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第四十話 話した

「―というわけで、幼い子に手を出すのは非常にまずいのです。分かった?」



 私がぽろっと口にした「幼女いいよね」的な発言を受けて急遽開催された、セレナの『幼子を邪な目で見てはいけない理由』講義。


 その内容はつまるところ、幼子は、身体が未発達だから生殖やら何やらの行為を行うのは良くないという事、また精神も未発達で、自分の体がまだそういった情事に適していない事や悪い人に騙される危険性なんかを理解していない事とかに終始していた。


 先の私の発言は人の社会ではかなり、なんていうか……やばい?というか、変態的なそれだったらしく、食事を口にしながらセレナが、その危険性を変に真面目な顔で説いてくれた。



「ミーニャがあの子に妙に懐かれてるのは分かるけどさ」


 懐かれてる…まぁ、懐かれてる、かな?


「あの年頃の子っていうのは、憧れとか信頼とか、恋愛とか、そういうのの違いがよく分かってないから。「ミーニャおねえちゃん…好き…好きなの…」とか言われても、本気にしちゃだめだよ?」


 知ったような口ぶりのセレナだがしかし、実際のところ彼女もまた恋愛のれの字も知らないわけで。

 そんなセレナが得意げに恋だの愛だの言っているのは中々面白おかしく、そしてまた可愛らしくもある。

 なんて、私も言えた事ではないけれど。



 ていうか、そんな情感たっぷりに「好き…」とか言われた事は無いかな。

 そもそも、私の「幼女いいよね」発言はあくまで可愛らしいというか癒されるというか、まぁ概ねそんな感じの意味合いなのであって、恋愛とか性行為とか、そういう方面を意識して言ったものではない、と思う。多分。

 いや、私は未だに家族愛や友愛、恋愛とかの違いを得心していないのだから、一概に言い切る事は出来ないけれどね。



「いやー…ミーニャはこのところ、私達だけでは飽き足らずあの姉妹にも手を出そうとしてるって、カナエさんが言ってたからね……」


 そう言えば、カナエがノムに警告していたみたいな事を、さっきレムの方が言っていたっけ。

 私は仲良くなるとあちこち身体を触ろうとしてくるから気を付けろー、って。


 全く失礼な話だ。

 私が彼女達の耳を触ろうとしているのは、単に仲良くなったからというだけではなく、いくつかの要素が複合的かつ複雑に絡み合った結果としてのものだというのに。


「へー…」


 うわ、凄い信頼していない目だ。


 いい?

 まず、今まで私が、耳を触れるほどに仲良くなった獣人がカナエしかいないという事。そのカナエの耳が狼系のものであるのに対し、件の姉妹は形が全く違う熊系の耳であるという事。この2種類の耳の触り心地なんかを比べたくなるのは、好奇心の徒として当然のものであるという事。

 これらの深遠な命題に、彼女達と仲良くなったという身体的接触が許されそうな要素が加わった事によって……


「好奇心が暴走したと」


 そう好奇心が……いや、別に暴走はしていない。断じて。


「そして幼女に手を出そうとしたと」


 してない。動作として手を伸ばしたのは事実だけれど。決して如何わしい意味ではなく。


「カナエさんとレムで二股……姉も含めれば三股だね」


 違うってば。ていうかどんどん酷くなっていってない?

 それにその言い方だと、私とカナエがそういう関係って事になるのだけれど。


 なんていう、私の冗談交じりの発言にセレナが返した答えは。





「……いやー…どうなんだろうねー…」





 え、何その、含みのある言い方。

 あれ、冗談じゃないの?




「いやまぁ私も、現時点ではそういう関係だとは思わないけどね」


 スプーンをくるくる回しながら、何とも言い難いような表情を作るセレナ。

 どうも少し真面目な話だった、というか、真面目な話になったようだ。



 ならば私も真面目に考えるけれど。

 実際のところ、正直私の方もカナエとそういう関係だとは思った事はない。



 それは勿論、カナエとそう(・・)なるのが嫌っていうわけではなくて。

 再三考えている事だけれど、私は友人関係と恋愛関係の違いがよく分かっていないのだ。


 性交の有無?

 でもそれは、私が触手であるが故に、そう単純な話ではないと思う。人にとっては性交にあたる行為でも、触手にとってそれは食事でしかない。




 となるとやはり、好きという気持ちの方向性というか、質、のような部分が肝になってくると思うのだが。

 私は未だにそれが未分化だ…と、思う。


 セレナとカナエに対して抱いている好意は、家族愛なのか友愛なのか、恋慕の情なのか。今だ私の中で、はっきりとした答えは出ていない。

 道行く先で、夫婦や恋人同士なんていうのは、何度も目にした。その彼ら彼女らの雰囲気と私達のそれは、確かに似通った部分もあると思う。

 でもその一方で同じく何度も目にしてきた、仲の良い友人同士の関係。それらもまた、私達と同じような感じがした。




 それに、私達は同性同士。

 私はまだ、同性同士の恋愛が成立し得るのかについても、これまた明確な結論は出せずにいる。

 とは言ってもこれに関しては、あってもいいんじゃないかなー、とは思っているけれど。

 だって、私のセレナとカナエへの気持ちがもし恋愛感情だったとしたら、それを否定されるのは、なんだか凄く癪じゃないか。



…というのはまぁ、あくまで私の考えであって。世間的にはやはり、あまり主流ではない考え方だというのも、何となく分かってきてはいるのだが。少なくとも今のところ、男同士、女同士の夫婦…いや、『夫婦』って言えるのかなそれは……とにかく、そんな関係の人達を目の当たりにした事はない。




…でも。でもですよ?

 そもそも『同性間の恋愛』という概念が存在するという事は。やっぱりそれに当てはまる人達が、この世界には必ずいるはずではないかと、そう思うのだ。

 私が旅の中で垣間見てきた、仲の良い同性同士の友人とか、パーティとか。もしかしたらそれは、私が友情と恋心を見分けられないから友人同士に見えていただけなのであって、本当はそこに、世間にはひた隠しにしている同性同士の恋愛が成立していたのかもしれない。


 そう考えると、人を見る目とかも変わってくるっていうか。

 たまに、妙に仲良さげに手なんか繋ぎながら歩いている女の子同士を見かけると、なんか、こう。

 無性に、「頑張れっ」みたいな。そんな気持ちになってきたりしませんか。



…というのはまぁ、あくまで私の考え……って言うのも2回目か。 

 とにかく、私は同性同士の関係を『あり』だって考えていたとしても。


 カナエの方もそうだとは限らないわけだ。

 むしろ、前に同性間の恋愛について聞いてみた時に戸惑っている様子だったから、あまり肯定的ではないのかと思っていたのだけれど。セレナ共々。




「私はー…今はまだ、考え中」


 そっか。

 でもあれだよ?セレナがこっち側に来たら、もれなく私が付いてくるよ?


「今でも付きっきりじゃん」


 まぁね。


「ていうかそうなったらそれこそ、二股じゃないの?私とカナエさんと」


 そうなのかな?

…うん。もしかしたら、そうなのかも。


「あれ、あっさり認めるんだ。さっきは三股否定してたのに」


 あれはあくまで、熊耳姉妹に手を出そうとしている事を否定したのであって。

 セレナとカナエならむしろ両方が良い。だって、今でも3人一緒にいるんだし。


「……その辺の考えとかもじっくり聞いてみたい気もするけど…それはまた別の機会にするとして」



 そうそう、今はカナエの話だった。


 えっと、つまり私としては。

 好意の程度はともかくとして、関係の形で言ったら私とカナエは別に、恋人同士?みたいな感じではないと思っていたのだけれど。



 なんていう私の言葉に対して、セレナはやはり神妙な表情をしながら、


「…いい機会だから、一応言っておくけど…」


 なんて言ってくる。

…そういう言い方されると、こちらも思わず身構えてしまうというか。



「耳を触らせるって実際、結構重要な事らしいよ」


 獣人における耳の重要性。

 それ自体は私も、知ってはいる。



 でも、カナエは割とあっさり触らせてくれたものだから、今一どのくらい重要なのかがよく分からない。病気についてと同じで、重要だっていう実感が湧かないのだ。

 勿論、触らせてくれた事自体は嬉しいけれど。 



「私もね、重要だ重要だって聞かされても、実際よく分かってなかったから。カナエさんがミーニャに触らせたとき、言うほどでもないのかなって思ったんだけど」


 どうやらセレナも、そこに関しては同じように思っていたらしい。



 初めて触らせてもらったのは、私が獣人に扮する事になったとき、獣耳を忠実に再現するためという口実でだ。その時のカナエはかなり恥ずかしがっていたとはいえ、それほど気負ってはいなかったというか……重大な出来事であるかのようには、振る舞っていなかったと思う。



「うん、だから私ね、そのあと聞いてみたの。耳触らせちゃっても良かったのー?って」


 え、そうなの?

 いつの間に。


「私達、ミーニャが寝てる間に、2人でいろいろ話したりするんだよね」


…えー。

 もしかして私、除け者にされてる?


「ふふん。2人で話したい事とかも、それなりにあるもんなんだよ」


 片目をパチンと閉じながらの、ちょっと意味深な物言い。


 なんか、少し寂しいんだけど。

 なんだよー。2人だけで仲良くしやがってー。


「まあまあ。中身はほとんどミーニャに関する事だから」



……


………それなら、まぁ……許さない事もない、けど。


「…ミーニャってあれだよね。割と寂しがりやっていうか」



 それは、うん。

 自分でもこのところ、そんな気がしないでもないような感じはあるというか。

 

 一人で旅をするつもりだったのが嘘のように、今の私はセレナとカナエに精神的に依存してしまっている面があるというのは、否定できないところだ。


「最初は、私のこと置いていこうとしてたのにね。なんでだろうねー」


 本当、なんでだろうか。

 特に劇的な何かがあったわけでは……や、まぁ死にかけたり凄くやる気無くなったりした事はあったし、その度に2人に助けられたのもまた事実だけれど。

 それはそれとして、いつの間にかこんなにも2人が心の拠り所になっているのは、一体何故なのだろうか。


「こっちとしては、結構嬉しいんだけどね」


 言葉通り嬉しそうに、そして何故か少し得意げに、そんな事を言うセレナ。

 昔は、セレナの方が私にぞっこんだったのに。今ではすっかり逆転してしまっているような気がする。


「私は今でも……今の方が、ミーニャの事ちゃんと好きだって思ってるよ?」


 それは分かってるけど。

 でも、セレナの方からくっ付いてくる事は、あんまりなくなったじゃん。


「だから『ちゃんと』なんだよ」


…よく分からない。『ちゃんと好き』ってなにさ。


「なんだろうねー」


 なんだか、押しても引いても駄目そうな返答が帰ってきた。



 このところセレナはたまに、今みたいに不思議な感じになる時がある。

 いつもの元気な、言い方は悪いけれど能天気なセレナとは違って、どこか飄々としていて妙な感じ。

 別に怒っているわけではないし、このセレナもそれはそれで良いんだけれど。






「…って、また脱線しそうになってる」


 おっといけない。

 えっと、なんだっけ。


「えーと…そうそう、カナエさんに耳のこと聞いたって話」


 そうだったそうだった。

 で、カナエはなんて答えたの?



「いつも汗あげるのを拒んでるからその代わりに、って」



…う、うーん?


 汗の代わりに耳?

 よく分からない。



 確かにカナエは今も、私が彼女の汗を貰おうとすると顔を真っ赤にして拒否する。でもそれは別に嫌悪からとかではなくて、彼女がそういう方面で物凄く恥ずかしがり屋だからだろうっていうのはもう分かっているし、むしろ最近ではどっちかっていうと、私が近寄る→カナエが拒むという一連の動作そのものが1つのお約束みたいになっているというか。それはそれでカナエと仲良くなれてる証拠だと思うから、私的には全然気にしていないというか。

 勿論、汗をくれるというのなら喜んで頂戴するけれど、くれないからどうこう、というほどの事でもない。

 だから、そんなに気にする事でもないのだけれど。



 汗の代わりに差し出すって事は、やっぱりそんなに重要でもない、のかなぁ…


「いやいや、逆だよ逆。むしろすっごい大事だって分かった」 


 そうなの?

 すっごい大事だったら、やっぱり汗の方を差し出すんじゃない?いや絶対にどっちか差し出せって言ってるわけではないけれど。


「あのね。ミーニャは汗貰ってるのが私だから、いまいち実感できてないんだと思うんだけど」


 む。また『実感』という言葉が出てきた。

 知識と意識の乖離というのは、こうもいろんなところに転がっているものなのだろうか。



「そもそも、触手に体液吸われるって、本来はかなり恥ずかしい事なんだよ?」


 喜々として触手に近寄ってきた人に言われても、驚くほど説得力が無い。


「うん。多分私も、ていうか私達の村のみんなも、どこかしらおかしかったんだと思う」


 正体を明かした時にまともな反応したのって、お母様くらいだったしね。


「触手なんて見た事なかったっていうのもあるし、よそとの交流もあんまりないから、普通の人達の間で触手がどれくらい怖がられてるか、よく分かってなかったんだよね」


 はい、ここでも『実感』。



「その辺もカナエさんに聞いたんだけどさ。触手が本気出したら、もう、すんごいって噂らしいよ。それこそ、ミーニャが持ってるやらしい本が誇張でも何でもないくらいには」


…あの本だと最終的に、精神に異常をきたしたのではないかってくらいに大変な事になっていたけれど。


「うん、いくとこまでいっちゃうとホントにそうなるって話」


…そんなに凄いの?触手種って。


「触手の出す媚毒とか、滅茶苦茶強力らしいよ?」


 私、媚毒とか出せない。


「出せてたら私が大変な事になってただろうね…」



…正直、性に関する知識を身に付けてからは。

 あの本に書いてある事は、触手に対する嫌悪感とかはともかく、表現なんかはかなり大げさに書いてあるものだと思っていたのだけれど。

 どうやらそうでもないらしい。




………ちなみに、セレナはどうなの?私にされるとき。


「………くすぐったい…かな。ミーニャ、私の汗貰うときとか、すごく気を使ってくれてるでしょ?」


 それはまぁ……お母様から、女性の肌は丁寧に扱うように教わったから。 


「そのおかげで、そんなにその………すごい感じ、にはなってないけど」


 そっか。それは良かった、の、かな? 


「うん。おかげさまで…」



……


「……」


……


「……」


……




「……って、また話が逸れちゃってるよ!」



 ごめんごめん。


 とにかく、私が思っている以上に、触手は怖がられてるって事だよね。


「そうそう。カナエさんは一緒に過ごして、ミーニャが良い『人』だって知ってるから、怖がったりはしてないんだけど……要するに、滅茶苦茶恥ずかしいんだと思う」




 人は、快楽を得る事に羞恥を覚える。


 私がそこまではしないって分かっていても、気が狂うほどの快楽を与える事が出来る触手に体を許すっていうのは、本来ならば相当な羞恥心を伴うもの。

 カナエが頑なに私に汗をあげる事を拒む理由はそこからきている、って事だ。


「そう。いくら仲良くなったって言っても、今まで生きてきた中で染みついたイメージとかを完全になくすのは、難しいんだろうねー」


 それはもうある意味で、仕方のない事だろう。



「でも、その一方でカナエさんは、ミーニャにとって体液を欲しがる事がどういう意味なのかも、よく分かってる」


 触手種ではなく、私個人としての、体液の意味。

 私が特定の誰かに対して体液を欲しいと思ったのは、セレナとカナエの2人だけ。


 さっきは、別に拒まれても気にしないといったけれど。

 これは本当に、文字通り「拒まれても構わない」という意味であって、体液を欲しがるという欲求そのものは、私の中でとても重要な意味を持っている。


 カナエとセレナの、たった2人だけ。他の人への好意とは違う、特別な『好き』の証。

 いつかそんな話をしたのを、カナエは覚えていてくれたみたい。



「だからカナエさんからしたら、汗をあげるのはすっごく恥ずかしいけど、でもずっとそれを拒否し続けるのは、ミーニャからの熱烈なアプローチを拒み続けてるみたいな感じで……ちょっと気にかかってたみたい」


 熱烈なアプローチって。

…いや、でも、そういう事になるのかな。


「カナエさんも大概、ミーニャのこと大好きだから」


 うん。それは知ってた。


「なかなか言うね」


 まぁね。


「……続けるよ。そんな感じで、ミーニャに対してちょっと申し訳なく思っていたカナエさんは、汗の代わりに獣耳を差し出すことで、ミーニャの欲望を抑え込もうとしたのでした。めでたしめでたし」


 結果として、私の欲望はますます肥大化する事になったけれど。



「それはミーニャが悪いね、完全に。……んで、えーっと確か…「今はまだ羞恥心が勝ってしまっていますが、いつかは、その…………で、ですので、この耳はそのための担保、の、ようなものです……」だったかな」



 担保というからには、相応の価値が無くてはならない。

 私にとって体液を求める事が重要であるのと同じように、獣人(カナエ)にとっては耳を触らせる事もまた凄く重要で。

 私の体液接種の重要性を理解した上で担保として耳を差し出したという事そのものが、カナエにとって耳に触れさせるのがいかに重要な事であるかを示している……って感じかな。


「そうそう、そういうこと。かなり特殊なケースだけど、だからこそ獣耳の大事さが分かるっていうか。あ、ちなみに。耳を触らせる相手は無二の親友とか死線を潜り抜けた戦友とか具体的にいろいろあるらしいんだけど……一番重要な相手は『生涯の伴侶』なんだってさ」


…カナエはどの意味で、私に触らせてくれたんだろう。


「私の見込みでは、全部混ざってるんじゃないかなーって。いまはまだ、親友とか戦友とかの意味合いが微妙に強そうだけど」



…な、なるほど。

 いや、でもあれじゃない?流石にいきなり生涯の伴侶とかはなんか、気が早くない?ほ、ほら、私達出会ってまだ1年くらいだし。私たしかまだ4歳くらいだし。


「…急に弱気になったね。びっくりしちゃった?」


 べ、別にっ。ぜ、全然驚いてないし。

 思ったよりずっと好意持たれてるっぽくてちょっと嬉しかっただけだしっ。

 無暗に人の獣耳追いかけるのは止めようって思っただけだしっ。


「うんうん。そういうのもミーニャの可愛いところだよね。………ていうか、これやっぱカナエさんも同性同士でも『あり』って事なのかなぁ。いやむしろ、ミーニャだからありって事かな…」


 そ、それを言ったら私だって、女性同士だから『あり』なんじゃなくてセレナもカナエも女性だから同性でも『あり』って思うようになったんだしっ。

 私の方が先ですーっ。

 

「だいぶびっくりしてるね」


 全然驚いてないしっ。


「うん、取りあえずそのすんごいうねうねしてる髪の毛落ち着けようか。そろそろカナエさん帰ってくる頃だよ」


 久しぶりににやにやしながら私の事を見つめてくるセレナに言われて初めて、自分の触手(髪の毛)が荒ぶっている事に気づいた私は、慌ててそれを鎮めようと手で撫でつける。

 って触手なんだから直接操作すればいいんじゃんっ。


「やっぱり、ミーニャはかわいいなぁ。あ、今日の話は、カナエさんには内緒だよ?」


 セレナはまるで悪戯が成功した時の子供のような、何処かレゾナを彷彿とさせるような笑みでしれっとそう言ってのけた。

 くそぅ、病人のくせにっ。


 ああもう、ちょっとカナエと顔合わせにくくなったじゃんっ。





















「ただいま戻りました。いや、今日はなかなか面倒な魔獣に遭遇しました…」


「ほらミーニャ、カナエさん返ってきたよ」


「……おか、えり……」


「ミーニャさん、なんだか喋り方が以前のように…ってちょっミーニャさん!?」


「わお大胆」


「カナエ、ぼろぼろ…!怪我してない?」


「ああこれは……ローブは裂かれてしまいましたが、私自身は掠り傷ですよ」




 顔合わせにくいとかなんとか言っても、結局。


 私達の為にローブがぼろぼろになるほど頑張ってくれたカナエに思わず抱き着かん勢いで駆け寄ってしまうのは、仕方のない事だと思うのですよ。ええ。




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