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■4×Secret of really heart■


■4×Secret of really heart■



スーツの胸ポケットの中で振動しながら、ピピッという機械音が鳴る。

やはり昨夜は血を吸いすぎたらしく、いつの間にかセノはまた眠ってしまっていた。遊月はぐっすりと眠る彼女を抱きかかえベッドに寝かせると、毛布を掛けそのまま部屋を出る。

部屋から出るなりスーツから取り出したのは、片手にすっぽりと収まる銀色のチップ。振動したままのチップを耳に当てると、微かに声が聞こえてきた。


「はい、黒唯です…………………えぇ…………そうですか………………はい…………分かりました……………では…………」


チップを胸ポケットに仕舞うと、ため息を吐き出してセノの眠る部屋に戻る。

スヤスヤと眠るセノの額に、角張った手のひらを押しつけるように軽く乗せる。


「俺が戻るまで大人しく眠ってろよ」


独特の声音で甘く囁くと遊月の手のひらが、青白い光を放った。



■■■■■■■■■



灯りのない真っ暗なその場所。水に根を生う桃色の水桜の花が咲く木々の間、遊月は一人で歩いていた。

花弁には淡い桃色の光が灯り、その光が辺りを照らし出している。無風なはずのその場所に行く手を阻むかのように、無数の水桜の花弁が舞っている。

目的地である黒い屋敷が目の前に見えて来たので渋々、緩く締めていたネクタイを上げて前の釦を全て止める。


「いらっしゃい、黒唯」


今まで舞い散っていた無数の水桜の花弁が一瞬で消え去る。暗闇の中にカツン、カツンと一定のリズムを刻みながら姿が見えないその音は遊月の元へと近づいてくる。


「血神様自らお出迎えとは、香良[カラ]様、ご機嫌麗しゅう御座います」


姿が見えぬ相手、声からして誰だかはすぐに分かった。だからこそ、遊月はその場に片膝を付く。


「……さぁ行きましょう、黒唯」


遊月の頬に伸びた手のひらが、その輪郭を撫でる。


「仰せのままに」


遊月が自らの頬を撫でる手のひらに、自らの手のひらを添えて恭しく口付ける。

水桜の花弁にまた光が灯り、辺りを照らし出す。遊月の目の前には彼を見下ろす様に立っている女性の姿。

腰まである真っ白な雪のような髪。輪郭を縁取るように切られた部分だけは毛先が深紅に染まっている。

白過ぎでもなく黒くもない滑らかな肌にはクスミ一つもなく、紫の大きな瞳は深紅の睫に縁取られている。

ふっくらとした花弁のような唇は水に濡れたかのような艶があり、紅を引いたように赤い。

肩からずり落ちた黒い着物から覗く白い胸の谷間には、不似合いな黒い骸骨を象った入れ墨。その入れ墨に香良は遊月の手のひらを導く。


「綺麗でしょう?」

「香良様はそのままでもお美しい」


弾力のある吸い付くようような柔らかい香良の肌に、遊月は骸骨をなぞるように指先を這わす。


「黒唯、行きましょう」

「勿論」


遊月の腕を引いて、香良は屋敷の中へと入って行った。

香良が向かったのは屋敷の最上階、一番奥の部屋。広い屋敷には人っ子一人、誰の姿も見えない。

それはいつものことだが、遊月が呼び出しを受ける時は決まって香良は屋敷内の全てのモノを追い出す。































「どうかしたの?」

「いいえ」


素っ気ない返事をすると、乱れた黒い着物から覗く白い胸元に唇を落とす。


「良いのよ」


香良は遊月に甘く告げ、彼の首に回していた両手で遊月の頬を包み込んだ。


「何がですか?」


たわわな胸元から顔を上げて見上げる。


「飲んでも……」


自ら髪を退かし、鬱血して赤い花の咲く首筋を露わにした。遊月の顔を自らの首筋に引き寄せる。


「香良様には、一時の苦痛も与えたくないのです」


そう言って、遊月は目の前にある首筋を一舐めする。擽ったさに身を捩った香良を横目で見やり、何ごとも無かったかのように白い肌に唇を落とした。




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