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月下美人は装う

ちょっとシリアス回です…

それぞれの思いが交錯し始めています

「私は重い病気で、ここまで生きてこれただけでも奇跡なんです。ですが、最後に友達が欲しくて。学校にはほとんど行けなかったので…。」


そう話して目を落としたノノカからは、少し寂しさが感じ取れた。


「カエデさん、よかったら私とお友達になってくれませんか?正当な報酬はお払いします。私が死ぬまでの短い間で構いません。」


ノノカの必死な様子に心苦しさを覚えながらもカエデはこう答えた。


「すいません、ノノカさん。少しの間だけ待ってくれませんか。あなたの時間がないことはわかっておりますが、気持ちの整理をしたいので。」

「そうですか、ありがとうございます。今日のところはお引き取りください。気持ちの整理がついたらこちらに連絡してください。」


カエデを見るノノカの目はどこか寂しそうだった。



「はぁ、疲れたぁ〜。帰ってゆっくりしよう。」


ノノカの屋敷から出たカエデは、すぐに自宅のアパートへ戻ることにした。アパートへ戻るとカエデはさっきの橘ノノカについて考えることにした。(しかし、友達募集とはいうが、つまり看取り人になれってことだよな…)


カエデは中学生の頃に弟のユウトをなくしていた。事故だった。飲酒運転とか麻薬中毒者とかいうわけではない。ごくごくありふれた見通しの悪い交差点でユウトは、制限速度を少しだけ上回ったごく普通の乗用車にはねられてなくなった。

家族は悲しんで泣いていた。カエデは家族の中でも特に事故現場を目撃したこともあり、すごいショックを受けた。


しばらくはユウトがなくなったことが信じられず、カエデは家族にユウトのことを聞いたり、彼の部屋に入っては幻の彼と妄想の中で会話さえしていた。他にも、彼のために服を買ってきたり、好きな番組の予約をしていたりした。


(今から死ぬ人を看取るってことはまたあの思いをしないといけないってことだよな…)

いまだユウトの死すらも受け入れることができていないカエデは迷っていた。(他の人はどう思っていたんだろう…。あの老人の人とかノノカさんのご両親とか…)ノノカの親について考えたとこで、カエデは自分の両親に久しぶりに電話してみることにした。


「久しぶり、母さん。今、大丈夫?」

「久しぶりね、カエデ。一人暮らしはどう?困ったことない?友達とかできたの?」


久しぶりに電話した母親から質問攻めにあったカエデは、頃合いを見計らって聞いてみることにした。


「母さんはユウトがなくなった時に、近くにいたいと思った?」

「いきなり、どうしたのカエデ…。もしかして、まだユウトが見えるの?」

「いや、最近は落ち着いてきたんだけど…。ふと、気になって。母さんはユウトを看取りたかった?」

「そうね…。看取りたかったというのは本音だし、もっと話すこともあったわよ。だけど、一緒にいたらもっと悲しんでいたかもしれないわね…。あなたを見て一番そう思うわ。」

「そっか、やっぱり看取るのは辛いことなんだよね…。下手に知って悲しむよりも知らない方がいいかもしれないね。」


電話を切ろうとしたカエデは、母親の言葉によって遮られた。


「だけどね、カエデ。その人と関わることは確かに悲しいことかもしれないわよ。だけどね、相手からしたらどうかしら?ユウトのように事故で亡くなった人は予測できないかもしれないけど、病気で亡くなる人だったら、その人の最後まで付き添ってあげることも大切なことよ。人は一人では生きていけないの、病気の人は特によ。あなたが関わることで救われる人がいるかもしれないわよ。」


「………。」

「カエデ?大丈夫、聞こえてる?」

「……。母さんは、ユウトが幸せだったと思う?」

「私は少なくとも幸せだったと思うわよ。事故という形でおわってしまった短い人生だったかもしれないけど、あの子と過ごした日々はとても楽しかったわ。」

「そっか…。母さん、ありがとう。今度ユウトのお墓に行って見るね。」


母親との電話を終えたカエデは、どうするか決心し翌朝に再びあの屋敷を訪れることにした。



「ダメかもしれませんね…。まあ、内容が看取り人になれってことですからね。」


二ノ宮カエデと名乗る人物が部屋から出て行くと、ノノカはふとため息をついた。


「気を落とさないでください。お嬢様。この爺はあなたの最後まで付き添いますぞ。」

「ありがとう、爺。こんな茶番に手伝ってくれて。」


自虐的になり始めているノノカを見て、爺は必死に励ました。


「いえ、あの少年も何か事情があるようでしたからね…。

もしかするといまだに引きずってる軟弱者かもしれませんぞ。」

「あら、爺。あなたも人を見る目がなくなったわね…。あの方は強く生きていらっしゃいますわ。なかなかできませんもの、亡くなったものを忘れずに生きていこうとするのは。」

「確かにそうですな…。片時も一人の人間のことを忘れないでいこうとするのは、もはや自分の人生を放棄することに等しいですからな。」

「それとね…。惜しいことをしましたわ、あれほど中性的で可愛らしい男の子は見つからないですもの。」


そうやって、クスクス笑ったお嬢様を見れただけでも、この求人はやった甲斐があったと思う爺であった。



毎日更新できるといいんですが…

短い話なので、スラスラ読めると思います

その分書きやすいです!

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