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■1×Do you know taboo?■


■1×Do you know taboo?■



真っ暗闇の中にポカリと浮かんでいる赤い光を放つ丸い月。

完璧な円形を象った月だけが満月と呼ばれる。そんな月が二週間に一回だけ不定期に今晩の様に、ヒトの血液に似た深い紅に染まる日がある。

その日だけは許される、血神に寄り定められた禁忌を犯すことが。永年に渡る、吸血鬼に寄る“ヒト狩リ”と呼ばれる吸血行為。

神の代理として吸血鬼達を統率する血神は、彼等を疎いそして嫌っていた。そんな中で、血神は一人の吸血鬼にただならぬ興味を持ち始めた。神の代理として神の遊具に触れたことで、血神の心に生まれた悪戯的感情。

血神は神の遊具で自らも遊ぶことにして、出始めに【吸血行為部分禁止令】という令をつくった。血神は言った“赤い月の日のみ吸血を許す”と。

その為、赤い月の夜は至る所何処にでも、自らの素性を隠した吸血鬼で溢れる。血に飢えた吸血鬼達がただ獲物を求める姿を、悠々と血神は楽しむのだ。



■■■■■■■■■



「…………ぅ……んん……ゃぁ…」


豊かな白い胸元。そのギリギリまで下ろされた黒いキャミソールの少女。

本来肩に掛かっているべき細い二本の肩紐は、二の腕の辺りで肌から少し浮いている。肘のところまで下ろされたジャケットが、動かそうとした両腕を束縛して全く動かなかった。

少女のすぐ目の前には紺色のスーツ姿の男。少女のしっとりとした首筋を這うように、生暖かく湿った舌が動きまわる。

照らし出すライトの白い光の元に首筋を晒すように、少女の後頭部へと男の手のひらが動く。もう片方の腕を脇から差し入れて引き寄せるように、細い背に這わした。

直後、ぷつりと薄い皮膚に突き立てられた牙。首筋から流れる生臭い赤い雫を一度舐めあげると、男はその場所に深く口付けた。


「っ…………あぁ」


少女の苦痛の表情には全く目も暮れず、男はただひたすらに自らの喉の渇きを潤す行為をし続ける。額に浮かんだ雫が、少女の豊かな胸の谷間まで伝い後を残した。


「…ぅ………だ……め………」

「まだ、だ」


少女の首筋から薄い唇を離し、少女の血に濡れた赤い唇をギリギリまで耳元に寄せて意地悪く囁く。

そしてすぐにまた、少女の首筋に赤く濡れた唇を落とす。ゆっくりと首筋をなぞるように舐めあげた後、その中央を軽く啜ると今まで動くことのなかった少女の細い体が反応し、ビクリと強ばった。

 

「……………ゃ……ぁっ…」



少しの言葉を発することですら、眉を顰めとても辛そうな少女。

そんな彼女の頬の上を、生理的な涙が零れる。吸血行為に没頭していた男だったがようやく、そんな少女の様子に気付き男は名残惜しそうに少女の首筋から唇を離す。

少女の白い肌には二つの牙の後を囲むように男が飲みきらなかった赤い血が残っている。


「…………ふぁ」

「今晩は、こんくらいにしとくか」


自らの口の周りの血を舐めとる。

そしてもう一度、男は少女の首筋に舌を這わして残った血を器用に拭いとった。最後に自らが残した二つの牙の痕にそっと口付ける。

細い少女の体を自らの胸に抱き込むと、クタリとしている少女の頬を流れる涙に目を止めた。


「吸いすぎたか?」


そう言うと、少女の頬を流れる涙を拭うようにその目元へと口付ける。

大量の血液を一気に失ったせいで、意識がもうろうとする少女が見たもの。それは、白い枠に縁取られた窓から見えたガラス越しの白い満月。直後、酷い眠気に襲われた少女は男の腕の中で暗闇の中へと意識を手放していった。




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