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■14×Her feelings and his feelings■


■14×Her feelings and his feelings■



「飲んで、遊月」


 遊月の目の前に首筋を晒して、涙に濡れた瞳をずっと伏せたままのセノ。両手で自らワンピースの背中のファスナーを慣れた手つきで下ろし、胸の谷間が見える位置までワンピースを引き下ろす。次いでブラの肩紐を二の腕まで下ろした。

遊月と一緒に居たいという思いが大きかった。その為に今のセノが出来ることと言えば、彼が望むことをしてあげることだと彼女なりに解釈したのだ。


「………………」


セノの事をジッと見つめたまま、彼女に掛ける言葉もない遊月。透き通るように白く、吸血鬼にとって艶めかしいほどの首筋を晒し、自ら進んで身を寄せる姿に彼は戸惑いを隠しきれない。


「……こないだ。遊月、飲みたいって言ってたでしょう?」


涙もすっかり乾いた瞳を開き、セノは上目遣いに遊月を見ながら言った。


「確かに言った、だけどな…………」

「飲んで、好きなだけ……」


遊月の言葉を遮るようにして視線を逸らさずに、セノは言った。


「セノ………」


遊月はセノの首筋を軽く指先で触れ、変わらぬ視線を投げかけてくる彼女の様子を伺ってみた。それでも、眉一つ動かさないセノ。遊月はセノが二の腕まで下ろしていた肩紐とワンピースを上げる。

細い背中に両手を回して、全開になっていた彼女のワンピースのファスナーを上げる。セノは驚いたように遊月を見上げた。


「言ってみな、セノ」

「…………………………………………………………吸血鬼は…」


そこまで呟いてから、セノはまた言葉を飲み込んだ。本当の気持ちを言ってしまえば良いと頭では分かっていても、それを口に出すことは出来ない。先ほどまで止まっていた涙が、また流れてくる。その時だった。


「……遊月サン、女の子を泣かしちゃいけないんだよ。それとも、お邪魔しちゃったかな?」


ガチャと扉が開き、部屋を覗き込んだ世が言い放つ。そんな世の後ろには、困った表情を浮かべてこちらを見ている砦。


「お前らなぁ……おい、セノ?!」


セノは顔を真っ赤に染めて、下を向いたままバスルームに駆け込んでしまった。遊月がバスルームのノブを回すと、ガチャリと内側から鍵が掛けられる。


「おい!セノ、」

「……なんか、あったんですか遊月サン?」


砦が遊月の側まで歩いてきて尋ねる。


「お前ら、何かあいつに言ったか?」

「何かって?何、遊月サン」


ソファに座り、遊月を見やりながら世が言った。遊月も開かない扉の前からソファへと移動する。セノは少し一人になりたいのだろう。


「何でも良い。俺についてのことだ」

 「えっと……遊月サンが元、指折りの“KILLER”だったってことと……あっ、でもこれは関係ないかもしれませんけど……遊月サンはいつ下界から戻るのかなぁ、ってことですけど………何かボク達、いけないこと言っちゃいましたか?」


砦が言うと、遊月はソファにもたれかかる。俯いて、浅いため息を吐き出してから座り直した。

 

「それだ……」

「えっ?」


世の隣りに座る砦。“それ”が何か分からない彼は首を傾げて遊月を見る。


「俺が下界から戻るって話だ……」

「遊月サン、戻って来ないつもり?ずっと下界にいるって言う訳?」


世が強い口調で言い放つ。


「…………」

「遊月サン、遊月サンが戻って来ないなんてことになったら血神様が怒るよ」

「知ってるさ、誰よりも」


神妙な面もちで自嘲するように呟く。


「…………正直に言うよ、遊月サン」

「世、それは!」

「砦、黙ってろ。どうせこの空間には血神だって干渉できないさ」


世は慌てふためく砦を横目で見やりながら、低く告げる。


「……でも」


砦は半ば泣きそうになりながら、世を見上げた。そんな彼は気にも止めず、世は話し始める。


「ボク達、血神に言われたんだ。

この空間で遊月サンを見つけて、何としてでも仕事を手伝わせろって。

一度、断ったら思い切り平手打ちが飛んできたよ。

セノサンが一緒に居たなら都合が良い、遊月サンに仕事を任せろって。

ゼロだって元は普通の吸血鬼だったのに血神が無理矢理ゼロの状態にして、この空間に入るように仕向けた。

セノサンの目の前で遊月サンがゼロを殺す場面を見せれば、セノサンは遊月サンを拒絶するだろうからって。血神が何を言いたいのか、頭の良い遊月サンなら分かるでしょう?血神は何があっても遊月サンを離さないつもりだよ。今は何とか平穏を装ってるけど、腹の中は煮えくり返ってるはず。下界の見ず知らずの女に、自分の一番のお気に入りである遊月サンが何ヶ月も付きっきりなんだからね」


世が話し終えると、隣りで砦は泣きそうになりながら俯いていた。


 「そうか……薄々感づいてた。悪かったな、お前ら二人を巻き込んで」

「……遊月サンが一体何を考えてるか知らないけど、ボク達は所詮……血神の手のひらの上で精一杯、足掻くしかないんだ。遊月サンが血神の所に行ってるのだって、機嫌取りでしょう?血神は僕らのこと何て、これっぽっちも考えてないんだから」


世は言い聞かせるようにそう言った。それは遊月に言ってはいたが、まるで自分にも言い聞かせるようにしっかりとした口調だった。




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