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■10×To the vampire hunting■


■10×To the vampire hunting■



「………ん……」


微睡んだ意識の中で心地の良い程、温かい感覚に身を委ねつつセノは夢の中にいた。サラサラと優しく髪を撫でるその感覚があまりに心地よくて、横向きに寝返りをうつ。鼻孔を擽る仄かな甘い香りを放つ方へとピッタリ細い身体を寄せ、その優しい温もりに安心感を得る。


「セ…ノ…………………」

「……………ん」


微かに誰かに呼ばれたような気がして、セノは覚醒していない瞳を細く開く。


「んん…………」

「起きろ、セノ―――」


その声に擦り寄せていた頬を離し、眠い目を何度も手の甲で擦る。


「………遊月!?何してるのよ!」

「何って、起こしに来てやったんだ」


セノは上半身で起き上がり自分が今居る場所を確認する。窓からは瞬く無数の星が見え、ぽっかりと月が浮かんでいる。彼女が寝ていたのは倒されたソファベッドの上だった。パサリとセノの上から落ちたのは、遊月のスーツの上着。セノはそれを拾い、遊月に渡す。


「あっ、お目覚めですかぁ?」


セノが振り向くとそこには砦と世の姿があった。二人とも全身黒の装いで、黒い手袋までしていた。バックル付きの細身のブーツを履き、足元まである長いコートを羽織っている。金の留め具を全て填め終えると、どうやら着替えが済んだようだ。


 「あれ?どうして……」

「仕事の時間だよ、セノサン」

「仕事………」

「勿論“KILLER”のお仕事ですよ、セノサン。刈りにいくんです、吸血鬼」


‐‐‐


四人はアパートから出ると真夜中だと言うのに賑わう大通りを足早に抜け、全く人気のない裏道へと入って行く。


「セノ、大丈夫か?」


うとうとしながら、遊月の服の裾を掴んで歩いているセノ。彼女の様子を見た遊月は心配そうに彼女に尋ねた。


「大丈夫、大丈夫」


とは言いつつも、半分寝ているようなセノ。足がもつれて、彼女が危うく転びそうになった所を遊月が支える。


「ごめん、ありがとう」

「ったく、しゃーねーな」


実際のところ、セノを置いて行こうかとも思っていた遊月。しかし結局連れて来たのは、異空間の部屋に一人で残して行くことに気兼ねした。セノのことだから目が覚めて誰も居なければ、部屋を出て探しにくるかもしれないからだ。


「お前ら、向こう向いてろ」


砦と世にそう告げた遊月。


「んっ…………」


突如として、強く押し付けるように塞がれた唇。呼吸混乱になる程に唇を吸われて、セノの眠気も吹き飛んだ。


「……コラ、起きたかぁ」

「っはぁ……………い、いきなり何すんのよ!?なっ、何考えてるの!!」

「お前が目ぇ覚まさね―からだ」


しれっとした態度で言い放つ遊月。


「あのぉ〜お二人サン、ラブラブするなら二人の時にして下さ〜い」


世が満遍の笑みを浮かべながらそう言って、セノと遊月の間に割り込む。


「接近中です。一分後、南南西の方向から来ます」


 

空を見上げ、砦が言った。その手のひらにはいつの間にか長い柄の鋭く尖った鎌が握られていた。そして、世の手にも同じものが握られている。今までの表情とは打って変わって、その表情は厳しいものだった。


「セノ、俺から離れるなよ」

「…………うん」


セノは遊月の服の袖を掴みながら頷く。


 「5…4…3…2…1…」


砦がカウントし始めて数秒後、鼓膜をつんざくような酷い叫び声と共に無数の蝙蝠が一斉に襲いかかってきた。


「砦、やるぞ」

「うん、分かった」


お互いに目配せし互いの鎌同士を擦り合わせ、耳を覆いたくなるほどの金属音を鳴らしだす砦と世。二人共、ほぼ同時に高く飛躍して鎌の刃を頭上高くから真下に向かって振り下ろす。その途端に無風だったその場所に疾風が起こり、群がっていた蝙蝠が全て落下して灰と化した。


「凄………い」


素直にそう呟いたセノ。


「こんなの序の口だ。見かけはガキでも、一様吸血鬼殺しのプロだからな」

「ガキは余計だよ、遊月サン」


世が振り返って不愉快そうに言った。


「何か文句があるなら本体、殺ってから言え」


辺りが震えがくるほど冷たい冷気に包まれて、大気がピンと張った糸のように震える。急に酷い耳鳴りがして、セノは耳元を覆った。


「向こうから来た見たいだね」


何処からか湧いてきたような真っ白い煙りが、辺りを包み込む。煙りの中に微かに見える影、段々とその影が近づいてきているのは明らかだった。


「“KILLER”……………………ソレト……美味ソウナ人間ノ匂イダ……」


いつの間にか漂っていた煙りが晴れて、現れた影の姿。遊月の後ろから見たその姿にセノは言葉を失った。




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