

すると、携帯が着信音を鳴らした。


急いで制服を着て、画面を見ると、(そら)からだった。


「おはよう、宙。どうしたの?」

「今日一緒に登校できないかなーと思って」

「うん、大丈夫。今準備できたとこ」

「じゃあ出て来てよ。もう外にいるんだよね」


急いで窓を開けて外を見ると、玄関前に宙が立っていた。

宙は私を見上げて、いたずらっぽく笑った。


--- * ---


「春休みも終わっちゃったね」と、歩き出してから宙は言った。


春休みが終わり、今日は始業式。

私たちは進級して、高2になる。


葉月(はづき)は、春休み何かした?」


私の隣を歩く宙は中学も同じで、高1の時同じクラスだった。

高1の夏に宙に告白されて、今付き合っている。


「ほとんど毎日部活だったから、どこも行ってないなぁ」

私が答えると、宙は「俺も」と笑った。


私はバレー部、宙はバスケ部に入っている。

春休みはどっちの部も練習ばかりで、宙とは体育館で顔を合わせるくらいしかできなかった。


「クラス楽しみだなー」と、宙は(つぶや)いた。


もちろん宙と同じクラスになりたいけど、確率は四分の1。

しかも高1で同じクラスだったから、離れていてもおかしくはない。


--- * ---


校門が見えた。

昨日入学式を終えたばかりの1年生であふれかえっている。


高1の前をなんとか通り抜けると、後ろから高1の声がした。

「やばい、今の先輩、超カッコよかった」

「確かに背も高かったし」

「隣にいたの、まさか彼女かな」


宙は、バスケ部のエースだし、背も高い。

しかも、誰にでも優しいから、男女関係なく人気があるんだ。

同学年の子達は、宙と私が付き合ってることを知ってるから、皆友達として宙と接している。

でも、先輩や後輩はそんなこと知らないから、容赦なく狙っているらしい。


校門をくぐって玄関にきたけど、玄関も人でごった返していた。

靴箱の先に、クラス発表の紙が貼られているんだ。


「なかなかクラス見られないじゃん」と宙は苦笑いした。


「あっ、葉月ー!」

人混みの中で梓がこちらに手を振っていた。

私は宙と、なんとか梓のところまで行った。


「梓、クラス発表見たの?」

「まだ見てないー。同じクラスだといいけど」


それから少しして、私達はなんとかクラス発表の前に来ることができた。


私は2組だった。

でも2組に宙の名前も、梓の名前もなかった。


「あ、1組だ!」と梓が隣で声を上げた。

「あ、俺も1組」と宙の声もした。


「よろしくね、梓ちゃん」

「こちらこそよろしくー」と二人は会話していた。


2組に誰か知ってる人はいないのかな、と探していると、後ろから肩を叩かれた。


「今年も同じクラス。よろしく!」

(よう)だった。

陽は梓の幼馴染で、高1の時同じクラスだった。


私は知り合いがクラスにいたことにホッとした。


梓は陽がいることに気づくと、二人で話しながら教室に行ってしまった。


--- * ---


「俺らも教室行こ」と、宙が腕を引っ張ってくれた。

人混みを抜けて、廊下を歩く。


「クラス離れたね……。残念だなぁ」

私が正直に呟くと、宙は笑顔で答えてくれた。

「俺もクラス離れて残念だけど、まぁいつでも会えるし。隣の教室だからさ」


そして、静かで普段から人通りの少ない階段を並んで上がった。

宙とも梓とも離れたせいか、足が重く感じられた。

まぁ、陽はいるんだけど……。


踊り場まで上がると、上から一人の男子生徒が下りてきたので、私達は左に寄った。


下りてきた男子生徒は、見た目、宙と身長も変わらないくらいで、同じ高2だと思った。

でも、見覚えのない感じだった。

黒くて細い髪が、とても繊細な感じがした。


そして、その男子生徒が私の右を通った瞬間。


彼とすれ違った瞬間。


私は立ち止まってしまった。


「……葉月? どうかした?」

宙が上からこちらを向いた。


だって、だって……。だって。


あの透き通った涼しい目。


奥に優しさが隠れた目。


真っ直ぐに前を見つめる、力強い目。


あの頃と同じ、変わらない、優しい香り。


なんでここにいるの……? でも、そうだよね……?


隼人(はやと)……。

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